個々が自分軸を持ち、考えて行動することが必要とされる現代社会で、今こそ学んでおきたいのが「哲学」。年齢を重ねて多様な経験が増えると、哲学的思考が課題解決や視点の切り替えに応用できるようになる。
哲学の知識が身につくと、言葉にしにくいモヤモヤした気持ちを自分の中で言語化しやすくなり、人間関係や人生の悩みがスッとほどけて日常生活がラクになる。
自ら問いを立て、自分の考えを自分の言葉で語るために、哲学の知識を蓄えて思考を育てる手法は、あなたにとって必ず大きな武器となるだろう。
哲学の知識が身につくと、言葉にしにくいモヤモヤした気持ちを自分の中で言語化しやすくなり、人間関係や人生の悩みがスッとほどけて日常生活がラクになる。
自ら問いを立て、自分の考えを自分の言葉で語るために、哲学の知識を蓄えて思考を育てる手法は、あなたにとって必ず大きな武器となるだろう。
まずはこの1冊!押さえておきたい10人の哲学者
日本の学校教育では哲学を学ぶ機会はあまりないが、フランスではバカロレア(大学入学資格試験)で必修科目だという。一見すると、哲学は日常生活からかけ離れているように思えるが、哲学者たちの真理は課題解決や決断のヒントに応用できる。
本書は、プラトン、アリストテレス、カント、ニーチェ、サルトルら、10人の西洋哲学者について、彼らの思想や時代背景を含めて要約した入門書だ。彼らがどのような思想で世界や物事を捉えているのか、それにより人々や社会はどうあるべきかが、簡潔に総括されている。通史的にまとめられているので、当時の社会情勢や宗教との折り合いなど、時代の変遷とともに自らの主義を発展させていく流れが興味深い。
中でもユニークなのが、各哲学者からのアドバイスが掲載されているところ。例えば「カントからのアドバイス」では、優柔不断な性格に悩む人に向けて、方法序説を用いて実生活に役立つヒントを提示している。
さらに掘り下げたい人は、同シリーズでテーマ別に哲学的思考を解説した『フランスの高校生が学んでいる哲学の教科書』もおすすめだ。「考え方」「書き方」に重点が置かれており、難解だがより深い思考へアプローチできる。
本書は、プラトン、アリストテレス、カント、ニーチェ、サルトルら、10人の西洋哲学者について、彼らの思想や時代背景を含めて要約した入門書だ。彼らがどのような思想で世界や物事を捉えているのか、それにより人々や社会はどうあるべきかが、簡潔に総括されている。通史的にまとめられているので、当時の社会情勢や宗教との折り合いなど、時代の変遷とともに自らの主義を発展させていく流れが興味深い。
中でもユニークなのが、各哲学者からのアドバイスが掲載されているところ。例えば「カントからのアドバイス」では、優柔不断な性格に悩む人に向けて、方法序説を用いて実生活に役立つヒントを提示している。
さらに掘り下げたい人は、同シリーズでテーマ別に哲学的思考を解説した『フランスの高校生が学んでいる哲学の教科書』もおすすめだ。「考え方」「書き方」に重点が置かれており、難解だがより深い思考へアプローチできる。
『フランスの高校生が学んでいる10人の哲学者』
発行:草思社
著者:シャルル・ぺパン 著 /永田千奈 訳
定価:990円(税込)
発行日:2024年2月8日
判型:文庫判
頁数:192P
ISBN:978-4-7942-2704-1
https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2704.html
発行:草思社
著者:シャルル・ぺパン 著 /永田千奈 訳
定価:990円(税込)
発行日:2024年2月8日
判型:文庫判
頁数:192P
ISBN:978-4-7942-2704-1
https://www.soshisha.com/book_search/detail/1_2704.html
小さな内なる声をあげて世界と触れ合う
日々生きていると、とりとめもない考えや疑問、引っかかりが浮かばない日はない。哲学は特別な学問ではなく、身近な「なぜ」や「モヤモヤ」に取り組むことでいつでも始められる。
本書は、若き哲学者にして学校や企業、自治体などで哲学対話を開催する著者による、哲学の分からなさ、面白さ、不可思議さを伝えるエッセイ。借り物ではなく、自分の問いをもとに世界に根ざしながら世界を見つめて考えるという、「手のひらサイズの哲学」を彼女は提唱する。
哲学対話は、人の話をよく聞き、自分の言葉で話し、「人それぞれ」で終わらないこと以外にルールはない。共感がゴールではなく、互いのことをわかり合おうと対話を続けることを大切にしている。考えても仕方がないと思っていた内なる悩みを問いにしてみると、哲学対話のテーマとして誰かと分かち合うこともできる。
