教えて、どうして半導体が不足しているの？（品不足編）：テクニカルライター・笠原一輝さんに聞く

2022.1.17

2020年の後半以降、世界的に半導体が不足するという問題が発生しています。このため、電子機器の生産が止まったり、最近では自動車も生産できず、納車まで時間がかかるような事態に陥っています。

i4Uでは今回、この半導体問題について、業界に詳しいライターの笠原一輝さんに気になる疑問や質問にも答えてもらいました。（基礎編はこちら）

笠原一輝（かさはら・かずき）さんのプロフィール
1994年よりテクニカルライターとして活動を開始。90年代はPC雑誌でライターとして、2000年代からはPC WatchなどのWeb媒体を中心に記者、ライターとして記事を寄稿している。海外のカンファレンス、コンベンションを取材する取材活動を1997年から20年以上続けており、主な分野はPC、半導体などで、近年はAIといった分野での執筆が増えている。

質問：PlayStation 5がまだ買えないんですけど

PlayStation 5の生産にも、SoC（System on a Chip、1チップでコンピュータを構成できる半導体）やメモリ、SSDといった多数の半導体が必要で、その中で1つでも足りないモノがあれば生産できない。

PlayStation 5ではソニーがAMDと共同で開発したSoCを採用している。このSoCはTSMC（台湾積体電路製造）が受託製造していると考えられているが、AMDの別のPC向けプロセッサも需要がひっ迫しており、その影響でこのSoCの生産に影響を及ぼしているのではないかといわれているが、実際に何が足りないのかなどに関して、ソニーは発表していないので本当の所はわからない。

質問：PlayStation 5よりもNintendo Switch（有機ELモデル）のほうが買えるんですけど、どうして？

Nintendo Switchも昨年のコロナ禍直後は需要が旺盛で供給が追い付かず、店頭に並べばすぐ売れている状況だった。したがって今はそれが買えるということは、需要が一巡して供給が追い付いたということだろう。それが半導体のひっ迫と関係あるのかはメーカーである任天堂にしかわからないことだ。

質問：一時期グラフィックボードが買えなかったんですが、半導体問題と関係している？

グラフィックスボードのチップであるGPUを製造しているトップシェアメーカーであるNVIDIAのジェンスン・フアンCEOは、2021年6月に「GPUの需要がひっ迫しているのは、半導体ひっ迫の影響もあるが、GPUがマイニングに利用されている影響が大きい」と説明した（筆者、PC Watchの記事参照）。マイニングというのは仮想通貨をブロックチェーン上に作り出す処理のことで、そのマイニングを高効率に行うためにGPUを活用する。つまり、マイニングをしようというユーザーがGPUを買い占めたことが原因だった。

NVIDIAはゲーマー向けに販売しているGPUに対策を行いマイニング時の処理能力を制限（ゲームには影響がでない制限）したこと、そして中国でマイニング処理が違法とされたことでマイニング需要は一段落し、現在ではGPUの流通在庫も復活し、通常の価格で買えるようになりつつある。

質問：自動車の生産が止まっていると聞きましたが、半導体問題と関係している？

これは自動車メーカー自身が、半導体ひっ迫が原因だと説明しており、明白に関係がある。現代の自動車は多くの部分がデジタルになっており、カーナビゲーション、デジタルメーター、さらにはADAS（先進運転システム）をコントロールシステムなどに多数の半導体が利用されており、半導体メーカーからの納入が遅れて生産が一時的に停止する事態などが発生している。

特に自動車の生産はJIT（ジャストインタイム）という生産方式が一般的で、自動車メーカーは部品の在庫は持たず、部材のメーカーが予定通り納入してくることを前提に予定が組まれており、それが1つでも間に合わなくなると、工場のラインが止まってしまうということが発生してしまうのだ。

質問：いま手に入れたものは転売するチャンスですか？

転売が成功するには、「買ったときよりも需要が高まり、市場での価格が上がっている」という相場観を人より早くつかむ必要がある。他人に「転売するチャンスか？」と聞いている段階で、既にそのチャンスを失っているということの裏返しなので、転売など考えずに普通に使った方がいいだろう。それは別に半導体に限らず、すべての商売に共通することだ。

質問：製品の値段に転嫁される？

それはメーカーの考え方次第だが、最終的には部材価格の上昇などを最終製品の価格に転嫁することはあり得るが、最終製品のメーカー同士も競争している。製品の価格というのは「需要と供給」で決まってくるのは学校の授業で習ったとおりで、部材コストアップを最終製品の価格に転嫁することは簡単ではない。

半導体不足問題は近々解消するの？

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笠原一輝

ライター
1994年よりテクニカルライターとして活動を開始。90年代はPC雑誌でライターとして、2000年代からはPC WatchなどのWeb媒体を中心に記者、ライターとして記事を寄稿している。海外のカンファレンス、コンベンションを取材する取材活動を1997年から20年以上続けており、主な分野はPC、半導体などで、近年はAIといった分野での執筆が増えている。