ウォン・カーウァイが4Kデジタル修復版を作ってるらしい!
2020年2月。ついにそのニュースがGoogle アラート経由で飛び込んできました。ニュースはウォン・カーウァイに関する大切な情報を2つ教えてくれました。
まず、ウォン・カーウァイは新作の映画を撮影中だったが、パンデミックの影響で制作が中断していること。これは、ウォン・カーウァイのガチオタ勢としては、なんとなく予感していました。過去の制作風景から想像するに、豪快に延期を繰り返すことでしょう。でも、世界が彼を放っておくはずがないんですよ。
で、もう1つが雷のような知らせでした。それが冒頭にも書いたカンヌ国際映画祭での『花様年華』の4Kデジタル修復版上映のニュースでした。ウォン・カーウァイ、『花様年華』の4Kデジタル修復版、作ってたんかい! 絶対めちゃくちゃこだわってる!
ウォン・カーウァイが『花様年華』の4Kデジタル修復版を作っていることは、私にとっては福音でした。
まず、Google検索を駆使して『花様年華』4Kデジタル修復版のポスターを漁りつつ、そしてそのポスターが今まで見たことのない(ような気がする)アングルであるたびに、私は唸り、「こんなにイケてる作品が、カンヌで上映されるだけで終わるわけがないだろう」と妄想を膨らませました。
香港で知り合った友達に「ねえウォン・カーウァイの修復版って知ってる? 香港で上映してる?」と尋ねても「知らん」と返されて、でも一切めげない。「これは、ソフト化だってありうるし、劇場公開だってありうる」そう信じたのです。私は修復版を観たい。
誰にも教えない、自分のためだけの執念が、このときから1つ増えました。
やがて、あっけないことに、この『花様年華』の4Kデジタル修復版はNetflixで配信されることがわかりました。
慌ててNetflixを契約し、レストア版の『花様年華』をむしゃぶりつくように観て、冒頭の構成がわずかに違うことや、発色の違いに気がつくたびに「ああ、『ブレードランナー』のファンはこうやって感動していたのか……」と思いました。返す返すも『ブレードランナー』のファンがうらやましい。私も『ブレードランナー』は好きだけどさ。
Netflixで公開されたのは『花様年華』だけではありません。2017年にリマスターされた『欲望の翼』(1992年公開)も『2046』(2004年公開)も並んでる! もうNetflixから逃れられない。でも待って、もしかしてオンライン配信だけでおしまい? 劇場公開は……?
こうして、1人きりで怨念のような願望を燃やしながらTwitterやGoogleで検索を繰り返すうちに、突如「ウォン・カーウァイ 4K」というTwitterアカウントにたどり着きました。公式サイトは存在していなくて、ただSNSアカウントだけ。でもキービジュアルが意味深に真っ赤。うわあ、ウォン・カーウァイっぽい!
私の期待を増長させるようなこのTwitterアカウントの運用者が何者なのかはわからない。でも、私は引き続き念じていました。「何かを伝えるためにあなたは現れたんだよね? フォローして続報を待つよ」と。
まず、ウォン・カーウァイは新作の映画を撮影中だったが、パンデミックの影響で制作が中断していること。これは、ウォン・カーウァイのガチオタ勢としては、なんとなく予感していました。過去の制作風景から想像するに、豪快に延期を繰り返すことでしょう。でも、世界が彼を放っておくはずがないんですよ。
で、もう1つが雷のような知らせでした。それが冒頭にも書いたカンヌ国際映画祭での『花様年華』の4Kデジタル修復版上映のニュースでした。ウォン・カーウァイ、『花様年華』の4Kデジタル修復版、作ってたんかい! 絶対めちゃくちゃこだわってる!
ウォン・カーウァイが『花様年華』の4Kデジタル修復版を作っていることは、私にとっては福音でした。
まず、Google検索を駆使して『花様年華』4Kデジタル修復版のポスターを漁りつつ、そしてそのポスターが今まで見たことのない(ような気がする)アングルであるたびに、私は唸り、「こんなにイケてる作品が、カンヌで上映されるだけで終わるわけがないだろう」と妄想を膨らませました。
香港で知り合った友達に「ねえウォン・カーウァイの修復版って知ってる? 香港で上映してる?」と尋ねても「知らん」と返されて、でも一切めげない。「これは、ソフト化だってありうるし、劇場公開だってありうる」そう信じたのです。私は修復版を観たい。
誰にも教えない、自分のためだけの執念が、このときから1つ増えました。
やがて、あっけないことに、この『花様年華』の4Kデジタル修復版はNetflixで配信されることがわかりました。
慌ててNetflixを契約し、レストア版の『花様年華』をむしゃぶりつくように観て、冒頭の構成がわずかに違うことや、発色の違いに気がつくたびに「ああ、『ブレードランナー』のファンはこうやって感動していたのか……」と思いました。返す返すも『ブレードランナー』のファンがうらやましい。私も『ブレードランナー』は好きだけどさ。
Netflixで公開されたのは『花様年華』だけではありません。2017年にリマスターされた『欲望の翼』(1992年公開)も『2046』(2004年公開)も並んでる! もうNetflixから逃れられない。でも待って、もしかしてオンライン配信だけでおしまい? 劇場公開は……?
