ディスプレイを半分に折りたたむことのできるスマートフォンは、今年に入ってからもサムスンの「Galaxy Z Fold5」や「Flip5」、モトローラの「razr 40 ultra」など、次々と新しい製品が登場している。折りたたみスマートフォンは登場からどのように進化したのか、5年間の歴史を振り返ろう。
大手メーカーから製品が登場した2019年
折りたたみスマートフォンの世界初のコンセプトモデルは、2013年にサムスンが公開したムービーで見ることができる。だが1枚の板であるディスプレイを折り曲げることができるとは、当時は誰も信じていなかった。実際に製品が出てきたのは2018年秋のことで、サムスンより一足先に中国のスタートアップ、Royoleが世界初の折りたたみスマートフォン「FlexPai」を発表した。
世界初の折りたたみスマートフォン、FlexPai
サムスンは世界最初の座を奪われはしたものの、2019年2月に初の折りたたみスマートフォン「Galaxy Fold」を発表した。だが先行してメディア関係者に配布されたテストモデルはディスプレイが破損しやすいという欠点があり、製品に改良を加えた結果、発売は同年9月までずれ込んだ。日本ではauがSCV44として発売し、24万5220円という価格は大きな話題となった。
日本でも発売になったGalaxy Fold
一方ファーウェイもサムスンと同じタイミングで「Mate X」を発表。サムスンがディスプレイを内側に折りたたむ形状だったのに対し、ファーウェイは外側に曲げる構造とデザインを変えた。当時はまだ最適な折りたたみスマートフォンのデザインを模索している時代だったといえる。
外折り式のファーウェイMate X
「縦折りスマホ」競争が早くも始まった2020年
Galaxy Fold発表から1年後の2020年2月、サムスンは新しく縦にたたむことのできるフリップスタイルのスマートフォン「Galaxy Flip」を発表した。ディスプレイメーカーを持つサムスングループだけに、横折り、縦折りと果敢に製品を投入していったのだ。Galaxy Flipは傷がつきやすい折りたたみディスプレイの表面を超薄型ガラス(UTG)で覆い、耐久性を高めた。日本でもauが前年に続きGalaxy Flipを発売、先進的な折りたたみスマートフォンならau、という印象を広げた。
Galaxy Flipは縦折りモデル
実は世界最初の縦折りスマートフォンはモトローラだった。同社が2019年11月に「razr」をアメリカで発売している。だが特定キャリアのみの販売だった上にeSIMだけの対応、さらにディスプレイが破損しやすく、販売数は伸びなかった。
世界初の縦折りはモトローラ「razr」だった
サムスンは自社初の縦折りスマートフォンにファッションブランドコラボモデル「Thom Browne」版も投入し、もはや折りたたみスマートフォンが一般的なスマートフォンと変わらない品質であり、ファッションアイテムとしても使える製品であることを誇示した。Thom Browne版の登場で、折りたたみスマートフォンの認知度は世界のみならず日本でも少しずつ広がっていったことだろう。なお同モデルの日本での価格は27万円だった。
縦折りスマホをファッションアイテム化したGalaxy Flip Thom Browne Edition
2020年8月にはサムスンから横折りスタイルの2世代目となる「Galaxy Z Fold2 5G」が発表。初代モデルから大幅な改良が加えられ、UTGによるディスプレイ保護強化など使い勝手は大きく進化。ヒンジを途中で曲げた位置で固定できるフレックスモードなど、Galaxy Flipと同様の機構を多数取り入れた。こちらもThom Browneモデルが登場。引き続き日本市場にも投入された。
前年の縦折りモデルが不調だったモトローラはディスプレイを改良、eSIM専用を改めたモデル「razr 5G」を発表し、ようやくGalaxy Flipに対抗できる製品となった。翌年3月には日本でもソフトバンクからキャリア版が、またSIMフリー版も発売されている。
前年の縦折りモデルが不調だったモトローラはディスプレイを改良、eSIM専用を改めたモデル「razr 5G」を発表し、ようやくGalaxy Flipに対抗できる製品となった。翌年3月には日本でもソフトバンクからキャリア版が、またSIMフリー版も発売されている。
シャオミが参入、ファーウェイの縦折りが爆売れした2021年
2021年からサムスンは「Fold」「Flip」の発表を夏に変更。そのため年明けに大きな話題となった製品はファーウェイが発表した「Mate X2」だった。これまでディスプレイを外に曲げるモデルを展開していた同社が、Galaxy Z Foldシリーズと同じ内折り式として発表したのがこのMate X2だ。ファーウェイならどんな形状のモデルでも出せる、ということをアピールしたのだ。
内折り式となったファーウェイMate X2
4月にはついにシャオミが折りたたみ市場に参入。「Mi MIX Fold」は9999元(当時約16万8000円)と折りたたみでも価格破壊を引き起こした。だが中国国内だけの販売だったこともあり、海外では製品の存在はほとんど知られることはなかった。
この年の大きな話題はサムスンが8月に発表した新モデルだ。「Galaxy Z Fold3 5G」はスタイラスを使った手書き入力に対応し、「Galaxy Z Flip3 5G」は外側に1.9インチのサブディスプレイを搭載した。折りたたみスマートフォンの完成度をさらに高めたこともあり、ドコモもようやく重い腰を上げ、日本での取り扱いはauとの2社体制となった。
この年の大きな話題はサムスンが8月に発表した新モデルだ。「Galaxy Z Fold3 5G」はスタイラスを使った手書き入力に対応し、「Galaxy Z Flip3 5G」は外側に1.9インチのサブディスプレイを搭載した。折りたたみスマートフォンの完成度をさらに高めたこともあり、ドコモもようやく重い腰を上げ、日本での取り扱いはauとの2社体制となった。
Galaxy Z Fold3 5GとGalaxy Z Flip3 5G
2021年の終わりにはファーウェイの縦折りスマートフォン「P50 Pocket」の登場で再び市場が活気づいた。カジュアルデザインのサムスンに対し、ファーウェイは超高級な外観でプレミアム感を高め、縦折りモデルながら、8988元(約16万2000円)でも中国国内で売れまくった。
プレミアム感の高いファーウェイP50 Pocket
山根 康宏
香港在住携帯研究家
スマホとSIMを求めて世界各国を取材中。海外、特に中国の通信事情に精通している。大手メディアへの執筆も多数。海外スマホ・ケータイを1800台所有するコレクターでもある。