「6%の勝者企業」は何が違うのか
レポートで注目すべきは、多くの企業がAI導入に苦戦する一方で、わずか6%の企業だけがAIから明確な価値を引き出している点だ。こうした企業は、漫然とAIを導入したのではなく、成長戦略の中心に置き、組織全体で変革を進めている。成功企業とその他の差は、技術そのものではなく、「使い方」と「組織のあり方」にある。
具体的に、両者の間にはどんな差があるのか。レポートでは複数の点が挙げられているが、これを大きく4つに整理してみよう。
具体的に、両者の間にはどんな差があるのか。レポートでは複数の点が挙げられているが、これを大きく4つに整理してみよう。
違い1:AIを「事業変革のエンジン」と捉える
ハイパフォーマー企業の最大の特徴は、AIへの「目的意識」の違いにある。多くの企業がAIを効率化の手段と見なす一方、ハイパフォーマー企業は「事業を根本から変革するエンジン」としてAIを位置づけている。調査では、彼らがAIで企業全体の「変革」を目指す割合は、一般企業の3.6倍に上る。
この「変革志向」は、AI導入の規模やスピードにも直結する。効率化を目的とした導入では導入範囲が限定されがちだが、変革を目指す場合はAIを活用する領域が事業の重要部分へも広がる。その結果、より大きな価値を得る可能性が高まる。AIを本格的に活用する企業は、この視点を持つことで競争力を高めている。
この「変革志向」は、AI導入の規模やスピードにも直結する。効率化を目的とした導入では導入範囲が限定されがちだが、変革を目指す場合はAIを活用する領域が事業の重要部分へも広がる。その結果、より大きな価値を得る可能性が高まる。AIを本格的に活用する企業は、この視点を持つことで競争力を高めている。
違い2:業務フローを抜本的に再設計する
ハイパフォーマー企業は、既存業務をAI向けに「手直し」するのではなく、根本的に組み替える発想を持つ。調査では、業務フローを「抜本的に再設計している」と回答した割合が他企業の2.8倍に上る。AIに業務を寄せるのではなく、AIを軸に業務構造を再設計するアプローチだ。
特にAIエージェントの導入を考えると、この再設計がなぜ重要かがわかる。エージェントは複数工程を自律的に実行できるため、効果を最大化するには工程間のつながりや意思決定フローを見直さねばならない。再設計を避ければ、AIは部分的な効率化にとどまり、企業は潜在的な価値を十分に引き出せない。
特にAIエージェントの導入を考えると、この再設計がなぜ重要かがわかる。エージェントは複数工程を自律的に実行できるため、効果を最大化するには工程間のつながりや意思決定フローを見直さねばならない。再設計を避ければ、AIは部分的な効率化にとどまり、企業は潜在的な価値を十分に引き出せない。
違い3:経営陣が主導する
AI導入で見落とされがちな要素が「経営陣の主導」だ。ハイパフォーマー企業では、経営陣がAI活用に強くコミットして推進の中心を担う割合が、他企業の3倍以上に上る。この差は、AIが企業全体へ浸透するかどうかを大きく左右する。
経営層がAIの価値を理解し、戦略的な施策として扱う企業では、予算、人材、組織横断的な協力体制、教育プログラムなどの基盤が整いやすい。一方、現場任せでは導入が部分最適にとどまり、全社的な成果につながりにくい。AIを企業変革の中心に据える強い意思が、業務や文化の改革を後押しする。
経営層がAIの価値を理解し、戦略的な施策として扱う企業では、予算、人材、組織横断的な協力体制、教育プログラムなどの基盤が整いやすい。一方、現場任せでは導入が部分最適にとどまり、全社的な成果につながりにくい。AIを企業変革の中心に据える強い意思が、業務や文化の改革を後押しする。
違い4:大胆で持続的な投資を行う
AIが事業の中核的な価値を生むには、継続的で戦略的な投資が不可欠だ。調査では、ハイパフォーマー企業の3分の1超がデジタル予算の20%以上をAI関連に投じている。一方、その他企業では投資は小規模かつ分散し、十分な成果につながりにくい。AIの価値は導入直後には現れず、モデル改善、ワークフロー改革、データ基盤整備、ユーザー教育など複数の取り組みを重ねて初めて現れる。
大胆な投資を行う企業は、この時間軸を理解している。短期成果を優先するとAI投資は抑制されがちだが、ハイパフォーマー企業は将来の競争力を見据えて長期投資を続けている。6%の企業が成果を生み出す背景にある意思決定だ。