こうして、1人きりで怨念のような願望を燃やしながらTwitterやGoogleで検索を繰り返すうちに、突如「ウォン・カーウァイ 4K」というTwitterアカウントにたどり着きました。公式サイトは存在していなくて、ただSNSアカウントだけ。でもキービジュアルが意味深に真っ赤。うわあ、ウォン・カーウァイっぽい!
私の期待を増長させるようなこのTwitterアカウントの運用者が何者なのかはわからない。でも、私は引き続き念じていました。「何かを伝えるためにあなたは現れたんだよね? フォローして続報を待つよ」と。
劇場にウォン・カーウァイ作品が帰ってくる
「ウォン・カーウァイ 4K」のTwitterアカウントは、2022年4月現在、「今夏にウォン・カーウァイの4Kレストア版のいくつかが日本で公開されること」を高らかに知らせています。日本で公開されるのは、『恋する惑星』(1995年公開)、『天使の涙』、『ブエノスアイレス』(1997年公開)、『花様年華』、そして『2046』。いずれもロマンチックかつ誰にもマネできない香港映画です。『恋する惑星』はぜひ『天使の涙』とセットで観たい。どちらも、もうどうしようもないくらいキュートな青春映画です。
これらの修復版がソフト化されるかどうかはわかりません。でも、10代の頃、あれだけ夢見た劇場公開に、大人になった私は居合わせることができるんです。ありがとう。無力で執念深いだけのファンは、待っていたよ。
皆さんも、もし、もう一度会いたい「何か」を持っているなら、どうしても諦められない「何か」があるなら、手始めにGoogle アラートに入れるといいかもしれません。それが、儀式としてとても楽しく、そして不思議な経験を呼ぶ行為だからです。
幸いなことに、私はGoogle アラートをきっかけにウォン・カーウァイの4K修復版の情報と出合えました。それは、ある日突然ニュースで「日本で4K修復版が公開されます」という完成された情報を知るよりも、うんとドラマチックで幸せな体験だったんです。かすかな期待と確信で頭がおかしくなりそうだった。
でも、この奇跡のような成就を差し引いても、「叶わないかもしれないけれど、何かを夢見て待つ」ことは、とても豊かで切ない経験でした。Google アラートを設定した瞬間に、ウォン・カーウァイ仕込みの乙女マインドを備えた私の心は、もはや半分くらい成仏していました。「まあ、待つか」と。
叶わないかもしれないことを、ただ待つ。「待つ」というふるまいが日常に組み込まれるだけで、私たちの生活は、急に映画の1シーンのように変わります。夢が叶わないことすら温度と匂いを持ち始めるのです。そして、「ひょっとして叶うかも……?」と可能性が立ちのぼった瞬間に、待ちぼうけだった世界は白昼夢のように変わります。
ぜひお試しください。私は、ウォン・カーウァイ作品が劇場に戻ってくること以外にも、いろんなものを、叶わないかもしれないけれど、オフラインとオンラインの両方でずっと待っています。
これらの修復版がソフト化されるかどうかはわかりません。でも、10代の頃、あれだけ夢見た劇場公開に、大人になった私は居合わせることができるんです。ありがとう。無力で執念深いだけのファンは、待っていたよ。
皆さんも、もし、もう一度会いたい「何か」を持っているなら、どうしても諦められない「何か」があるなら、手始めにGoogle アラートに入れるといいかもしれません。それが、儀式としてとても楽しく、そして不思議な経験を呼ぶ行為だからです。
幸いなことに、私はGoogle アラートをきっかけにウォン・カーウァイの4K修復版の情報と出合えました。それは、ある日突然ニュースで「日本で4K修復版が公開されます」という完成された情報を知るよりも、うんとドラマチックで幸せな体験だったんです。かすかな期待と確信で頭がおかしくなりそうだった。
でも、この奇跡のような成就を差し引いても、「叶わないかもしれないけれど、何かを夢見て待つ」ことは、とても豊かで切ない経験でした。Google アラートを設定した瞬間に、ウォン・カーウァイ仕込みの乙女マインドを備えた私の心は、もはや半分くらい成仏していました。「まあ、待つか」と。
叶わないかもしれないことを、ただ待つ。「待つ」というふるまいが日常に組み込まれるだけで、私たちの生活は、急に映画の1シーンのように変わります。夢が叶わないことすら温度と匂いを持ち始めるのです。そして、「ひょっとして叶うかも……?」と可能性が立ちのぼった瞬間に、待ちぼうけだった世界は白昼夢のように変わります。
ぜひお試しください。私は、ウォン・カーウァイ作品が劇場に戻ってくること以外にも、いろんなものを、叶わないかもしれないけれど、オフラインとオンラインの両方でずっと待っています。
花森 リド
ライター・コラムニスト
主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」、「Engadget 日本版」、「映画秘宝」などで執筆。
X:@LidoHanamori