不自由さが楽しい!完璧なスマホ写真に飽きた人へ「Flashback ONE35 V2」

中野 亜希

Specialクリエイタースマートフォンライフスタイル
写真を撮って「失敗したなぁ……」とがっかりしたのはいつだったのか、もう思い出せません。それくらい、カメラもスマートフォンも、誰もが美しい写真を撮れるようにチューニングされていますよね。よりよい1枚を目指して、構図や被写体の表情など努力する余地はいくらでもあるけれど、あまり写真にこだわりを持たないまま「80点」の1枚を撮ることは、今では特に難しいことではありません。

そんな写真は結局のところ記憶には残らないのですが、かといって、インパクトのある「100点」の写真を目指そうとすると、急にシビアな努力が必要になります。「日常をいい感じに残す」とは、案外難しいものです。

そんなスキマをついたかのように、日常に「撮る楽しさ」と心地よいノイズをもたらしてくれるガジェットがあります。それが「Flashback ONE35 V2(以下、ONE35 V2)」です。

筆者にとっては見た目のかわいさから入って、軽い気持ちで手にした1台ですが、早くも、今年のベストバイになるのでは……?と、そんな予感がしています。作例とともに、あえて「不自由さ」を楽しむぜいたくな魅力をご紹介します。

【関連記事】『手のひらに収まるサプライズカメラ「Kodak Charmera」の小ささ×ランダム性×レトロ質感』(2025.10.17)

公式サイトより

毎日持ち歩きたくなる、令和の「無限デジタル写ルンです」

ONE35 V2は一度に27枚しか写真が撮れず、しかも1枚ごとにフィルムを巻き上げるような動作が必要なカメラ。背面モニターがないので、思い通りに撮影できているか、その場で確認することはできません。写真を見られるのは、アプリに写真を取り込んでから24時間後……。そんな、かつてのレンズ付きフィルム「写ルンです」のようなカメラです(後述しますが、すぐ写真を見られるモードもあります)。

スペックは、公式にはほぼ何も公開されてないのですが、おおよそこんな感じです。

・画角:フルサイズ換算で35mmぐらい(公式情報なし)
・ピント:撮ってみた感じではパンフォーカス(だいたい1m〜無限遠。マクロ機能なし)
・解像度: 約13MP(4144×3088ピクセル)
・アスペクト比:約4:3
・保存データ:JPEG、RAW(DNG)
・フィルター(フィルムの種類):撮影時に4種から選択可(有線接続時はフィルターなしのJPEGとRAW)
・通信方式:Bluetooth、Wi-Fi、USB-C

RAWデータでの取り込みもできるのは嬉しいけれど、スペック的には特筆すべきところはありません。

しかし見た目はレトロだけどどこか今っぽく、思わず持ち歩きたくなるオシャレさがあります。カラーバリエーションも豊富です。中でも、ティールがアクセントに入ったスケルトンモデルがどうしても欲しかった私は、すぐポチりたい欲求を抑えつつ、しばらく入荷待ちをしていました。再入荷お知らせメールに登録し、さらにこまめに公式サイトをのぞいていると、数日のうちに再入荷があったので即ポチです。注文完了から2週間ちょっとで到着しました。

ミニマムなパッケージ

手にしてまず驚くのはその軽さ。サイズ感も相まって、ここでもあの懐かしい「写ルンです」を思い起こさせます。

開封したFlashback ONE35 V2の前面

ふだんから愛用している「RICOH GR IIIx」「RX0 II」もカメラとしてはかなりコンパクトですが、それらと比べても圧倒的に軽く、厚みはあるものの、夏物の薄いジャケットや、シャツの胸ポケットに入れても気にならないほどです。

レンズがせり出す沈胴式ではなく、また外装がプラスチックなので、他のデジカメのようにレンズキャップの脱着や、ボディの傷に細かく神経を使わなくてよいのも「写ルンです」的。取り落とさないよう、フィンガーストラップだけはつけましたが、ポケットへラフに放り込み、撮りたい瞬間にサッと取り出せる。見た目のかわいさにこの気軽さが加わると、用事はなくても持ち出したくなります。日常のお供にピッタリだと思います。

使い捨てフィルムカメラの「アナログな使用感」を再現

使い方も、シンプルながら使い捨てフィルムカメラのプロセスを忠実に再現しています。

まずカメラの電源を入れるには、背面右上にあるダイヤルを指でジコジコと回す必要があります。

Flashback ONE35 V2の背面

背面モニターはないので、左上にあるファインダーを覗いて構図を決めますが、このファインダーはほぼ「ただの穴」なので、レンズを通じた実際の撮影範囲とはそれなりにズレます。

実際に写る範囲はフルサイズ換算で35mm前後に思えますが、ファインダーに見えている範囲は狭く、50mm相当ぐらいに感じます。

そのため「見たまま撮れる」とはいえません。ただ、実際に写る範囲がファインダーで見える範囲よりやや広いので、最初の撮影から「これを撮りたかったのに見切れていた!」という失敗はありませんでした。ファインダー越しのイメージと撮れた写真を比較するとコツがつかめるので、数ロール撮るうちには、このカメラと仲良くなれるはずです。

