「面倒だなぁ」は仕事のヒント!バイブコーディングに取りつかれたハイパー総務の仕事術

i4U編集部

AIGMOインターネットグループSpeciali4U業務効率化
総務の現場は、生成AIと自動化でどこまで変わるのでしょうか。分散するデータの回収、社内向けFAQの運用、アンケート分析の効率化など、総務部で福利厚生を担当しながらバイブコーディングで業務効率化・自動化を次々と行う 新里(しんざと)篤子氏に聞きました。

プログラミング未経験から自動化ツールの開発に目覚めるまで

——まず自己紹介をお願いします。

新里:私はGMOインターネットグループ グループ総務部で福利厚生チームとプロジェクト推進チームを兼務しています。福利厚生施設の運用管理、社内イベント運営などの定常業務に加えて、グループ横断のプロジェクト企画・実装・検証を担当します。「バンクシー展 GMOデジタル美術館 東京・渋谷」の運営なども私たちの仕事のひとつです。

——新里さんが生成AIや自動化に踏み出したきっかけは何でしたか。

新里:2023年から始まったGMOインターネットグループの人財育成プログラム「短期AI人財育成プログラム AI虎の穴」(以下、虎の穴)で、まずは小さなオートメーションを作ってみたことです。GMOインターネットグループでは「虎の穴」というオンライン講座があって、誰でも無料でAIや自動化に関する講座が受けられるんですよ。

——どうして「虎の穴」に参加したのでしょうか。

新里:グループ総務部の中で「部内のみんなに虎の穴にチャレンジしてもらうためには、まずはマネージャー陣が率先してやってみよう」と決まったことがきっかけでした。

自動化やAIは、プログラミング未経験の私が使うには少しハードルが高かったですし、自分にできるかどうか不安でもあったのですが、いざ、やってみたら「コレは面白い!」となりました。実際に手を動かしてみたら自動化ツールが自分でも作れて、「これはいける」と実感できて楽しかったんです。虎の穴の講師を担当してくれたパートナー(同僚)には感謝しています。

それ以来、虎の穴で学んだことを足がかりに、わからないところはChatGPTに相談したり、社内で私が「自動化の先生」と呼んでいるパートナーに助けてもらいながら、実際に自分の仕事で使う自動化ツールも作るようになりました。

——最初に作った自動化ツールは何ですか。

新里:業務で利用している各システムから請求書や定量データを自動取得するツールです。MicrosoftのRPAツール「Power Automate」を使用して作りました。

例えば請求書は、お取引先様ごとに独自のシステム経由でアップロードされます。今までは毎月たくさんの請求書を一つひとつ自分たちの手でダウンロード・管理していましたが、自動化ツールで一括処理できるようになりました。

人生で初めてシステム内のHTMLコードを読み解くなどしながらツールを作りました。すごく新鮮な経験で、楽しかったです。

エンジニアではないのに、開発する楽しさに目覚めてしまったと体を揺らして笑う新里氏

新里:そして福利厚生施設ごとに計測している定量データの取得や管理も自動化して「(自動化ツールの)ボタンをポチッとクリックすれば、各データを自動で取得し整形」するようにしました。今まで報告用の資料作成ってストレスそのものだったんですが、これがボタン1つでポチッと(笑)

「社員食堂のゲート開閉の回数」や「利用者の属性」を取得し、サービス改善につなげる

——新里さんのチームが扱う「定量データ」とはどういうものですか。

新里:それぞれの施設ごとにたくさんあります。例えば社員食堂であるシナジーカフェ「GMO Yours」では「1日に何回パートナーが出入りしているか」や「無料のランチのオーダー状況」など、さまざまな定量データを取得し、分析しています。

ところが、そのデータを扱うシステムがそれぞれに違うんです。自動化ツールに出合うまでは、各システムにログインして、日付や時刻を選択して、ダウンロードして……といった具合に、全ての作業を手動でやっていました。

——大変そうな印象です。

新里:はい。でも客観的な分析と集計はおろそかにできません。利用者のニーズや改善のための答えは、ほぼ全てデータの中にあります。ただ、そうはいっても、データ集計はやはり手間がかかって……。だから自動化ツールでそれらが一気にカンタンにできるようになって感動しました。

以来、すっかり自動化ツール作りにハマってしまって、部内の他のパートナーに「自動化したい仕事はない?」「困っていることはない?」「自動化ツールを作らせて!」と聞いて回るようになりました。なんでも自動化しないと落ち着かない状態に陥ってます。

で、そうやって仲間から「ネタ」をもらっては、生成AIや自動化に詳しいパートナーに相談しながらツールを作って、作ったツールを部内で共有しています。

AIと自動化にハマってしまい「ネタはない!?」と社内で探し続けているという新里氏

——これまで自動化した主な業務を教えてください。

新里:今お話しした各システムのデータファイルの自動取得・自動格納、FAQチャットボット、それから福利厚生施設の利用データ集計をするVBAファイルもAIで生成して作りました。

——その中で、業務効率化に一番“効いた”のはどれですか。

新里:ChatGPTのGPTsで作ったグループパートナー向けのFAQチャットボットです。計算上は部門全体で106時間/月の削減につながりました。グループ総務部では、業務がかなり多岐に渡るため、さまざまな方面から毎日問い合わせを受けている状況でしたので、ここが自動化できたのは大きかったですね。

——自動化ツール作りでの「失敗談」はありますか。

新里:大変だったのは先ほども挙げたFAQチャットボット作りです。AIが出力する回答内容に、参照リンクが貼られたり貼られていなかったり、回答品質にムラがありました。

「生成AIの性質上、ムラがあるのは仕方がない」とあきらめたくなくて、どうにか解消しようとAIと会話を繰り返し、最終的には「リンクはもういいから、全ての回答に、URLをテキストのまま貼ってくれ」と指示をしたら、やっと安定しました(笑)

——生成AIもたくさん活用しているのですね。

新里:アンケート集計・分析では生成AIの助けを借りています。

パートナーから寄せられるアンケートは、どれも熱量が高いんです。自由記述の欄もみなさん一生懸命書いてくれます。「ここがよかった!」「ここをもっと改善してほしい!」といったヒントの宝庫です。ですから、ちゃんとメッセージを受け止めて、改善策を考えるためにも、アンケート業務そのものの効率化を進めていきました。

例えばアンケート集計・分析の定型化も、業務効率化の一環で行いました。データ構造などを定義して分析用のAIに指示を出すためのcodebookファイルや参考プロンプトをテキスト形式で整えて、部内で共有しています。これにより、誰がデータ分析をしてもクオリティの高さが担保されるようになりました。

——自動化ツールやcodebookの作成から社内配布までのスピード感は。

新里:「こうすれば簡単にできますよ」とやり方を共有するだけなら即日から3日ですね。ツールの開発は最長で1カ月です。共有できるものは全て部内でシェアしています。

——新里さんが自動化で使っているツールや、活用しているAIツールと選定理由を教えてください。

新里:データ取得などの自動化ツールはPower Automateで作成しています。使用している生成AIは、Genspark、Claude、ChatGPTで、用途で使い分けています。調査や要約や整理はChatGPT、プレゼンに使用する資料づくりはClaudeやGenspark、というイメージです。あと最近はManusでアプリ作成に挑戦しています。
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i4U編集部

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