次世代モバイル通信規格Beyond 5G (6G)で安心安全な世界を!GMOサイバーセキュリティ byイエラエの挑戦
次世代のモバイル通信規格として注目を集める「Beyond 5G(6G)」(以下、6G)は、どんな社会を実現するのでしょうか? そして6Gを安全安心に使うために必要な「暗号」とは? GMOインターネットグループでサイバー攻撃対策事業を展開するGMOサイバーセキュリティ byイエラエに所属し、次世代暗号技術を国家プロジェクトで研究する“暗号のおねぇさん”こと同社のAI・システム開発本部 AI・システム開発部 酒見由美(さけみ ゆみ)氏が、自身の取り組みについて語ります。
“暗号のおねぇさん”は、“世界”を相手に戦っている
現在のモバイル通信規格は「4G」と「5G」が主流。みなさんのスマホの画面上にも5Gという表示が出ている人が多いはずです。では、その5Gに続くモバイル通信規格の「6G」は、何が今までよりすごいのでしょうか。その特徴は、次の4つです。
超高速通信
1Tbps(テラビット毎秒)のデータ転送速度を目指していて、超高精細な映像配信や複雑なデータ処理がリアルタイムで可能になります。
超低遅延
通信遅延を1ミリ秒以下にすることで、遠隔医療や自動運転車のようなリアルタイム性が求められるアプリケーションを実現します。
大容量接続
IoTデバイスが大量に接続される環境をサポートし、スマートシティや産業自動化に対応します。
高信頼性とカバレッジ
通信の信頼性を高め、リモートエリアや過酷な環境でも安定した接続を提供します。
では、これら6Gの機能を応用すると、どんなすごいことができるのでしょうか。
6Gが普及すると、産業・サービスの無人化や、通信可能な情報の高度化、そして人間に関わるセンシングデータによる“人間拡張”が行われ、人間とロボットの融合が実現します。その結果として、実社会のサイバー化が実現するでしょう。
「サイバー化」なんて、SF映画みたい? でもね、現実の話なのです。
例えば6Gが広まれば、離島のような地域でも、すご腕の名医が遠隔操作で手術を行えるでしょう。きっと海外との会議も通訳なしで開催できるようになるでしょうし、ドローンがあなたのお家に荷物を届けてくれるようになるはずです。スマートシティ化も進み、街灯や信号機が自動で調整され、交通渋滞だってリアルタイムで緩和されるでしょう。
学校だって大きく変わります。高解像度のVRやARを使うことで、よりリアルな遠隔教育が実現して、世界中どこでも高度な教育が受けられるようになるはず。学生がバーチャル教室で世界中の専門家から直接指導を受けられるようなシチュエーションを想像してみてください。最高でしょう?
そして、そのような最高な世界を実現するためには、暗号も今使用されている「AES」と呼ばれる暗号技術ではなく、次世代の暗号が必要になると予想されています。将来の6Gの世界で期待される要件(超高速通信や低遅延性などに適した暗号であること)を満たし、より高機能で、安全・安心な暗号を考えていく必要があります。
6Gになると、便利なことも増えるけれど、安全・安心のためにやらなければならないことも増えるのです。
そんな来たるべき6Gの世界で必要となる技術を前もって研究開発するために、総務省と情報通信研究機構(NICT)が立ち上げた国家プロジェクトが「Beyond 5G研究開発促進事業」です。
この国家プロジェクトに参加し、安心安全で便利なサイバー空間を実現するために、実装&標準化に実績のある“暗号のおねぇさん”こと筆者と、理論面で最強な兵庫県立大の研究チームが、タッグを組んで世界を相手に戦っています。本稿ではその挑戦についてご紹介します。
超高速通信
1Tbps(テラビット毎秒)のデータ転送速度を目指していて、超高精細な映像配信や複雑なデータ処理がリアルタイムで可能になります。
超低遅延
通信遅延を1ミリ秒以下にすることで、遠隔医療や自動運転車のようなリアルタイム性が求められるアプリケーションを実現します。
大容量接続
IoTデバイスが大量に接続される環境をサポートし、スマートシティや産業自動化に対応します。
高信頼性とカバレッジ
通信の信頼性を高め、リモートエリアや過酷な環境でも安定した接続を提供します。
では、これら6Gの機能を応用すると、どんなすごいことができるのでしょうか。
6Gが普及すると、産業・サービスの無人化や、通信可能な情報の高度化、そして人間に関わるセンシングデータによる“人間拡張”が行われ、人間とロボットの融合が実現します。その結果として、実社会のサイバー化が実現するでしょう。
「サイバー化」なんて、SF映画みたい? でもね、現実の話なのです。
例えば6Gが広まれば、離島のような地域でも、すご腕の名医が遠隔操作で手術を行えるでしょう。きっと海外との会議も通訳なしで開催できるようになるでしょうし、ドローンがあなたのお家に荷物を届けてくれるようになるはずです。スマートシティ化も進み、街灯や信号機が自動で調整され、交通渋滞だってリアルタイムで緩和されるでしょう。
学校だって大きく変わります。高解像度のVRやARを使うことで、よりリアルな遠隔教育が実現して、世界中どこでも高度な教育が受けられるようになるはず。学生がバーチャル教室で世界中の専門家から直接指導を受けられるようなシチュエーションを想像してみてください。最高でしょう?