このカメラは、1枚写真を撮ると、再びダイヤルが止まるまで巻き上げないと次のシャッターが切れないため、普通のカメラのような連写はできません。しかし、撮影可能な状態(ロール巻き上げ済み)であれば、普通のカメラのように「オートフォーカス(AF)が迷ってシャッターが切れなかった」ということがありません。「シャッターを押せば写る」シンプルさがありがたい。

フラッシュを使うときは、レンズ横のレバーをレンズ側にスライドさせ、背面のLEDが点灯するのを待ちます。フラッシュはLED光ではなく、本物の「キセノン管」を採用しているため、パシャリと焚いたときの光量感は使い捨てカメラにそっくりです。

ダイヤルをジコジコする感触は結構固く、「フィルムを1コマ巻き上げている感」がちゃんとあるのが楽しい。そして巻き上げる回数も多め。「なんとなくギミックとしてつけておいた」感はゼロで、撮影時の総合的な使用感も使い捨てフィルムカメラそのものです。

「どんな写真になるかな?」という期待感を楽しむ

このカメラを使う上で、一番ワクワクするのは「どんな写真になるかな」と楽しみに待つ時間です。

再三書いてきたように、このカメラには背面に液晶画面がないため、撮った写真をその場で確認することはできません。フィルムのタイプ(フィルターのテイスト)を選んで撮影し、専用アプリを介して、カメラの中のデータをスマホに転送して初めて、撮った写真を確認することができます。

フィルムの種類(公式サイトより)

専用アプリ

27枚撮り終えると、カメラ上部の枚数表示が「00」になり、ダイヤルが空回りして撮影できなくなります。

27枚撮りきったところ

撮影可能枚数を復活させるには、スマホやタブレットのアプリかPCと接続して、写真を転送する必要があります。なおデータ転送は、27枚フルに撮り切ってなくても可能です。「ちょっともったいないけど、もう現像しちゃおうかな」が可能なのも、写ルンですと同じです。このカメラには、あえて設定されたさまざまな「不便さ」があるけれど、使いにくさにつながる「不自由さ」ではないのがうれしいところ。

アプリを介してカメラからスマホへ画像を転送する場合は、Wi-FiかBluetoothを使用します。

アプリへ写真を転送すると、撮影した画像がJPEGファイルになり、アプリ内で確認したり、スマホへ保存したりできます。(flashbackにおいて、このプロセスを「現像」と呼んでいます)。

現像が済んだ状態

カメラとスマホ(またはパソコン)をUSBケーブルで接続した場合は、カメラはドライブとして認識され、中の画像をJPEGまたはRAW(DNG)ファイルとして取り出すことができます。この場合、JPEGはフィルターなしのデータになります。

アプリでの現像は、24時間かかる「フィルムカメラモード」と即完了する「デジカメモード」から選べます。

上がすぐ写真を確認できる「デジカメモード」、下が現像に24時間かかる「フィルムカメラモード」

時間のかかる「フィルムカメラモード」をあえて選ぶのは、カメラ店にフィルムの現像を依頼し、翌日受け取りに行く手順をアプリ内で疑似体験するため。ここでも「あえての不便さ」が楽しいギミックになっています。

「面倒くさい」「すぐに写真を見たい」といった場合は、即座に現像完了となるデジカメモードを使うこともできます。転送された画像は、アプリ内から現像済みのポジフィルムのようなスタイルで見ることができます。

撮影済みのフィルムロールを模したギャラリー

「27枚しか撮れないと、もったいなくて気ままに撮影できないのでは?」と思うかもしれません。しかし、かつてのレンズ付きフィルムとは違い、ケーブルレスでサクッとスマホにデータを転送すれば次のロールへ進めるため、枚数の制限は気になりません。

むしろ「写真の仕上がりを早く見たい。かといって画像がフィルムロールのように残ることを思えば無駄打ちもしたくない」……そんな気持ちから、気になる被写体を探してどんどんシャッターを切っていこう!と思えるのです。「どんな写真がとれるかな?」という期待が背中を押し、ついついたくさん撮影してしまいます。

普段筆者がよく撮っている花やテーブルフォトは、正直いつものGR IIIxのほうがきれいだと思います。

マクロがないので花を撮るには不向きなことも

そもそも、画質そのものを比較すれば、当然ながらONE35 V2は劣ります。しかし、Flashbackは「意図した通りに完璧に撮る」カメラではなく、どんな写真が撮れているかを期待しながらシャッターを切るカメラ。現像するまで、どう写っているかわからないワクワク感は、何でも結果がすぐわかる今、とても新鮮だと思うのです。

アプリの「24時間現像モード」も、せっかちな私は「使うかな?」と当初は思っていました。ところが、1日遊び倒した夜、疲れて帰ってきてから撮影データをその場で確認するのはつらいといったとき、これが意外に役立つことがわかりました。データだけ転送しておき、翌日の夜に「あ、昨日の写真が見られる」とアプリを開く瞬間の楽しさ。データをすぐに確認しない罪悪感が消え、明日への楽しみが生まれることは、とてもぜいたくな体験です。
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中野 亜希

ライター・コラムニスト
大学卒業後、ブログをきっかけにライターに。会社員として勤務する傍らブックレビューや美容コラム、各種ガジェットに関する記事執筆は2000本以上。趣味は読書、料理、美容、写真撮影など。
X:@752019

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