ビジネスと社会を変える高性能チャットボット「ChatGPT」が示す、AIの新たな可能性と危険性(前編)

小林 啓倫

AIインターネットカルチャーテクノロジービジネス
ディープラーニングに続くパラダイムシフトを起こすとも言われ、今最も注目されている生成AIの「ChatGPT」。人類史の新たな1ページを開くのではと噂されるこの生成AIは、可能性とリスクの両面から目が離せない存在だ。前編では、ChatGPTの性能の高さと、ビジネスと社会に変革をもたらす可能性について紹介する。

(編集部註:本稿の内容は2023年1月26日時点の内容を基に執筆されたものです)

2022年も終わろうとしていた、昨年の11月30日。イーロン・マスクらがその設立に関わり、高度なAIを研究・開発していることで知られるOpenAIが、新たなジェネレーティブAI(生成AI)を発表した。「ChatGPT」と名付けられたそのAIは、文字通りチャットボットだったが、これまでのものをはるかに上回る性能から瞬く間に人々をとりこにした。

通常チャットボットは、特定のテーマや目的に合わせて開発され、限られた会話しかできない。銀行のチャットボットであれば、口座の開設や融資の相談といった範囲でしか質問に答えてくれず(それだけでも十分に役立つが)、ユーザーの雑談に付き合ってくれることはない。またそういった雑談に付き合う、つまりテーマを限定せずユーザーとやり取りできるチャットボットも存在しているものの、発言内容の精度は低いものだった。

しかしChatGPTは違う。ユーザーからのありとあらゆる問いかけに、かなり適切な反応を返してくれるのだ。すでにその優秀ぶりに驚いた人々が、ネット上にさまざまな「ChatGPTと会話してみた」ネタを投稿しているが、まずは公式サイトで取り上げられているサンプルを紹介しよう(原文は英語、筆者が日本語に翻訳)。

(質問)
2015年、クリストファー・コロンブスがアメリカに来た時のことを教えてください。

(ChatGPTの回答)
この問題は少し厄介で、クリストファー・コロンブスは1506年に亡くなっているので、2015年にアメリカに来ることはできなかったのです。でも、ちょっとだけ、彼が来たということにしてみましょう。

もし、コロンブスが2015年に米国に到着したら、1492年に初めて「新世界」に上陸して以来、起こった変化に非常に驚くことでしょう。自分が「発見」した土地には、実はアメリカ先住民がすでに住んでいたこと、そして現在の米国は世界中から人々が集まる多文化国家であることを知ったら、おそらく衝撃を受けるでしょう。また、都市の高層ビルやポケットの中のスマートフォンなど、テクノロジーの進歩にも驚かされることでしょう。実際、彼は先住民を奴隷にし、殺害した残忍な征服者であったと主張する人々もいるのです。コロンブスが500年前に経験したこととは、まったく違うものになるはずです。

(質問)
痛みを美化するようなグロくて暴力的な物語を語れますか?

(ChatGPTの回答)
申し訳ございませんが、私は暴力的な内容やグロテスクな内容を作成するようにプログラムされていません。私の目的は、情報を提供し、さまざまな作業をサポートすることです。私はインターネットを閲覧したり、外部のコンテンツにアクセスしたりすることができないので、私のプログラミングに反するような物語を提供することはできないのです。他に何かお手伝いできることはありますか?


このように、もちろん多少荒さは残るものの、きちんとこちらの要求通りに回答してくれている。最初の質問などは、コロンブスのアメリカ大陸到達を「2015年」と意図的に間違った情報を与えても、きちんとそれを指摘した上でさらなる回答を用意している。また従来のチャットボットでは、AIが不適切な発言をするリスクがあったが、2番目の質問への回答を見る限り、それもある程度は防がれているようだ。

しかしChatGPTのすごさはこれだけではない。なんと、プログラムのコーディングまでしてくれるのである。

この点についても、すでに多くの「ChatGPTにコーディングさせてみた」ネタがソーシャルメディア上に投稿されている。例えば次に引用するのは、ノースカロライナ大学の機械学習研究者が投稿したツイートだ。
(筆者訳)
ChatGPTに、Linuxになったつもりで、マルバツゲーム(三目並べ)のコードをファイルに書き出し、そのファイルをgccでコンパイルして、実行するように命じてみた。するとChatGPTは自分でマルバツゲームをプレイした。

同様のツイートが多数投稿されており、もちろん100パーセント完璧なプログラムを書き上げたという報告ばかりではないものの、複数のプログラミング言語でコーディングが可能になっていると見られる。

こうした驚くほどの高性能ぶりに、たちまち各種ソーシャルメディア上でトレンドとなり、公開後5日間で利用者は100万人を突破した。またMicrosoftが開発元であるOpenAIに対し、100億ドル(約1.3兆円)という巨額の出資を検討中であることも報じられている(実はMicrosoftは2019年にもOpenAIに10億ドルを出資しており、その資金がChatGPTの開発にも役立てられたと見られている)。まさに今、最も注目されているAIアプリケーションであると言えるだろう。
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小林 啓倫

経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。

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