封印した「なぜ」を子どもたちとの会話が解き放つ
子どものころは、あらゆることに「なんで?」「どうして?」と問い続けていたのに、大人になるといつの間にか純粋な好奇心を失ってしまう。子どもたちの力を借りて、実用的な疑問や課題解決を気にせず、わからないことを自由にぶつけてみてはどうだろうか。
本書は、学術的視点ではなく「哲学とは考える技術」であることをうたい、社会問題から日常にあるさまざまな「なぜ」を哲学的に問い直した1冊。権利や復讐、無限などの古典的な事象から、ジェンダーや差別などの現代哲学まで、12のテーマについて哲学者の父が2人の息子たちと語り合う。
著者は「子どもは誰もが哲学者であり、大人である読者がもう一度哲学をするために対等な会話が必須である」と言う。また、書かれたことに懐疑的になってほしいとも言う。軽やかな会話で展開されるが、「トロッコ問題」や「虚構主義」「テセウスの船」など、専門家によるポイントを押さえた解説や切り口は、一般教養以上に深い内容だ。素朴でストレートな子どもからの質問に大人である私たちが気づかされることも多い。
考え抜くことが求められる哲学は、対話を重ねていくことで自分が認識していた世界をあらためて疑う目線が得られるだろう。世界は未だ不思議に満ちているのだ。
本書は、学術的視点ではなく「哲学とは考える技術」であることをうたい、社会問題から日常にあるさまざまな「なぜ」を哲学的に問い直した1冊。権利や復讐、無限などの古典的な事象から、ジェンダーや差別などの現代哲学まで、12のテーマについて哲学者の父が2人の息子たちと語り合う。
著者は「子どもは誰もが哲学者であり、大人である読者がもう一度哲学をするために対等な会話が必須である」と言う。また、書かれたことに懐疑的になってほしいとも言う。軽やかな会話で展開されるが、「トロッコ問題」や「虚構主義」「テセウスの船」など、専門家によるポイントを押さえた解説や切り口は、一般教養以上に深い内容だ。素朴でストレートな子どもからの質問に大人である私たちが気づかされることも多い。
考え抜くことが求められる哲学は、対話を重ねていくことで自分が認識していた世界をあらためて疑う目線が得られるだろう。世界は未だ不思議に満ちているのだ。
『父が息子に語る 壮大かつ圧倒的に面白い哲学の書』
発行:ダイヤモンド社
著者:スコット・ハーショヴィッツ 著 / 御立 英史 訳
定価:2420円(税込)
発行日:2023年11月29日
判型:四六判
頁数:600P
ISBN:978-4-4781-0990-8
https://www.diamond.co.jp/book/9784478109908.html
発行:ダイヤモンド社
著者:スコット・ハーショヴィッツ 著 / 御立 英史 訳
定価:2420円(税込)
発行日:2023年11月29日
判型:四六判
頁数:600P
ISBN:978-4-4781-0990-8
https://www.diamond.co.jp/book/9784478109908.html
現代にこそ必要な哲学「人生の意味」を考える
生きていると、多くの人が「自分の人生に意味はあるのか」と問いかけたことがあるだろう。特に悩みを抱えていたり、行き詰まったときにこそ湧き上がったりするので、深刻になりがちだ。そんなときは、意味そのものではなく「人生の意味について問うとはどういうことか」を考えてみてはどうだろうか。
本書は、10人の研究者による人生の意味に関する分析哲学を扱った現代哲学書。英語圏では、人生の意味という曖昧かつ主観的なテーマについて、分析哲学的な手法を用いた研究が進んでいるという。専門的な記述も多く、入門書としては難解だが、第1章は専門知識がない読者を想定した内容で順に難易度が増していく。
学術用語は登場するものの、文章自体は一般書のように柔らかく、読み進めていくうちに人生の意味を哲学的に考えるための哲学実技を体感できるのが面白い。人生の意味とは、幸せとは、無意味ならなぜ生まれたのか、自己実現とは、など著者たちが読者の疑問をすくい取り、伴走しながら「なぜ」を展開し考察してくれる。
「生きることの意味」という身近で普遍的なテーマについて、自らを問い直すトレーニングのような1冊として手にとってみたい。
本書は、10人の研究者による人生の意味に関する分析哲学を扱った現代哲学書。英語圏では、人生の意味という曖昧かつ主観的なテーマについて、分析哲学的な手法を用いた研究が進んでいるという。専門的な記述も多く、入門書としては難解だが、第1章は専門知識がない読者を想定した内容で順に難易度が増していく。
学術用語は登場するものの、文章自体は一般書のように柔らかく、読み進めていくうちに人生の意味を哲学的に考えるための哲学実技を体感できるのが面白い。人生の意味とは、幸せとは、無意味ならなぜ生まれたのか、自己実現とは、など著者たちが読者の疑問をすくい取り、伴走しながら「なぜ」を展開し考察してくれる。
「生きることの意味」という身近で普遍的なテーマについて、自らを問い直すトレーニングのような1冊として手にとってみたい。
『人生の意味の哲学入門』
発行:春秋社
編者:森岡正博 蔵田伸雄
定価:2420円(税込)
発行日:2023年12月15日
判型:四六判
頁数:320P
ISBN:978-4-3933-3395-2
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333952.html
発行:春秋社
編者:森岡正博 蔵田伸雄
定価:2420円(税込)
発行日:2023年12月15日
判型:四六判
頁数:320P
ISBN:978-4-3933-3395-2
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393333952.html
「自分の問いを見過ごさない」を習慣づけよう
哲学は、正解やゴールを求める学問ではない。大事なことは、どこかにある正解を見つけることではなく、自分の頭と言葉を使ってどう考え、どう想像していくかを探り続けることだ。
今回紹介した5冊はスラスラと読める書籍ばかりではないが、共通しているのは瑣末に感じても「なぜ」や「わからない」を諦めない、手放さないことの大切さを一貫して述べていることだ。
結果的に、大人になっても抱えがちな、中高生の“中二病”のような行き場のない悩みも一歩引いて思考できるようになるのではないだろうか。
あなたの中に生まれた小さな「なぜ」に立ち止まり、解決できなくても思考し続けること、考え抜いてみることが自分の人生の指標となる哲学となっていくはずだ。
今回紹介した5冊はスラスラと読める書籍ばかりではないが、共通しているのは瑣末に感じても「なぜ」や「わからない」を諦めない、手放さないことの大切さを一貫して述べていることだ。
結果的に、大人になっても抱えがちな、中高生の“中二病”のような行き場のない悩みも一歩引いて思考できるようになるのではないだろうか。
あなたの中に生まれた小さな「なぜ」に立ち止まり、解決できなくても思考し続けること、考え抜いてみることが自分の人生の指標となる哲学となっていくはずだ。
葉々社 小谷輝之
本屋と出版社
2社の出版社勤務を経て、2022年4月に東京・梅屋敷で本屋「葉々社」を開店。ひとりで本屋の運営を切り盛りしながら、出版社としての本作りにも取り組み中。Twitter:@youyousha_books