『トップガン マーヴェリック』の監督ジョセフ・コシンスキーが、ブラッド・ピットとタッグを組んだ映画『F1/エフワン』が公開されている。そもそもはヨーロッパの文化であるF1(フォーミュラ1)を、ハリウッドはどう描いたのだろうか。
映画『F1/エフワン』US版予告2|2025年6月27日(金)公開!
via www.youtube.com
F1は「世界選手権」だが、ヨーロッパの文化
クルマやバイクが好きな人はご存知だと思うが、ヨーロッパを発祥の地とするモータースポーツのF1は、長らくアメリカでは人気がなかった。
F1は「世界選手権」とはいいつつ「コンチネンタルサーカス」と呼ばれるくらいヨーロッパの文化である。F1を統括するFIA(国際自動車連盟)の本部はフランス・パリにあり、アメリカのハースを除けば、全てのチームはヨーロッパに本拠地を置いている(とりわけイギリスに集中している)。
伝統的で有名なサーキットもヨーロッパに多く、例えばイギリスGPのシルバーストーン、ベルギーGPのスパ・フランコルシャン、モナコGPのモンテカルロ市街地コースなどがある。
F1は「世界選手権」とはいいつつ「コンチネンタルサーカス」と呼ばれるくらいヨーロッパの文化である。F1を統括するFIA(国際自動車連盟)の本部はフランス・パリにあり、アメリカのハースを除けば、全てのチームはヨーロッパに本拠地を置いている(とりわけイギリスに集中している)。
伝統的で有名なサーキットもヨーロッパに多く、例えばイギリスGPのシルバーストーン、ベルギーGPのスパ・フランコルシャン、モナコGPのモンテカルロ市街地コースなどがある。
ヨーロッパのレースは、長いストレート、タイトなヘアピン(Uターンに近い形状の小さなカーブ)やシケイン(速度が出すぎる区間に追加された小さなクランク)、複雑なS字コーナーや、大きなアップダウンの中で行われる。レーシングマシンには、必然的に複雑なコーナーと直線を駆け抜ける性能が要求される。イギリスやドイツ、フランスなどの丘陵地帯や、アルプスのワインディングロードを駆け抜けるクルマの頂点がF1というようなイメージだ。
分厚いステーキとバドワイザーが似合うアメリカン・レーシングの世界
対してアメリカのレースは、シンプルなオーバル(楕円)コースで競う形式が多い。そのルーツはおそらくは町の郊外の荒れ地を軽く整地したところで競う「ダートトラックレース」にあるのだろう。土のコースを、カウンター(車体が外に滑らないよう逆方向にハンドルを切る技術)を当てながらグルグル回るようなレースだ。レースのレベルが上がってくると、大きなバンク(傾斜)がついたレーストラックで競うことになる。
今でもアメリカの地方にはこうしたレーストラックが数多く残っており、モンスター級のデカイ四輪駆動自動車や、ピックアップトラック、ダートトラッカーと呼ばれるバイクがそこで「駆けっこ」をしている。シンプルにクォーターマイル(約400メートル)を駆け抜ける速さを競うドラッグレース(日本でいうところの「ゼロヨン」)も、そんなアメリカ独自のレース文化のひとつだ。
今でもアメリカの地方にはこうしたレーストラックが数多く残っており、モンスター級のデカイ四輪駆動自動車や、ピックアップトラック、ダートトラッカーと呼ばれるバイクがそこで「駆けっこ」をしている。シンプルにクォーターマイル(約400メートル)を駆け抜ける速さを競うドラッグレース(日本でいうところの「ゼロヨン」)も、そんなアメリカ独自のレース文化のひとつだ。

映画の冒頭にも登場するアメリカ・フロリダのデイトナサーキット。アメリカンレーシングの聖地だ(1990年代に筆者撮影)
大排気量のV8エンジンに、光り輝くクロムメッキのパーツ。 車体にはUnocal 76、Gulf、STP、シェル、Goodyear、Pennzoil、Mac Toolsなどのアメリカンなスポンサーロゴがレタリングされる。使われるボルトやナット、そしてそれらにあてがわれる工具はインチ規格だ。
時には田舎の小さな飛行場の滑走路にストローバリア(干し草を固めた緩衝材)だけを並べた即席のコースが作られる。乾燥した空気の中、ストローバリアからほつれた干し草と砂塵が風に舞う。レースが終わればダイナーで分厚いステーキとバドワイザー。映画でいえば『フォードvsフェラーリ』冒頭のロサンゼルス郊外ウィロースプリングスでのレース、トム・クルーズ主演の『デイズ・オブ・サンダー』、そしてピクサーのアニメ『カーズ』の世界を思い浮かべてもらえれば、きっと雰囲気が伝わるだろう。
ヨーロピアンなレースが好きな人からは「オーバルコースをグルグル回るだけ」と揶揄(やゆ)されることもある。だが実際には、シンプルな構成だからこそ、車の精密なセッティングや何周にもわたるタイヤマネジメント、スリップストリーム(前の車の後ろにつけて空気抵抗を減らすテクニック)を駆使してフェイントをかけて追い抜く、緻密なレースでもある。
ちなみに日本のレース文化は、サーキットの形を見れば分かるようにヨーロッパ由来だ。ホンダはかつてアメリカ流のレース文化を日本に取り入れようと、ヨーロピアンなコースとアメリカンなオーバルコースを重ねた世界唯一の「ツインリンクもてぎ」を作った。しかしオーバルレースは日本についに根付かず、現在はオーバルコースは使われていない。
時には田舎の小さな飛行場の滑走路にストローバリア(干し草を固めた緩衝材)だけを並べた即席のコースが作られる。乾燥した空気の中、ストローバリアからほつれた干し草と砂塵が風に舞う。レースが終わればダイナーで分厚いステーキとバドワイザー。映画でいえば『フォードvsフェラーリ』冒頭のロサンゼルス郊外ウィロースプリングスでのレース、トム・クルーズ主演の『デイズ・オブ・サンダー』、そしてピクサーのアニメ『カーズ』の世界を思い浮かべてもらえれば、きっと雰囲気が伝わるだろう。
ヨーロピアンなレースが好きな人からは「オーバルコースをグルグル回るだけ」と揶揄(やゆ)されることもある。だが実際には、シンプルな構成だからこそ、車の精密なセッティングや何周にもわたるタイヤマネジメント、スリップストリーム(前の車の後ろにつけて空気抵抗を減らすテクニック)を駆使してフェイントをかけて追い抜く、緻密なレースでもある。
ちなみに日本のレース文化は、サーキットの形を見れば分かるようにヨーロッパ由来だ。ホンダはかつてアメリカ流のレース文化を日本に取り入れようと、ヨーロピアンなコースとアメリカンなオーバルコースを重ねた世界唯一の「ツインリンクもてぎ」を作った。しかしオーバルレースは日本についに根付かず、現在はオーバルコースは使われていない。

村上タクタ
iPhone、iPadなどを中心に扱うテック系フリーライター。アップルのUS発表会に呼ばれることも。バイク、ラジコン飛行機、海水魚とサンゴの飼育など趣味の雑誌を30年で約600冊編集。2010年からテック系メディアを編集。