本書によって、哲学とは自己を確立するツールだけでなく、自分を解放していくことのようにも感じられる。柔らかくて繊細、かつ詩的な文章で綴られており、読者はまるで水中に深く潜るかのように思考の大海原を自由に泳ぐ楽しさを発見するだろう。あえて立ち止まり留まる力を育てていける1冊だ。
本書は、若き哲学者にして学校や企業、自治体などで哲学対話を開催する著者による、哲学の分からなさ、面白さ、不可思議さを伝えるエッセイ。借り物ではなく、自分の問いをもとに世界に根ざしながら世界を見つめて考えるという、「手のひらサイズの哲学」を彼女は提唱する。
哲学対話は、人の話をよく聞き、自分の言葉で話し、「人それぞれ」で終わらないこと以外にルールはない。共感がゴールではなく、互いのことをわかり合おうと対話を続けることを大切にしている。考えても仕方がないと思っていた内なる悩みを問いにしてみると、哲学対話のテーマとして誰かと分かち合うこともできる。
本書によって、哲学とは自己を確立するツールだけでなく、自分を解放していくことのようにも感じられる。柔らかくて繊細、かつ詩的な文章で綴られており、読者はまるで水中に深く潜るかのように思考の大海原を自由に泳ぐ楽しさを発見するだろう。あえて立ち止まり留まる力を育てていける1冊だ。
『水中の哲学者たち』
発行:晶文社
著者:永井玲衣
定価:1760円(税込)
発行日:2021年9月28日
判型:四六判
頁数:268P
ISBN:978-4-7949-7274-3
https://www.shobunsha.co.jp/?p=6703
発行:晶文社
著者:永井玲衣
定価:1760円(税込)
発行日:2021年9月28日
判型:四六判
頁数:268P
ISBN:978-4-7949-7274-3
https://www.shobunsha.co.jp/?p=6703
「暇と退屈」にとことん向き合う
もっと余裕ができ、豊かになったらしてみたい「好きなこと」を思い浮かべてほしい。それは本当に願いつつも叶わないことだろうか? 実はこの消費社会においては、欲望やぜいたくは先に生産されたものを供給されることで経済が回っている。つまり、暇を受け入れて持て余すことをやめてしまい、何も消費しないでいられると、社会が成り立たないのだ。なんとか「暇なことは退屈なこと」だと認識し、持て余し続けてもらう必要がある。
消費社会からその影響を強く受けているがゆえに、私たちは余裕ができて退屈することを嫌う。結果的に暇を搾取されているのだ。
本書は、「暇の中でいかに生きるべきか、退屈とどう向き合うべきか」という問いを哲学的な思考で追究していく。暇と退屈の問題構成、歴史的見地、さらには経済的観点からもテーマを掘り下げていく。後半はハイデッガーの退屈論『形而上学の根本諸概念』を紹介し、最終章でそれまでの知見を踏まえた構想へと展開する。この流れと組み立てが見事だ。著者も推奨するようにスピード感を持って一気読みしてほしい。
持て余すのが当然だと思っていた暇と退屈について、考古学や生物学など、多様な学術的視点をもとに、とことん向き合い分析していくと、「どう生きるか」という人生における不変的なテーマにまでたどり着く。妥協する人生に抗う概念と思考の拠点を築く醍醐味を味わえる1冊だ。
消費社会からその影響を強く受けているがゆえに、私たちは余裕ができて退屈することを嫌う。結果的に暇を搾取されているのだ。
本書は、「暇の中でいかに生きるべきか、退屈とどう向き合うべきか」という問いを哲学的な思考で追究していく。暇と退屈の問題構成、歴史的見地、さらには経済的観点からもテーマを掘り下げていく。後半はハイデッガーの退屈論『形而上学の根本諸概念』を紹介し、最終章でそれまでの知見を踏まえた構想へと展開する。この流れと組み立てが見事だ。著者も推奨するようにスピード感を持って一気読みしてほしい。
持て余すのが当然だと思っていた暇と退屈について、考古学や生物学など、多様な学術的視点をもとに、とことん向き合い分析していくと、「どう生きるか」という人生における不変的なテーマにまでたどり着く。妥協する人生に抗う概念と思考の拠点を築く醍醐味を味わえる1冊だ。
『暇と退屈の倫理学』
発行:新潮社
著者:國分功一郎
定価:990円(税込)
発行日:2021年12月23日
判型:文庫判
頁数:512P
ISBN:978-4-1010-3541-3
https://www.shinchosha.co.jp/book/103541/
発行:新潮社
著者:國分功一郎
定価:990円(税込)
発行日:2021年12月23日
判型:文庫判
頁数:512P
ISBN:978-4-1010-3541-3
https://www.shinchosha.co.jp/book/103541/
葉々社 小谷輝之
本屋と出版社
2社の出版社勤務を経て、2022年4月に東京・梅屋敷で本屋「葉々社」を開店。ひとりで本屋の運営を切り盛りしながら、出版社としての本作りにも取り組み中。Twitter:@youyousha_books