しかし、新千歳空港からもっとも近い海に面した主要都市は、実は太平洋側の「苫小牧」。国道36号線を“南下”する方がはるかに海が近いのです。
しかも苫小牧には、近隣の方はもちろん北海道民なら誰でも一度は耳にしたことがある「ホッキカレー」と「超丼」のマルトマ食堂があるのです。
道民ですら驚く、リーズナブルで超ボリュームの海鮮メニューの実際と、なぜそんなメニューが提供できるのか? マルトマ食堂の超お得な海鮮丼について、その秘密をお届けします。
苫小牧港に人を呼ぶ人気店! ホッキカレー、マルトマ丼、その日の超丼が三大人気メニュー
創業者の先代から、現在は二代目である三浦未(いまだ)さんが継がれましたが、以前にも増して、どのメニューもとてもリーズナブルでボリューミー。道民からも観光客からも愛され、朝から行列必至の人気店であり続けています。

いつも多くのお客さんでごった返している「マルトマ食堂」。壁から天井までサイン色紙がびっしりの超人気店です
1日に1000個前後のホッキ貝を使うマルトマ食堂。一括で大量に仕入れているため、1食1200円という価格でホッキ貝をまるまる3個も入れられるわけです。「ホッキ貝をまるまる3個もカレーに入れている店は、ほかにないはず」と三浦未さんはいいます。だからもうからないわけですが……。
また、「計量したことがない」というライスの量も、筆者が実際に持ってみたところ400〜500gはありそうで、一般的な大盛りカレーライスを凌駕しています。

先代から続くマルトマ食堂の看板メニュー「ホッキカレーライス」(1200円)。一番人気のメニューですが、実はもっとももうからないそうです
こちらは、いまや人気ナンバー2。日によって内容は多少異なるそうですが、基本的にウニとイクラとアワビ、それに苫小牧名産のホッキ貝は必ず入れるようにしているといいます。このボリュームで1500円。ヒットしない理由がありません。
そして、実はこの「マルトマ丼」のヒットが、さらなる“超丼”につながっていくそうです。

筆者が訪ねた日の「マルトマ丼」(1500円)。 ウニ、イクラ、アワビ、ブリ、マグロ、サーモン、ホッキ貝、さらにたくさんのエビが乗っていました
この日の、漬けサーモンが40切れ以上乗った「超サーモン丼」は、サーモンフィレ(三枚おろしの半身)を丸ごと使用していました。市場での一般的なサーモンフィレの取引価格が1200円程度なので、普通の仕入れでは980円で提供することはできないといいます。さすがにマルトマ食堂でも原価割れギリギリだそうです。

取材日の超丼は「超サーモン丼」(980円)でした。その日のおすすめメニューは、ポップなどに掲示されているので、しっかりチェックしたいところです
さて、これらレギュラーメニューも十分、尋常ではありませんが、ここからは時折現れるマルトマ食堂の常軌を逸した、規格外の超丼をご紹介します。
道民も驚く! 「規格外 超丼」4選をご紹介
ただし、超丼は仕入れ状況で提供される内容が変わるため、常にあるメニューではありません。特に今回写真を掲載した規格外の超丼は、マルトマ食堂でも特別なタイミングでのみ提供された超レアメニューです。
その日に提供される超丼の内容などは、マルトマ食堂の Facebook ページで告知されていることが多いので、気になる方はこまめにチェックしてみてください。

(1)超ウニ丼 いまよりもウニの値段がひと桁安かったというときに提供されたマルトマ食堂の「超ウニ丼」。通常のウニ折よりも大容量のものが10個乗って、4000円程度だったといいます(写真提供:マルトマ食堂)

(2)超花咲ガニ丼市場で花咲ガニを10箱購入することになった際に提供された超花咲ガニ丼。花咲ガニが7杯乗っています。どんぶりにはちゃんとご飯が入っているそうです(写真提供:マルトマ食堂)

(3)ほぐしズワイガニ丼 レベル5「ほぐしズワイガニ丼 レベル5」。重さ約2キロのズワイガニフレークが乗っているといいます。ちなみにこれ以上は乗せられなかったそうです(写真提供:マルトマ食堂)

(4)超マグロ丼 マグロ1/4が乗った超マグロ丼。市場で2万円で仕入れたマグロが乗って1万円。 Facebookを見たで2000円引きの8000円だったそうです(写真提供:マルトマ食堂)
苫小牧市公設地方卸売市場の食堂として、その歴史を歩み始めたマルトマ食堂。漁師さんや市場関係者の食事処として開業したため、市場との関係は長く深いものです。
子どもの時から、初代(お父さん)の店に入り浸っていたという二代目の三浦未さんにとって、市場のおじさんたちは、お父さんの大切なお客さんでありながら、小さなときから知っている親戚のおじさんに近い存在だといいます。
毎日のように行列ができ、1日に数百人のお客様が来るというマルトマ食堂は、当然隣接する苫小牧市公設地方卸売市場で仕入れを行っています。そのため「マルトマ食堂ならなんとかできるだろう」という期待も込めた仕入れのお願いが、顔見知りの市場関係者から持ち込まれることも。
結果、「やや無茶な仕入れ」を行うことになってしまうこともあるわけで、その結果、マルトマ食堂の歴史的な超丼が生まれてしまうという事情もあるようです。
二代目の三浦未さんは、そんなときに観光のお客さんだけではなく、地元の常連さんも喜ばせ、驚かせるチャンスだと感じるのでしょう。“超丼”は、そんな三浦未さんの心意気を感じさせてくれます。

齋藤 千歳
フォトグラファー・ライター
北海道千歳市在住・千歳市生まれのフォトグラファー/ライター。キャンピングカーの「方丈号」から各種アウトドア、カメラ、レンズ、ガジェットに関する情報を発信したり、家族3人で北海道一周などしたりを楽しんでいる。