ChatGPTの登場以来、この数年で生成AIはすっかり身近なものとなりました。読者の皆さんの中にも、検索に相談相手にと便利に使っている方は多いことでしょう。ChatGPTを展開するOpenAI以外にも、GoogleのGemini、X(旧Twitter)のGrok、AnthropicのClaudeといった多くの有力企業がしのぎを削り、その性能も、1年どころか数カ月もたてば時代遅れになりかねない勢いでどんどん進化しています。
さて、生成AIが勃興する前、個人が接するAIの代表格といえば、スマートスピーカーなどのスマートホーム機器や、スマートフォンの上で動作する「音声アシスタント」でした。しかし、このところの音声アシスタントはどうにも進歩が停滞している印象が否めません。
もっとも、生成AIの進化が早すぎて相対的にそう見えてしまう側面もあります。音声アシスタント御三家のうち、Appleは昨年のWWDCでApple Inteligenceの立ち上げやSiriの刷新をアナウンスしていますし、Googleも、このところ生成AIの話題ばかりが目立っていましたが、今秋からGoogleアシスタントに代わってGeminiをスマートホーム機器に搭載するとようやく発表がありました。
そんな中で最も沈黙が長かったのがAmazonの音声アシスタント、Alexaです。Amazonは、2023年9月の製品発表イベントで生成AIに対応したAlexaをチラ見せして以来、実に1年以上も音沙汰がなかったのですが、今年2月のイベントで、次世代版Alexaである「Alexa+」をついに発表しました。
今回は、そのAlexa+をシリコンバレーのビッグテック在勤の筆者が先行レビューしてみたいと思います。
さて、生成AIが勃興する前、個人が接するAIの代表格といえば、スマートスピーカーなどのスマートホーム機器や、スマートフォンの上で動作する「音声アシスタント」でした。しかし、このところの音声アシスタントはどうにも進歩が停滞している印象が否めません。
もっとも、生成AIの進化が早すぎて相対的にそう見えてしまう側面もあります。音声アシスタント御三家のうち、Appleは昨年のWWDCでApple Inteligenceの立ち上げやSiriの刷新をアナウンスしていますし、Googleも、このところ生成AIの話題ばかりが目立っていましたが、今秋からGoogleアシスタントに代わってGeminiをスマートホーム機器に搭載するとようやく発表がありました。
そんな中で最も沈黙が長かったのがAmazonの音声アシスタント、Alexaです。Amazonは、2023年9月の製品発表イベントで生成AIに対応したAlexaをチラ見せして以来、実に1年以上も音沙汰がなかったのですが、今年2月のイベントで、次世代版Alexaである「Alexa+」をついに発表しました。
今回は、そのAlexa+をシリコンバレーのビッグテック在勤の筆者が先行レビューしてみたいと思います。
先行体験には米AmazonアカウントとEcho Showが必要
Alexa+はその名の通り、Alexaの直接の後継サービスであり、Echo ShowなどAmazonのスマートデバイス上での動作を主に想定しています。現在はまだ正式ローンチではなく、本格的な展開前のアーリーアクセス段階です。本稿執筆時点での利用条件は以下の通りです。
● 米Amazon.comのアカウントを所持している
● Alexa+対応デバイスを所持している
● デバイスの言語を英語(US)に設定している
● Alexa+アーリーアクセスプログラムに登録している
4番目の項目については、正式ローンチ後はAmazon Prime会員であるか、月額19.99ドルを支払う必要がありますが、現時点では、アーリーアクセスプログラムに登録していれば無償で利用できます。
Alexa+対応デバイスとして公式にアナウンスされているのは、Echo Show 8/10/15/21の各モデルですが、実際にはAndroid上のAlexaアプリでも動作します。ただ、アーリーアクセスプログラムは上記デバイス所有者を優先とも明記されているので、事実上、公式対応デバイスの所有か購入が条件といってよいでしょう。
筆者は既にEcho Show 15を所持していますが、経験上、Amazonのデバイスやアカウントは既存の設定を流用しようとすると、どこに書かれているか分からない思いもよらぬ設定が悪さをするなど大概ロクなことにならないので、今回は新しくEcho Show 8を購入しました。
● 米Amazon.comのアカウントを所持している
● Alexa+対応デバイスを所持している
● デバイスの言語を英語(US)に設定している
● Alexa+アーリーアクセスプログラムに登録している
4番目の項目については、正式ローンチ後はAmazon Prime会員であるか、月額19.99ドルを支払う必要がありますが、現時点では、アーリーアクセスプログラムに登録していれば無償で利用できます。
Alexa+対応デバイスとして公式にアナウンスされているのは、Echo Show 8/10/15/21の各モデルですが、実際にはAndroid上のAlexaアプリでも動作します。ただ、アーリーアクセスプログラムは上記デバイス所有者を優先とも明記されているので、事実上、公式対応デバイスの所有か購入が条件といってよいでしょう。
筆者は既にEcho Show 15を所持していますが、経験上、Amazonのデバイスやアカウントは既存の設定を流用しようとすると、どこに書かれているか分からない思いもよらぬ設定が悪さをするなど大概ロクなことにならないので、今回は新しくEcho Show 8を購入しました。

米Amazon.comのAlexa+紹介ページ
Alexa+では何が変わった?何ができる?
