パナソニックの電気シェーバー事業が2025年に70周年を迎えました。同社は2023年に発売した手のひらに収まるシェーバー「ラムダッシュ パームイン」シリーズのヒットを皮切りに、グローバル展開を加速させようとしています。
グローバルに対応した増産体制を敷くため同社は、AIやロボティクスを活用した生産効率向上に取り組んでいます。限られた敷地面積と人員の中で、どのように効率化を実現しているのか。家電エバンジェリストとして執筆のほかテレビなどにも出演する筆者が、2025年9月に行われた工場見学の様子を紹介します。
超小型ひげそりの「ラムダッシュ パームイン」の使い心地に興味のある方は、筆者のレビュー記事もご覧ください。
グローバルに対応した増産体制を敷くため同社は、AIやロボティクスを活用した生産効率向上に取り組んでいます。限られた敷地面積と人員の中で、どのように効率化を実現しているのか。家電エバンジェリストとして執筆のほかテレビなどにも出演する筆者が、2025年9月に行われた工場見学の様子を紹介します。
超小型ひげそりの「ラムダッシュ パームイン」の使い心地に興味のある方は、筆者のレビュー記事もご覧ください。
手のひらに収まる「パームイン」がヒット! しかし試作品は“お蔵入り”に
パナソニックの電気シェーバーシリーズ「ラムダッシュ」が2024年、国内シェアで50%超を達成しました。このシェア上昇に大きく貢献したのが、「ラムダッシュ パームイン」シリーズです。手のひらにすっぽり収まるサイズ感のパームインシリーズは、従来の「グリップモデル」から大幅にコンパクト化したことと、使い勝手の良さで人気となりました。2024年にはラムダッシュシリーズの売り上げの約3割を占めているとのことです。

2025年4月に発売した「ラムダッシュ パームイン70th ANNIVERSARY EDITION」(実勢価格5万円前後)
旅行や出張に持ち運びしやすいコンパクトシェーバーはさまざまなメーカーが製造販売していますが、ハイエンドモデルからはほど遠いシンプルな製品がほとんどです。その点、パームインシリーズは2023年の発売当初から5枚刃システムを採用しており、グリップモデルで6枚刃のフラッグシップモデル「ラムダッシュ PRO ES-L650U」(実勢価格4万6000円前後)に近い剃り味を実現しているのだから驚きです。
発売からわずか2年目で、同社の販売金額シェア3割まで上り詰めたパームインシリーズですが、2018年に技術部門で試作品が生み出されたときには、そのフォルムを生かせるコンセプトを生み出せなかったため一度お蔵入りになったそうです。モノは仕上がったものの、「手のひらに収まるコンパクトなシェーバーが、どのようなユーザー体験をもたらすのか」という点で、その付加価値を提案するコンセプトが見いだせなかったのだそうです。
発売からわずか2年目で、同社の販売金額シェア3割まで上り詰めたパームインシリーズですが、2018年に技術部門で試作品が生み出されたときには、そのフォルムを生かせるコンセプトを生み出せなかったため一度お蔵入りになったそうです。モノは仕上がったものの、「手のひらに収まるコンパクトなシェーバーが、どのようなユーザー体験をもたらすのか」という点で、その付加価値を提案するコンセプトが見いだせなかったのだそうです。

2018年に生まれたパームインの試作品
「2021年頃に『なでるように剃る新感覚のシェービング体験』というコンセプトが出来上がって、今度はすごくいいものができそうだということで、製品化の検討がスタートしました」(担当者)
つまり、小型化するだけではなく、それがどのようなユーザー体験につながるかを提案できて初めて製品化できるというわけです。このコンセプトがあってこそ、大ヒットにつながったのでしょう。
つまり、小型化するだけではなく、それがどのようなユーザー体験につながるかを提案できて初めて製品化できるというわけです。このコンセプトがあってこそ、大ヒットにつながったのでしょう。

パームインの試作品の変遷。右から左へと新しくなっていきます
パームインを“ゲームチェンジャー”と捉えてグローバル展開を目論む
パナソニックのシェーバーは、グローバルでの累計出荷台数が2025年9月に2.4億台を突破しました。その売り上げの約55%は国内ですが、残り約45%は欧米やアジアなどの海外販売分です。今後はこれまで以上にグローバル展開を積極的に進めるとしており、その“切り札”がパームインシリーズなのです。
パナソニック くらしアプライアンス社 常務でビューティ・パーソナルケア事業部長の南波嘉行氏は、2025年4月に発売した「ラムダッシュ パームイン70th ANNIVERSARY EDITION」について「インバウンドの方の購入比率が高くなっており、非常に好評を得ています」とコメントしました。
パナソニック くらしアプライアンス社 常務でビューティ・パーソナルケア事業部長の南波嘉行氏は、2025年4月に発売した「ラムダッシュ パームイン70th ANNIVERSARY EDITION」について「インバウンドの方の購入比率が高くなっており、非常に好評を得ています」とコメントしました。

パナソニック くらしアプライアンス社 常務でビューティ・パーソナルケア事業部長の南波嘉行氏
「2024年1月のCES(米ラスベガスで開催される世界最大級のテクノロジー見本市)に出展したところアワードを受賞するなど、パームインシェーバーがグローバルのユーザーから高い評価を得る兆しが見えています。そこで今後のシェーバー事業として、日本ではパームインシェーバーの販売金額を国内シェーバー事業の約50%まで高めること、海外市場では2030年度の販売金額を2024年度比で2倍へ拡大することを目指します。パームインで起こすべきことは“ゲームチェンジ”です。同じようなシェーバーで性能争いをするのではなく、『ちょっと違うものが出たね』『こういうモノが欲しいね』といったことを海外でも起こしたいと思っています」(南波氏)

安蔵 靖志
Techジャーナリスト/家電エバンジェリスト
家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout デジタル・家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」にレギュラー出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの商品リサーチ・構成にも携わっている。