コロナ状況下でのDX推進、GMOが感じた官民一体の進化への渇望

ムコハタワカコ

DXGMOインターネットグループインタビュー業務効率化

熊谷代表に聞いた“脱ハンコ”のきっかけと反響

GMOイズムを具現化しながら、コロナ禍の影響をバネにデジタルトランスフォーメーション(DX)進めた事例として、この1年で最も反響の大きかった“脱ハンコ”について、GMOインターネットグループの熊谷正寿代表にお話を聞きました。

──「脱ハンコ・電子契約」推進に関するTweet投稿の理由やきっかけを教えて下さい。

私は、自分自身が考えたこと、感じたことを率直にツイートしていますが、Twitterを始めとするSNSは、伝播しやすく共感を呼びやすい特徴があります。

コロナ禍における“ハンコ痛勤”は、私たちだけでなく日本全国のみなさんにも、共通の問題意識としてあったことが、脱ハンコの波が広がっていった要因だと考えています。

GMOインターネットグループは新型コロナウイルス感染拡大に備え、2020年1月27日より日本で初めて約4,000人規模で一斉在宅勤務に移行しました。在宅勤務体制下でパートナー(従業員)に実施したアンケートの結果、在宅勤務体制はおおむね高評価だったものの、一部のパートナーは捺印のために出社を余儀なくされていることが分かりました。私も、日々続々と届く捺印依頼というアナログな作業に追われ、漠然と捺印への問題意識を持っていました。

こうした中、コロナ禍の日本全国でハンコがテレワークの妨げになっていることを受け、竹本直一元IT政策担当大臣の「所詮は民・民の問題」というお話が2020年4月にありました。このお話を受け、「民・民の問題なのであれば、経営者として“ハンコ痛勤”をなくすための意思決定をすればいい」と気づきを得ることができました。

この気付きをもとに経営者としての意思決定を行い、翌日Twitter上で【決めました。
GMOは印鑑を廃止します】とハンコの完全廃止を宣言した結果、多くの方々の問題意識と重なって共感を呼び、広がっていったのだと考えています。

「電子印鑑GMOサイン」の契約者数が急増していることからも、”脱ハンコ”が日本全体共通の問題意識だったことがうかがえる

──「電子印鑑GMOサイン」は、コロナ禍によって生まれたサービスなのでしょうか。

GMOグローバルサイン・ホールディングスの「電子印鑑GMOサイン」は、2015年からサービスを提供していますが、グループを挙げて本サービスに注力する理由は、日本社会全体の課題解決に役立つことができると感じているからです。

先ほどお話した通り、在宅勤務体制下でパートナーに対して実施したアンケートの結果、ハンコによって完全な在宅勤務ができていないパートナーがいることが分かり、定量的にハンコが在宅勤務の障壁となっていることが顕在化しました。

「電子印鑑GMOサイン」を活用することで、オフィス出社が不要になることに加え、業務のスピードアップとコストダウンも実現できます。日本ではどんな企業・個人でもハンコを持っているため、「電子印鑑GMOサイン」は、GMOのパートナーだけではなく日本社会全体の課題解決に繋げることができる“宝物”だと気付いたのです。

歴史を振り返ると、インターネットやITの発展によって、数百年、数千年続いてきた慣習がひっくり返るような出来事があります。例えば、暗号資産(仮想通貨)もお金の概念をひっくり返しました。

この「電子印鑑GMOサイン」も、数千年のハンコの歴史を変える物なのだと確信しています。今後も、「すべての人にGMOサイン」のビジョンに向け、より便利で安心できる電子契約サービスとして普及を推進してまいります。


──脱ハンコへの取り組みについて、実際に業務効率化へと繋がった象徴的なエピソード等がありましたら教えてください。

脱ハンコの取り組みを進めるまでは、新型コロナウイルスの感染リスクがある中、捺印業務のために、往復2時間以上かけてオフィスに出社していたパートナーもいました。しかし、「電子印鑑GMOサイン」を活用し始めたことによって、“痛勤”時間は単純にゼロになりました。また“痛勤”時間のみならず、目に見えない“作業コスト”の削減も大きなメリットです。

GMOインターネットグループ 熊谷正寿代表

通常の契約業務では、印紙・製本・送付・回収といった作業が発生します。つまり担当者は、契約締結時に契約書を印刷して、押印申請を上げ、先方へ送り状を付けて郵送して、法務に預けて…といった“作業コスト”が生じており、積み上げると莫大な時間を費やしていました。

これらも一気に削減し、最短わずか数分で契約を締結することが可能になり、業務の効率化を実現しています。

「電子印鑑GMOサイン」を、グループ内のパートナーのみなさんにも活用いただくことで、安心して働ける環境を提供し、業務効率改善にもつながりました。

──“脱ハンコ”に関して、印象的だったエピソードや面白い気づきはありましたか。

我々は『さよなら印鑑キャンペーン』と題して、“脱ハンコ”に関する意見をお伺いする「みんなの“無駄ハンコ実態調査”2020」を2020年6月より実施しました。

その結果、“脱ハンコ”を85%の方が賛成する一方、15%の方が反対に投票されました。さらに、2万件を超えるハンコにまつわるエピソードもお寄せいただきました。実体験を交えたエピソードが、賛成・反対それぞれの立場から集まっていますので、ぜひご覧ください。

「みんなの“無駄ハンコ実態調査”2020」

私は、ビジネスの観点から明らかに非効率あるいは無駄であることについては、どんどん電子化を進めていくべきだと考えていますが、決してハンコそのものを否定しているわけではありません。

創業以来、ハンコに愛着を持っており、字体や材質、どのお店で作るかも入念に選び、こだわり続けてきました。今後も、文化・芸術としてのハンコは永続してほしいと願っていますし、芸術作品に押す「落款」や、美術品としてとても美しい印鑑もたくさんあります。

そのようなこれまでに培われたハンコの文化は、これからも大切していきたいと考えています。
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ムコハタワカコ

編集・ライター
書店員からIT系出版社、ウェブ制作会社取締役、米系インターネットメディアを経て独立。現在は編集・執筆業。IT関連のプロダクト紹介や経営者インタビューを中心に執筆活動を行う。企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)、組織づくりや採用活動などにも注目している。

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