makeshop、防災グッズの販売傾向と災害発生時のEC利用傾向を調査

安蔵 靖志

GMOインターネットグループ調査・レポート買い物
2023の「防災の日」で関東大震災発生から100年が経ちました。そこでGMOインターネットグループでECサイト構築SaaS「makeshop byGMO」を運営するGMOメイクショップは、同サービスで構築されたECサイトのデータを基にした防災グッズの販売傾向や、災害発生時におけるECサイトの利用傾向について調査しました。

コロナ禍で防災グッズの流通額も急増し、前年2.13倍の1.8億円に

makeshopでの防災グッズ(商品名に「防災」のキーワードを含む商品のデータを抽出)の流通額とその成長率を、東日本大震災が発生した2011年から2022年までについて調査しました。

熊本地震のあった2016年の成長率は161%と最も高く、その後も成長傾向が見られました。また新型コロナウイルスが蔓延し始めた2020年の流通額は前年の2.13倍、約1.8億円まで急増しています。

地震や水害などの発生が頻発していることから、防災意識が徐々に高まっているようです。さらに新型コロナウイルスの蔓延を機に、万が一に備えて防災グッズを購入する人が増えたことも数値が増加した一因と考えられます。

また2020年は、外出自粛の影響からECを利用する人が増え、makeshop全体の流通額も成長率35%と高い成長を記録しました。2020年の防災グッズの成長率は、それを大きく上回る113%となっており、グラフも特徴的な動きをしていることが分かります。

2011~2022年の防災グッズの流通額と成長率

2021年以降は、コロナ禍が落ち着いたからか2020年と比較すると流通額・成長率も落ち着きを見せているものの、年間約1億円規模の売上となっています。

災害発生時や防災の日など、防災意識が高まるタイミングで防災グッズの注文が急増

防災グッズの注文数データを月毎に見ると、災害発生時や防災の日など防災意識が高まるタイミングで注文数が増加していることが、より顕著に見て取れます。

2011~2022年の月ごとの防災グッズ注文数

まず東日本大震災が発生した2011年3月のタイミングにグラフの山が見られます。翌年以降も3月11日前後には東日本大震災を振り返る報道が増えることから、防災グッズの注文が伸びていると考えられます。東日本大震災以外にも、2016年4月の熊本地震、2018年6月の大阪北部地震といった地震発生、さらには豪雨や台風発生後のタイミングで防災グッズの注文が増加しました。

また毎年9月1日が防災の日であることから、防災グッズの新発売や防災関連の情報を発信する企業も多く、毎年9月にも防災グッズの注文数が増加する傾向が見られました。

防災グッズ売れ筋トップ3は「防災セット」「備蓄用缶詰セット」「充電式LEDランタン」

2011~2022年の注文データから、防災グッズの売れ筋ランキングトップ5を見てみると、1位「防災セット」、2位「備蓄用缶詰セット」、3位「充電式LEDランタン」、4位「防災知識に関するガイドブック」、5位「イス付き防災キャリーカート」となりました。水、食料、防寒具、ライトなど災害時に必要な物がまとめられている「防災セット」を、1人用、2人用などと家族の人数に応じて購入し、備えている人が多いようです。

また、配送が基本となるECの場合、持ち帰りの手間が省けることから、「備蓄用缶詰セット」や「イス付き防災キャリーカート」など、かさばる物や重量のある商品が上位にランクインしていました。

東日本大震災発生後3週間で被災地への注文・被災地からの注文数は回復

東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県、宮城県、福島県、茨城県の4県について、東日本大震災発生前後のECにおける注文数を分析しました。2011年3月11日を含む週には、4県への注文数が震災発生の前週の2分の1ほどに減少していました。しかし、それが3週間後には震災発生前の9割ほどに、4週間後には完全に回復しています。

2011年3~4月の岩手県、宮城県、福島県、茨城県への注文数

同じく4県からの注文数を見ても、震災発生時にはそれ以前の5分の1ほどまでに落ち込んでいたのが、3週間後には元の水準まで戻っています。災害直後で不足している物資を調達するためか、早期にECでの注文が回復したと考えられ、EC利用による経済活動の再開が見て取れます。

2011年3~4月の岩手県、宮城県、福島県、茨城県からの注文数

熊本地震発生翌週には応援消費で被災地への注文が急増、ECが経済活動再開の鍵に

2016年4月14・16日に発生した熊本地震前後の熊本県におけるデータでは、4月14・16日を含む週に熊本県へのEC注文数がわずかに減少しているものの、その翌週には地震発生前週の2.7倍に急増していました。注文商品の内訳を見ると、熊本県のショップが販売するチャリティーグッズや、SNSで被害状況を発信していたショップの商品に対する注文が多く、応援消費により注文が急増したことが読み取れます。

2016年4~5月の熊本県への注文数

このように、震災発生時の被災地においても、EC利用による経済活動は翌週~3週間ほどで通常通りに回復しています。さらに、応援消費による支援の場としてもECが活用されていることが分かりました。

makeshopでは、有事の際にも安心してショップ運営を続けられるよう、引き続きインフラ体制の強化に努めるとしています。また、災害発生時には利用料金の支払期日延長措置を実施したり、配送遅延に関する情報を発信するなどのショップ運営をサポートするとのことです。

日本は地震や台風、土砂災害、火山噴火など、世界でも有数の災害大国です。災害の日が制定されるきっかけとなった関東大震災から100年の間にも、さまざまな災害が国民の命を奪ってきました。1年に1回の防災の日だけでなく、常に自分自身や家族の命を守る覚悟をもって防災意識を高め続けたいものです。

【調査概要】
・期間:2011年1月~2022年12月
・対象:「makeshop byGMO」を利用して構築されたECサイト
・調査項目:
 ・年毎の防災グッズの流通額
 ・月毎の防災グッズの注文数
 ・東日本大震災/熊本地震発生の前後の都道府県別注文数

安蔵 靖志

Techジャーナリスト/家電エバンジェリスト
家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout デジタル・家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」にレギュラー出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの商品リサーチ・構成にも携わっている。

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