実機を試す前に、Alexa+では何が変わり、何ができるようになったのか、確認してみましょう。Amazonの2月のイベントの際、Alexa+の担当シニアバイスプレジデントでデバイス・サービス部門のトップを務めるパノス・パネイ氏が公開した情報によれば、要点は以下の通りです。
自然な会話で利用できる
公式ブログでもイベントでも、真っ先に言及されているのはこの点です。Alexa+は生成AIベースで作り直され、音声インタフェースとして生成AIのチャット同様の柔軟性を備えていると強調されています。会話の途中で話を変えてもちゃんと追随してくれ、表現が曖昧な場合や明確な依頼ではなくとも、そこから意図を補間し、くみ取ってくれるそうです。例えば「部屋が寒いんだけど」と話せば、空調の温度を上げる、といった対応をしてくれるそうです。
さまざまな機能がより横断的に利用できる
従来のAlexaでは、Amazon謹製のサービス以外は「スキル」を登録して使う形が主流でした。Alexa+は多くのメディアやサービスと連携して、最初から標準で横断的に外部サービスを利用できるようになっています。
またスマートホーム機器の操作だけでなく、そこから情報の入力もできます。音声と画像を組み合わせたマルチモーダルな指示や処理もできるので、例えば「Ringドアベルに犬が写っていたのはいつ?」といった質問にも対応可能とのこと。
生成AIで使われる概念になぞらえて雑に例えるならば、「さまざまな外部機器やサービスが『Model Context Protcol(MCP:AIが外部のツールやデータと連携するためのオープンスタンダードなプロトコル)』のようなかたちで標準で接続されており、それをAlexa+がエージェントとして取り扱える」といった感じでしょうか。
またスマートホーム機器の操作だけでなく、そこから情報の入力もできます。音声と画像を組み合わせたマルチモーダルな指示や処理もできるので、例えば「Ringドアベルに犬が写っていたのはいつ?」といった質問にも対応可能とのこと。
生成AIで使われる概念になぞらえて雑に例えるならば、「さまざまな外部機器やサービスが『Model Context Protcol(MCP:AIが外部のツールやデータと連携するためのオープンスタンダードなプロトコル)』のようなかたちで標準で接続されており、それをAlexa+がエージェントとして取り扱える」といった感じでしょうか。
あなたのことを「よく」知っている
もともと「パーソナルアシスタント」としてスタートしているAlexaには、ユーザーのアクション履歴が豊富に蓄積されていきます。Alexa+は、それに加えて会話の内容などからユーザーのコンテキストを把握します。
例えば「レストランを探して」と頼むと、「本人はピザが好きで、妻はグルテンフリーで、娘はベジタリアン」というそれぞれの特性を踏まえて、適切な店を探してくれるとのこと。AIベースのアシスタントやコンシェルジュといったサービスが最も必要とし、かつ最も得るのが難しいのは、まさにこのコンテキスト情報なので、これはAlexa+の強みになると思います(ところでピザ×グルテンフリー×ベジタリアンというその注文は、だいぶ無理難題じゃないでしょうか……)。
例えば「レストランを探して」と頼むと、「本人はピザが好きで、妻はグルテンフリーで、娘はベジタリアン」というそれぞれの特性を踏まえて、適切な店を探してくれるとのこと。AIベースのアシスタントやコンシェルジュといったサービスが最も必要とし、かつ最も得るのが難しいのは、まさにこのコンテキスト情報なので、これはAlexa+の強みになると思います(ところでピザ×グルテンフリー×ベジタリアンというその注文は、だいぶ無理難題じゃないでしょうか……)。
セットアップでやや苦戦
前置きが長くなりましたが、Echo Show 8でAlexa+を使ってみることにします。
まずはセットアップですが、最近のAmazonデバイスは購入時に使ったAmazonアカウントがひも付いて出荷されることが多く、今回もほとんど何もしなくても起動まではすんなり行きました。
