AI&ロボティクス技術が日本の食卓を支える!農業で活躍するロボット、パワーアシストスーツ、ドローンたち

明石 皓

AISpecialテクノロジー

センサーで水田やハウス管理も最適化

センサー技術も農業に広く活用されています。

水田では、水門を開け閉めすることで水位を調整します。この調整は手作業で行う必要がありました。水田が広ければ遠くまで水位の確認・調整をしに行くため、水門の開閉作業に半日かかることもあります。また夜中に大雨が降れば、深夜でも水田に向かい、水位を調整しなければなりません。

こうした農家の負担を解消するのが、センサーを利用した水管理システムです。水田の水位をセンサーで測定し、スマートフォンでいつでもどこでも確認できるようになりました。また、あらかじめ目標の水位を設定することで、自動で水門を開閉して水位を調整し、水位の異常があればアラートで把握できます。これにより、水田の水位確認・水管理作業が80%減少し、水位調整の負担を大幅に減らすことが可能になりました。

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センサー技術が使われているのは水田だけではありません。野菜や果物を育てるビニールハウスの監視・管理にも使われています。

ビニールハウスは時期に左右されず農作物を栽培できる、風雨の影響を受けにくいといった特徴があります。しかしその反面、ビニールハウスの環境を農作物に合わせて維持する必要があり、常に温度や湿度などを確認・調整する必要があります。

山梨県甲州市の「奥野田ワイナリー」では、半日以上の時間をかけて農場の温度や湿度を確認していましたが、それでも雨後に湿度が急激に上昇してカビが発生するといった問題が起きていました。

そこでマルチセンシング・ネットワークの仕組みを導入。10分間隔で温度や湿度といった情報を収集し、PCやスマートフォンから気温、湿度、降水量の推移や最新の状況をいつでもどこでも確認できるようになりました。湿度が高い状態が続くと農園のスタッフにアラートメールが届くようになり、常に農場で監視をしなくても、カビや湿度といった問題にも対応可能になったのです。

農業分野でも「ムーンショット計画」!?

「月面着陸のように達成できないと思われるような大きな挑戦」を指す「ムーンショット」。日本政府の「ムーンショット計画」では、さまざまな野心的な大型研究プログラムが関係府庁により推進されています。

農林水産省では「未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業を創出」を掲げ、レーザーによる害虫駆除システムなどを実用化しています。また、文部科学省は「人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会」の実現を推進しているのですが、この「身体の制約からの解放」の草分けとして期待されるのが、農業用パワーアシストスーツです。

農作業は、作物の収穫、運搬、出荷など、力仕事も非常に多いことが特徴です。パワーアシストスーツがあれば、機械で人の動きを支援して、力仕事を楽にすることができ、大幅に負担を軽減できます。20kgの収穫物が入ったコンテナの上げ下げや運搬を補助するほか、苗を植える際の姿勢補助、肥料や資材などの重量物の運搬など、さまざまな農作業のシーンでパワーアシストスーツが使われています。

荷物の持ち上げをサポートするパワーアシストスーツ「マッスルスーツEvery」 (農林水産省「aff」より)

パワーアシストスーツは、力や体力の少ない人の力仕事を楽にし、より快適な農作業を実現しています。既に農作業で実用化しているパワーアシストスーツの研究は、今後センサーやリモート技術との組み合わせにより、農業以外の分野での「ムーンショット計画」を力強く支えるでしょう。

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我が国の農業は、人手不足による農作物生産量の低下、農業技術の喪失、食料自給率の低下といった、私たちの食生活に直結する課題を抱えています。今のままでは、食料供給や食料価格が不安定になり、今と同じような豊かな食卓を保てなくなるかもしれません。

でも、悲観することはありません。今回紹介したテクノロジーが進化していくことで、労働負担が減るだけではなく、今まで農業以外に従事していた人が農業に携わるようになり、さらに1人の人がより多くの農地を管理することも可能になっていくでしょう。テクノロジーの力によって、持続可能な食料生産の未来が切り拓かれるはずです。

日本の食卓と日本の未来の農業を支えるための、AI&ロボティクス技術の発展を、これからも自分事として注視したいところです。
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明石 皓

九州大学大学院にて物理を学ぶ。IQ167、(sd24)ケンブリッジ大学の交換留学時に買ったマグカップとクマのぬいぐるみが宝物。テクノロジー/IT/数学が好物。

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