そして、そのような最高な世界を実現するためには、暗号も今使用されている「AES」と呼ばれる暗号技術ではなく、次世代の暗号が必要になると予想されています。将来の6Gの世界で期待される要件(超高速通信や低遅延性などに適した暗号であること)を満たし、より高機能で、安全・安心な暗号を考えていく必要があります。
6Gになると、便利なことも増えるけれど、安全・安心のためにやらなければならないことも増えるのです。
そんな来たるべき6Gの世界で必要となる技術を前もって研究開発するために、総務省と情報通信研究機構(NICT)が立ち上げた国家プロジェクトが「Beyond 5G研究開発促進事業」です。
この国家プロジェクトに参加し、安心安全で便利なサイバー空間を実現するために、実装&標準化に実績のある“暗号のおねぇさん”こと筆者と、理論面で最強な兵庫県立大の研究チームが、タッグを組んで世界を相手に戦っています。本稿ではその挑戦についてご紹介します。
国家プロジェクト「Beyond 5G研究開発促進事業」って?
2030年ごろに予定されている6Gのサービス開始に向けて、今まさに世界中の研究機関や企業が技術開発に取り組んでいる真っ最中です。
総務省とNICTが立ち上げた「Beyond 5G研究開発促進事業」は、その6Gの研究と開発を推進する国家プロジェクトです。日本の国際競争力を強化し、2030年代に向けた新たな通信インフラの基盤を築くことを目的としています。
日本政府は、このプロジェクトで採用する事業を次世代技術の標準化と実用化を支援し、国際標準への貢献を目指すものと位置付けています。
総務省とNICTが立ち上げた「Beyond 5G研究開発促進事業」は、その6Gの研究と開発を推進する国家プロジェクトです。日本の国際競争力を強化し、2030年代に向けた新たな通信インフラの基盤を築くことを目的としています。
日本政府は、このプロジェクトで採用する事業を次世代技術の標準化と実用化を支援し、国際標準への貢献を目指すものと位置付けています。
“暗号のおねぇさん”が兵庫県立大学と取り組む研究プロジェクト「リアルタイム暗号技術とプライバシー保護への拡張」
この国家プロジェクトで、兵庫県立大学(五十部孝典教授の研究チーム)とGMOサイバーセキュリティ byイエラエは「リアルタイム暗号技術とプライバシー保護への拡張」を研究テーマに応募し、採用に至りました。国家プロジェクトの仲間入りです。
私たちの研究テーマは、フィジカル空間(実世界)で取得したセンシングデータを、リアルタイムでサイバー空間に転送可能とし、サイバー空間とフィジカル空間との間で安全でかつシームレスなデータ連携を実現するための暗号技術を研究開発すること。国内外の研究者やエンジニアと連携して研究を行っています。
私たちの研究テーマは、フィジカル空間(実世界)で取得したセンシングデータを、リアルタイムでサイバー空間に転送可能とし、サイバー空間とフィジカル空間との間で安全でかつシームレスなデータ連携を実現するための暗号技術を研究開発すること。国内外の研究者やエンジニアと連携して研究を行っています。
学術的な知見を誇る「理論チーム」と、高い技術力を備える「実装&標準化チーム」
私たちのチームは「理論チーム」と「実装&標準化チーム」の2部隊で構成されています。
まず「理論チーム」の兵庫県立大学は、暗号化に関する「理論」を組み立てています。そして低遅延暗号の「Areion(アレイオン)」を設計・開発し、論文を作成しました。この論文は、2023年3月に暗号化ハードウェアと組み込みシステムに関する世界最高峰の学会であるIACR Transactions on Cryptographic Hardware and Embedded Systems (TCHES)で採択されました。