つまづいたのはは家の照明のコントロールに使っている「Philips Hue」のブリッジとの連携でした。以前使っていた古いブリッジがアカウントに登録されたままになっており、それにひも付く照明がたくさんリストされているものの、どれも操作を受け付けないありさまです。
仕方がないので既にHueブリッジと連携しているスマートフォンからAlexaアプリを開き、古い設定を消して新しいブリッジをつなごうと試みたのですが、やり方がさっぱりわかりません。AmazonのアプリはいずれもUIが今ひとつですね、こう、けっして親切ではなく、Amazonの想定するシナリオから少しでも外れると途端に何もわからなくなることで定評がありますが、Alexaアプリも例外ではありません。
しかし、まさにこういうときのためのAlexa+ではないでしょうか。現在のユーザーと自身のアプリの状況を理解した上で、適切なアドバイスを出してくることが期待できます。早速、現況の打開策をAlexa+に聞いてみます。
「Hueのブリッジをつなぐにはどうすればいい?」
「それなら、Alexaアプリを開いて『デバイス』から『デバイスを追加』を選び、『Philips Hue』を選んだら、後は指示に従って」
はっきりとした指示が返ってきました。
まずはセットアップですが、最近のAmazonデバイスは購入時に使ったAmazonアカウントがひも付いて出荷されることが多く、今回もほとんど何もしなくても起動まではすんなり行きました。
つまづいたのはは家の照明のコントロールに使っている「Philips Hue」のブリッジとの連携でした。以前使っていた古いブリッジがアカウントに登録されたままになっており、それにひも付く照明がたくさんリストされているものの、どれも操作を受け付けないありさまです。
仕方がないので既にHueブリッジと連携しているスマートフォンからAlexaアプリを開き、古い設定を消して新しいブリッジをつなごうと試みたのですが、やり方がさっぱりわかりません。AmazonのアプリはいずれもUIが今ひとつですね、こう、けっして親切ではなく、Amazonの想定するシナリオから少しでも外れると途端に何もわからなくなることで定評がありますが、Alexaアプリも例外ではありません。
しかし、まさにこういうときのためのAlexa+ではないでしょうか。現在のユーザーと自身のアプリの状況を理解した上で、適切なアドバイスを出してくることが期待できます。早速、現況の打開策をAlexa+に聞いてみます。
「Hueのブリッジをつなぐにはどうすればいい?」
「それなら、Alexaアプリを開いて『デバイス』から『デバイスを追加』を選び、『Philips Hue』を選んだら、後は指示に従って」
はっきりとした指示が返ってきました。

Hueブリッジのつなぎ方をAlexa+に尋ねたところ
さっそくアプリを開いてみます……が、「デバイスを追加」が見当たりません。探し回った結果、右上の「+」ボタンを押した後に選択肢が出てくることがわかりました。多分、これはAlexaアプリのヘルプか何かを読んで答えているだけで、現行のアプリの仕様をAlexa+が把握しているわけではないのでしょう。ともあれ、指示に従って手順を進めてみましたが、ブリッジがどうしても見つかりません。
四苦八苦した結果、Hueのスキルにひも付いていた古いブリッジを削除し、新たにブリッジを登録し直すことで、ようやくAlexa+からHueとそれにひも付く照明を操作できるようになりました。残念ながら現状では、Alexa+は自身のアプリの現状について詳しく状況を把握することはできないようです。
四苦八苦した結果、Hueのスキルにひも付いていた古いブリッジを削除し、新たにブリッジを登録し直すことで、ようやくAlexa+からHueとそれにひも付く照明を操作できるようになりました。残念ながら現状では、Alexa+は自身のアプリの現状について詳しく状況を把握することはできないようです。

梶山弘
エンジニア・ライター
1973年生まれ。元小学校の校長。なぜかシリコンバレーのGAFAMに転職後、業務に従事しつつ、IT関連のさまざまな情報を現地の肌感でこっそり伝える副業を楽しんでいる。