GMOメイクショップ、生成AIを活用した対話型お買い物サービスをプレオープン

2025.4.10

GMOインターネットグループのGMOメイクショップは、香川県坂出市でケーブルテレビや通信事業を展開するKBN、香川県農業協同組合、生活協同組合コープかがわと連携し、KBNの新サービスとして生成AIを活用した対話型コマースによる買い物サービス「こんにち商店」を、2025年3月13日にプレオープンしました。対象地域は坂出市と宇多津町で、プレオープン中は先着500人限定にサービスを展開します。

KBNの常務取締役事業本部本部長の井原太一郎氏は、今回のプレオープンについて次のようにコメントしています。

「プレオープン期間中は、モニター利用者の皆さまから頻繁にアンケートを取り、サービスへの要望やシステム・アプリの改善点を洗い出すことで、完成度を高めていきたいと考えています。あわせて、JA香川県やコープかがわにもヒアリングを行い、改善を重ねていきます。また、利用者の属性やニーズを整理し、本サービス開始に向けた営業施策の構築にも取り組む予定です」

また、参加人数を500人に限定した理由については「一般的なネットショッピングの利用頻度に換算すると、現時点のオペレーション体制で対応可能な上限は約500名と想定されます。想定を上回る利用が発生する可能性もあるため、まずはこの人数でスタートし、実際の利用動向を見ながら段階的に拡大していく方針です」と語っています。

出典：KBN

「こんにち商店」のWebサイト

本サービスは、2023年11月から2024年1月までに実施した「生成AIを活用した対話型コマースによる高齢者買い物支援」の実証実験で生まれた課題を解決しながら実用化されたものです。JA香川県とコープかがわの協力を受けて地元農産物や生活必需品を取りそろえ、より実用的なサービスとして改良を重ねてきました。プレオープンでさらに改善を重ねたのち、2025年8月には対象人数も拡大した本格リリースを予定しています。

8月の本格リリースでは、島しょ部（瀬戸大橋経由で配送可能な島）への対応や、2年以内に坂出市・宇多津町で4000名の利用者を目指すことも視野に入れているとのことです。井原氏は「香川県内全域や他県のCATV局への展開も検討しています。出店者や取扱品目をさらに増やすことで、より利便性の高いサービスへと進化させたい」と展望を語りました。

買い物に不便を感じる高齢者世帯に向け、対話型コマースを準備

GMOメイクショップは、ECサイト構築SaaS「makeshop byGMO」をはじめとしたEC構築・運営支援を行っており、近年では地域産業の活性化を目的として地方のEC化・DX化支援に注力しています。

地域の過疎化や高齢化、それによる商店街の衰退などから、買い物に不便を感じる高齢者世帯への対策が必要とされているなか、GMOメイクショップは2023年11月にKBN、坂出市、坂出商工会議所と連携した「生成AIを活用した対話型コマースによる高齢者買い物支援」の実証実験を実施しました。

実証実験では、対話型コマースが買い物困難者の解消と地域経済の活性化へ寄与できることを確認しました。実証実験後に実施した調査では、7割以上の体験者から対話型コマースの本サービス化に肯定的な回答を得られています。この結果を受け、KBNが主体となり、実証実験での課題点を解決しながらサービス化の実現に向け進めてきたとのことです。

話しかけるだけでAIが商品を提案し、注文まで行える

「こんにち商店」は、スマホやタブレット端末に話しかけるだけでAIが商品を提案してくれるだけでなく、おすすめの料理メニューと必要な具材を提案し、注文が完了するシンプルな仕組みになっています。実証実験では、提携事業者に対し「ユーザーが求める商品数を確保できる大規模事業者との提携」「運営維持が可能な配送」、AI対話アプリ・システムに対し「ユーザーインターフェースの整備」、ユーザー向けサービス内容に対し「コールセンターの整備」や「利用状況の把握が可能な仕組みづくり」などが課題として挙げられました。