「論文が採択された」ということは「学術的に価値がある」「他の研究者にとっても有用だ」ということです。研究者にとって、自分たちの研究の成果が認められるという、とても名誉なことです。
また、これ以外にも低遅延暗号やプライバシー保護技術に関する最先端の研究成果を、国際的にもレベルの高い学会で立て続けに採択される実績を多く残しています。
そして“暗号のおねぇさん”がリードする「実装&標準化チーム」は、来たる2030年の“6Gな世界”において低遅延暗号技術が簡単に利用できる世界を実現するための大前提となる、「国際標準化」と「オープンソース(OSS)化」を推進しています。
「標準化」というのは、例えば電源プラグや乾電池などのように、同じサイズや規格で作られ、どのメーカーのものでも、誰でも簡単に使える仕組みのことです。インターネットも、あらゆるネットワークやシステムが連携できるように、仕様が定められています。例えばどのブラウザでもさまざまなWebサイトを閲覧できますよね。あれも標準化のおかげです。
6Gに対応する最新鋭の暗号技術を国際標準化し、オープンソース化するためには、学術的な知見と高い実装力が必須です。
学術的な知見のある兵庫県立大学と、高い実装力を備える私たちは、とてもバランスの良いチームだと自負しています。
まず「理論チーム」の兵庫県立大学は、暗号化に関する「理論」を組み立てています。そして低遅延暗号の「Areion(アレイオン)」を設計・開発し、論文を作成しました。この論文は、2023年3月に暗号化ハードウェアと組み込みシステムに関する世界最高峰の学会であるIACR Transactions on Cryptographic Hardware and Embedded Systems (TCHES)で採択されました。
「論文が採択された」ということは「学術的に価値がある」「他の研究者にとっても有用だ」ということです。研究者にとって、自分たちの研究の成果が認められるという、とても名誉なことです。
また、これ以外にも低遅延暗号やプライバシー保護技術に関する最先端の研究成果を、国際的にもレベルの高い学会で立て続けに採択される実績を多く残しています。
そして“暗号のおねぇさん”がリードする「実装&標準化チーム」は、来たる2030年の“6Gな世界”において低遅延暗号技術が簡単に利用できる世界を実現するための大前提となる、「国際標準化」と「オープンソース(OSS)化」を推進しています。
「標準化」というのは、例えば電源プラグや乾電池などのように、同じサイズや規格で作られ、どのメーカーのものでも、誰でも簡単に使える仕組みのことです。インターネットも、あらゆるネットワークやシステムが連携できるように、仕様が定められています。例えばどのブラウザでもさまざまなWebサイトを閲覧できますよね。あれも標準化のおかげです。
6Gに対応する最新鋭の暗号技術を国際標準化し、オープンソース化するためには、学術的な知見と高い実装力が必須です。
学術的な知見のある兵庫県立大学と、高い実装力を備える私たちは、とてもバランスの良いチームだと自負しています。
酒見由美 a.k.a 暗号のおねぇさん
【GMOサイバーセキュリティ byイエラエ AI・システム開発本部 AI・システム開発部 所属 / GMOインターネットグループ デベロッパーエキスパート】
山口県のとある高専から岡山大学に転入し、卒研の研究室選びの際に暗号技術の高速化研究で世界と戦っている研究室があることを知り、世界No.1に憧れて暗号の世界にダイブ。
博士課程で行った研究成果がブロックチェーンなどで利用されたり、安全性評価での世界No.1記録を取ったりと、楽しいことに注力する。
最近では「暗号のおねぇさん」として、世界を安全かつ便利にするための先進的な暗号技術である高機能暗号などの社会実装に興味を持ってまい進中!