よみがえる有名人たち
テレビドラマ『探偵物語』や映画『蘇る金狼』など数々の作品に主演・出演し、1989年に亡くなった松田優作さんの“新作”CMが、この夏世間をにぎわせた。シャープのスマートフォン「AQUOS」の最新機種のテレビコマーシャルに松田さんが登場し、7月12日から8月12日まで放映されていたのである。テレビやオンラインで目にした、という方も多いだろう。
【AQUOS R9】「本当のこと」篇 TVCM放映バージョン
via www.youtube.com
もちろんここに登場する松田さんは、「松田優作のそっくりさん」や物まねタレントではない。AIやモーションキャプチャーなどの技術を活用して作成された、CGの動画である。しかしその声も表情も本物そっくりで、映像として何ら違和感がない。
これまでも、故人となっている有名人を技術の力でデジタルコンテンツとして復活させる、という試みがなされてきた。記憶に新しいのは、4年前となる2020年の紅白歌合戦に出演した「AI美空ひばり」だろう。これは文字通り、故・美空ひばりさんをAIで復活させるというもので、舞台上では新曲「あれから」が披露された。
くしくも彼女が亡くなったのも松田さんと同じく1989年であり、当然ながらこのAI美空ひばりの歌唱も、断片的な動画や音声を切り貼りしたものではない。技術の力によって、まったく新しいデジタルコンテンツが生成されたのである。
このように、故人をデジタルコンテンツの形でよみがえらせることを「デジタル復活(Digital Resurrection)」と呼ぶようになっている。デジタル復活は海外でも一般的に行われるようになっており、例えば2016年の映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では、故ピーター・カッシングさんが演じたキャラクターのターキン総督を劇中で再現するためにデジタル技術が使用された。
つまりそれだけ関連技術が進化し、デジタル復活が容易化・高品質化しているということだが、一方で全てのケースがトラブルなく行われているというわけではない。
さまざまな冠番組を手掛けていた有名人シェフで、2018年に亡くなった故アンソニー・ボーディンさんを扱ったドキュメンタリー映画『ロードランナー』が2021年に公開された際、そこで使用された「声」が問題になった。約45秒間のナレーションのために、ボーディンさんの声がAI技術によって生成されたのだが、この行為に対し適切な同意がなされていなかったのである。
同作品のモーガン・ネヴィル監督は当初、ボーディンさんの遺族から許可を得たと主張していた。しかしボーディンさんの元妻であるオッタヴィア・ブシアさんは、この主張について公式に反論。両者の言い分が真っ向から対立することとなってしまった。
現在では、こうしたトラブルを避けるために、さまざまな規制を整備することが議論されている。例えば米カリフォルニア州議会では最近、AB1836という法案が成立した。これは故人の「デジタルレプリカ(個人の声や視覚的な肖像として容易に識別可能な、コンピューター生成の高度にリアルな電子的表現と定義されている)」を無断で利用することを禁じるもので、故人の名前、声、署名、写真、または肖像の商業的価値が、適切な同意なしに使用されることから保護するための規定が盛り込まれている。
ちなみにこのAB1836では、デジタルレプリカに関連する権利を含むパブリシティ権が、遺言やその他の法的手段を通じて譲渡できるという原則を再確認している。これにより、当人が死後もデジタルレプリカの使用をコントロールできることを保証している。つまり死後に自分のデジタルレプリカをどうしたいのか、自分の遺言状で明記しておけば、それがちゃんと守られるというわけだ。
これまでも、故人となっている有名人を技術の力でデジタルコンテンツとして復活させる、という試みがなされてきた。記憶に新しいのは、4年前となる2020年の紅白歌合戦に出演した「AI美空ひばり」だろう。これは文字通り、故・美空ひばりさんをAIで復活させるというもので、舞台上では新曲「あれから」が披露された。
くしくも彼女が亡くなったのも松田さんと同じく1989年であり、当然ながらこのAI美空ひばりの歌唱も、断片的な動画や音声を切り貼りしたものではない。技術の力によって、まったく新しいデジタルコンテンツが生成されたのである。
このように、故人をデジタルコンテンツの形でよみがえらせることを「デジタル復活(Digital Resurrection)」と呼ぶようになっている。デジタル復活は海外でも一般的に行われるようになっており、例えば2016年の映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』では、故ピーター・カッシングさんが演じたキャラクターのターキン総督を劇中で再現するためにデジタル技術が使用された。
つまりそれだけ関連技術が進化し、デジタル復活が容易化・高品質化しているということだが、一方で全てのケースがトラブルなく行われているというわけではない。
さまざまな冠番組を手掛けていた有名人シェフで、2018年に亡くなった故アンソニー・ボーディンさんを扱ったドキュメンタリー映画『ロードランナー』が2021年に公開された際、そこで使用された「声」が問題になった。約45秒間のナレーションのために、ボーディンさんの声がAI技術によって生成されたのだが、この行為に対し適切な同意がなされていなかったのである。
同作品のモーガン・ネヴィル監督は当初、ボーディンさんの遺族から許可を得たと主張していた。しかしボーディンさんの元妻であるオッタヴィア・ブシアさんは、この主張について公式に反論。両者の言い分が真っ向から対立することとなってしまった。
現在では、こうしたトラブルを避けるために、さまざまな規制を整備することが議論されている。例えば米カリフォルニア州議会では最近、AB1836という法案が成立した。これは故人の「デジタルレプリカ(個人の声や視覚的な肖像として容易に識別可能な、コンピューター生成の高度にリアルな電子的表現と定義されている)」を無断で利用することを禁じるもので、故人の名前、声、署名、写真、または肖像の商業的価値が、適切な同意なしに使用されることから保護するための規定が盛り込まれている。
ちなみにこのAB1836では、デジタルレプリカに関連する権利を含むパブリシティ権が、遺言やその他の法的手段を通じて譲渡できるという原則を再確認している。これにより、当人が死後もデジタルレプリカの使用をコントロールできることを保証している。つまり死後に自分のデジタルレプリカをどうしたいのか、自分の遺言状で明記しておけば、それがちゃんと守られるというわけだ。
小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。