そこでこれらの課題を踏まえ、以下の点を改良し、利便性の向上を図りました。

提携事業者

商品ラインナップの拡充
JA香川県とコープかがわの協力により、地元農産物や生活必需品を幅広く取りそろえた

配送体制の強化
本サービスに特化した配送業者とすることで、迅速かつ確実な商品配送を可能にした

AI対話アプリ・システム

操作性の向上
音声認識精度を改善し、視覚的な要素や操作の流れをシンプルにすることで、直感的な操作を可能とし、高齢者にも使いやすいインターフェースを実現

ユーザー向けサービス

コールセンターの設置
アプリやタブレット利用方法に加え、指導訪問体制を整備

アプリ機能の拡充
「気に入り機能」「インボイス」「過去の購入履歴」「LINE連携・配達完了写真」など要望の多い機能を追加

音声コマースと通常コマースの選択
若年層の需要が確認されたため、音声検索と従来の文字検索の両方を選択できるシステムを導入（本サービス開始に合わせてリリース予定）

対応エリアの拡大
プレオープンでは坂出市に加え宇多津町に拡大。今後は香川県全域に拡大予定

そして今後に向けた課題として、KBNの井原氏は次のように述べています。

「高齢者にとってより使いやすいUIの実現や、出店者の増加に対応した集配オペレーションの整備が引き続き重要です。在庫や価格のリアルタイム更新にも対応できる仕組みづくりが求められます。さらに『当日注文・当日配送』の実現には、オペレーション全体の一層の改善が不可欠だと考えています」

「こんにち商店」の仕組み図

2019年から暮らしやすい地域づくりに向けて連携

JA香川県とコープかがわは、2019年1月に「生活協同組合コープかがわと香川県農業協同組合との『豊かでくらしやすい地域社会づくり』に向けての包括連携協定」を締結しました。この協定は、両組合が協同組合組織として暮らしやすい地域社会づくりに貢献することを目的としています。

今回、両組合は「生成AIを活用した対話型コマース」が目指す買い物支援と地域活性化という取り組みに共感し、連携によるシナジー効果を期待して、本サービスでの連携を決めました。この取り組みを通じて、両組合は組合員のメリットを拡大し、地域社会へ貢献するとしています。

JA香川県は、地産地消を推進しながら、地域農家の販路拡大による所得増大、そして県内生産物の流通活性化を目指します。一方、コープかがわは、人と人とのつながりを大切にし、組合員のニーズに応えながら、地域の人々の生活と文化に貢献していくとのことです。

各機関の役割は以下の通りです。

GMOメイクショップ
・対話型コマースのシステム開発
・「makeshop byGMO」の提供による専用ECサイトの構築支援
・EC運営のナレッジの共有・サポート

KBN
・システム・アプリ・運送のプラットフォームの提供
・利用者増加の取り組み
・利用者のアフターフォロー
・専用コールセンターの運営
・販売代金の回収代行

JA香川県
・農産物直売所出品物の販売　「国消国産」に関する商品の販売
・商品のピッキング業務

コープかがわ
・コープ商品など食料品・雑貨品の販売
・商品のピッキング業務

「こんにち商店」プレオープン記者発表会の様子。写真左からJA香川県代表理事理事長の村川進氏、KBN代表取締役の北村昌士氏、コープかがわ代表理事理事長の亀井愛知氏、GMOメイクショップ代表取締役社長CEOの向畑憲良氏

「こんにち商店」は現在プレオープン中で、2025年8月の正式リリースに向けて改良を進めている状況です。将来的には、サービスエリアの拡大や他地域への横展開も視野に入れ、より多くの高齢者の方々の買い物を支援し、地域活性化に貢献していくとのことです。

「こんにち商店」のような生成AIを活用した対話型コマースは、高齢者が買い物しにくい状況を改善する有効な手段となるでしょう。AIとの対話により、商品検索や注文が容易になり、外出が難しい高齢者でも自宅で必要なものを購入できるようになります。

井原氏は、サービスについて次のように話しました。

「『こんにち商店』は、地域の高齢化への対応やライトな見守り機能としての活用が期待されています。地方で働く女性など現役世代の時短にもつながりますし、地元企業の販路拡大や、高齢者のIT活用促進にも寄与するサービスだと考えています」

地元農産物や生活必需品を取り扱うことで、地域経済の活性化にも貢献し、高齢者の生活の質向上と地域社会の持続可能性にもつながることが期待されます。

安蔵靖志

Techジャーナリスト／家電エバンジェリスト
家電製品協会認定　家電製品総合アドバイザー（プラチナグレード）、スマートマスター。AllAbout デジタル・家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ～ンの家電ソムリエ」にレギュラー出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの商品リサーチ・構成にも携わっている。