亡くなった一般人の「復活」
残念ながらこの規制は基本的に、商業的価値を持つ「著名人」のデジタルレプリカの使用に関するものとなっている。そのため一般人には適用されない。具体的には、法案の中で「故人の著名人(Deceased Personality)」という用語が使われており、その人物の名前や声、映像、写真などが商業的価値を持つ場合にのみ適用されるとしている。
これは、現時点においてデジタル復活が商業的行為と関連して行われることが多いためだろう。しかしAIが前例のないペースで進歩する時代において、故人をデジタル的に復活させられる可能性は、SFの領域から現実的な可能性へと移行しつつある。その結果、一般の人びとであっても、写真や動画、音声といった残されたわずかなデジタルデータから「復活」できるようになってきている。
例えば2024年3月、アジア系ニュースを多く取り扱うNext Sharkは、台湾のあるミュージシャンが行った「デジタル復活」について報じている。その人物はティノ・バオさんといい、亡き娘バオ・ロンさんが北京語で「ママ、誕生日おめでとう」と言い、「ハッピーバースデー」を歌う動画をAIで作成、自身のFacebook上で公開した。バオさんによれば、娘の写真はたくさんあったため、映像は簡単に作成できたという。苦労したのは声を再現することで、母親とのビデオ通話が記録されていたものしか残っておらず、なんとか数個のメッセージと歌声だけを再現できたそうだ。
これは、現時点においてデジタル復活が商業的行為と関連して行われることが多いためだろう。しかしAIが前例のないペースで進歩する時代において、故人をデジタル的に復活させられる可能性は、SFの領域から現実的な可能性へと移行しつつある。その結果、一般の人びとであっても、写真や動画、音声といった残されたわずかなデジタルデータから「復活」できるようになってきている。
例えば2024年3月、アジア系ニュースを多く取り扱うNext Sharkは、台湾のあるミュージシャンが行った「デジタル復活」について報じている。その人物はティノ・バオさんといい、亡き娘バオ・ロンさんが北京語で「ママ、誕生日おめでとう」と言い、「ハッピーバースデー」を歌う動画をAIで作成、自身のFacebook上で公開した。バオさんによれば、娘の写真はたくさんあったため、映像は簡単に作成できたという。苦労したのは声を再現することで、母親とのビデオ通話が記録されていたものしか残っておらず、なんとか数個のメッセージと歌声だけを再現できたそうだ。
AIが作った「ママ、お誕生日おめでとう」と言い、「ハッピーバースデー」を歌う故人の動画
バオさんの例が示しているように、AI技術で故人を「再現」しようという取り組みは既にいくつも存在しており、実は専用のサービスも登場している。そのひとつ「HereAfter AI」というアプリは、生前に録音されていた音声データを使い、その死後も本人の声で話しかけてくれるというものだ。
HereAfter AIの紹介動画
via www.youtube.com
こちらの紹介動画で解説されているように、このアプリを使うためには、本人が事前にさまざまな質問に自分の肉声で答えたり、自分に関する写真などの記録をアップロードしたりするなど、一定の準備を進めておかなければならない。ただその準備さえ完了すれば、ユーザーが亡くなった後も、残された家族はチャットボットに話しかける感覚で故人とアプリ上で会話できる。
HereAfter AIに登録できる情報量はプランによって異なり、最も安い料金で月額3.99ドルのサブスクリプション型となっているが、この場合は登録できる「ストーリー」(自分に関する体験談)や画像がそれぞれ20件/20枚まで。ストーリーも写真も無制限で登録できる無制限プランは199ドルの買い切り型となっている。
この料金設定が妥当かどうかはともかく、ほかにも同じように、生前に本人の同意を得た上で残しておいた、あるいは本人自らが残したデータを使ってAIに故人を模倣させるサービスが存在する。そうした同意があり、また使用目的も「故人をしのぶ」ということに限定されているのであれば、許容できるという意見が多いのではないだろうか。
HereAfter AIに登録できる情報量はプランによって異なり、最も安い料金で月額3.99ドルのサブスクリプション型となっているが、この場合は登録できる「ストーリー」(自分に関する体験談)や画像がそれぞれ20件/20枚まで。ストーリーも写真も無制限で登録できる無制限プランは199ドルの買い切り型となっている。
この料金設定が妥当かどうかはともかく、ほかにも同じように、生前に本人の同意を得た上で残しておいた、あるいは本人自らが残したデータを使ってAIに故人を模倣させるサービスが存在する。そうした同意があり、また使用目的も「故人をしのぶ」ということに限定されているのであれば、許容できるという意見が多いのではないだろうか。
小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。