大胆な投資を行う企業は、この時間軸を理解している。短期成果を優先するとAI投資は抑制されがちだが、ハイパフォーマー企業は将来の競争力を見据えて長期投資を続けている。6%の企業が成果を生み出す背景にある意思決定だ。
AI導入と雇用──変わるのは「人数」より「スキル構成」
AIが雇用に与える影響を過度に悲観する必要はないが、変化が起きつつあるのは確かだ。この1年で従業員数が大きく変動した企業は少なく、AI導入による大幅減員も見られない。しかし今後1年の見通しでは、32%の企業が「従業員数は減る」とし、13%は「増える」としている。
この差は、企業がAIをどう位置付けるかによって生じる。効率化を重視する企業では減員傾向が強く、成長や新規事業を見据える企業では増員傾向にある。特にデータエンジニア、ソフトウェアエンジニア、AIプロダクトマネジャーなど専門スキルの需要は高まり、求められるスキル構成も明らかに変わり始めている。
この差は、企業がAIをどう位置付けるかによって生じる。効率化を重視する企業では減員傾向が強く、成長や新規事業を見据える企業では増員傾向にある。特にデータエンジニア、ソフトウェアエンジニア、AIプロダクトマネジャーなど専門スキルの需要は高まり、求められるスキル構成も明らかに変わり始めている。
AIが生むリスク──積極的な企業ほど失敗も多い
AI導入にはリスクもある。調査では、AIを利用する企業の51%が「少なくとも一度はネガティブな影響を経験した」と回答している。最も多いのは「不正確さ」によるリスクで、3割が影響を受けたと回答した。その他にも、サイバーセキュリティ、知的財産権、規制遵守、組織的評判への影響など、多様なリスクが顕在化している。
注目すべきは、ハイパフォーマー企業ほどリスクを多く経験している点だ。これは重要な領域でAI活用を進めているためであり、積極利用には失敗がつきものともいえる。その一方で、こうした企業はリスク管理にも前向きで、確認プロセスやガバナンス体制を高い水準で整えている。
注目すべきは、ハイパフォーマー企業ほどリスクを多く経験している点だ。これは重要な領域でAI活用を進めているためであり、積極利用には失敗がつきものともいえる。その一方で、こうした企業はリスク管理にも前向きで、確認プロセスやガバナンス体制を高い水準で整えている。
勝敗を分けるのは「技術力」ではなく「覚悟」
以上の調査結果から見えてくるのは、AI導入の成否を決めるのは技術力ではない点だ。AIモデルや先進ツールは市場で容易に利用でき、技術面の参入障壁は大きく下がっている。にもかかわらず、6%の企業だけが突出した成果を上げているのは、AIを「技術導入」ではなく「事業変革」として捉えているという、構造的・戦略的な姿勢の違いによる。
確かにAI導入は順風満帆ではないが、リスクやトラブルに揺らいでいては価値を引き出せない。重要なのは、技術的な精度よりも「戦略としてAIをどう位置づけるか」という一貫した姿勢だ。AIがビジネスの中核に入りつつある今こそ、「何のために使うのか」「どう組織に組み込むのか」「どれだけ本気で変革に取り組むのか」といった企業の意思決定が成功を左右する。
IT時代を迎えて以降、企業を強くするのは技術そのものではなく、それを使いこなす企業の覚悟と構造だ。それこそがAI時代における最大の競争力だ。今世界の企業に問われているのは、まさにその覚悟なのである。
確かにAI導入は順風満帆ではないが、リスクやトラブルに揺らいでいては価値を引き出せない。重要なのは、技術的な精度よりも「戦略としてAIをどう位置づけるか」という一貫した姿勢だ。AIがビジネスの中核に入りつつある今こそ、「何のために使うのか」「どう組織に組み込むのか」「どれだけ本気で変革に取り組むのか」といった企業の意思決定が成功を左右する。
IT時代を迎えて以降、企業を強くするのは技術そのものではなく、それを使いこなす企業の覚悟と構造だ。それこそがAI時代における最大の競争力だ。今世界の企業に問われているのは、まさにその覚悟なのである。

小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。












