プログラミング教育必修化でタイピング学習が必須!? Switch「タイピングクエスト」レビュー

飯島 範久

ゲーム使ってみた教育

政府の進める教育改革で 子供たちもパソコン操作の習得が必須に

令和2年度から実施された新学習指導要領により小学校でプログラミング教育が必修化となり、その対応にあたふたしているという保護者の方も多いのではないでしょうか。それに加えてコロナ禍により地域や学校によってはリモート授業も実施。思うように対面で授業も受けられず、家庭での負担や苦労が多い日々かもしれません。

そんな中で必然的に拡大しているのがプログラミング教育市場です。その規模は、プログラミング教室の検索サービス「コエテコ by GMO」の調査によると2020年が約140億円だったものが、2025年にはその2.1倍になる約292億円規模になると予想されています。すでにプログラミングスクールに子供を通わせていたり検討している家庭も多く、習い事の1つとして定着しつつあることは間違いありません。

出典:「2020年 子ども向けプログラミング教育市場調査」コエテコ byGMO

出典:「2020年 子ども向けプログラミング教育市場調査」コエテコ byGMO

小学校でのプログラミング授業は、地域や学校によって違いはあるものの、基本的には論理的思考を養う中で自然とパソコンを扱うことになります。スマートフォンやタブレットといったタッチ操作に慣れている子供世代にとっては、キーボードとカーソルの操作は最初は少しハードルが高いかもしれません。

また、プログラミング教育と合わせて政府はGIGAスクール構想も早期実現に向けて取り組んでおり、児童生徒に1人1台の端末を配布。ICT教育による次世代の人材育成に懸命になっています。配布される端末はChromebookやキーボード付きのiPadが多く、思考を養うだけでなく、パソコンを文房具のように自在に扱える能力も必要になってくるわけです。

廃れてしまったタイピングゲームが 再び日の目を見ることに

筆者もそうですが、いま仕事や生活に当たり前のようにパソコンを使っている大人たちは、学生から社会人までほぼ一斉にパソコンが普及した世代でした。誰も小学校で学んだ経験はなく、独学だったり、見よう見まねだったり、あるいはパソコンスクールに通った方もいるかもしれません。

そんな我々がパソコンを使うにあたって最初に憧れたのが、キーボードを見ずにカタカタとなめらかにタイピングする「タッチタイピング」だったのではないでしょうか。今でもそんなタイピング姿はそれだけで「できる人」という印象を与えますが、その域に到達するには誰しも時間が必要で、一朝一夕ではなかなか難しいものです。

そんなスムーズなタイピングをマスターするために助けてくれたのが、「タイピングソフト」でしょう。パソコン向けの練習ソフトとして1から学ぶようなものもありますが、最も使われたのはなんといっても「タイピングゲーム」です。遊びながら上達できる一石二鳥なタイピングゲームは2000年前後にたくさん登場し、学生はもちろんオフィスでも大人がこぞってスコアを競ったものでした。勤務中の時間を使ってでも、社員が最短でスキルを身につけるために容認されていたオフィスも多く、いわゆる「ゲーミフィケーション」の手法で作られたタイピングゲームは非常に効果的に技術の習得に役立ちました。

コエテコ「プログラミング教室ガイド」

コエテコの「プログラミング教室ガイド」にはゲームの仕組みを利用して勉強の効率を上げるゲーミフィケーションについての解説も

当時流行ったタイピングゲームの中でも、筆者も遊んだセガの「タイピング・オブ・ザ・デッド」は、タイピングゲームの金字塔と言っても過言ではないでしょう。襲ってくるゾンビをひたすら銃で撃ちまくるアーケードゲーム「ハウス・オブ・ザ・デッド」を、銃を向けるのではなくゾンビに掲げられる文字を「撃つ」ことで倒すタイピングゲームに仕上げた作品で、当時いかに速くミスなくタイピングするかを競い、テレビのワイドショー番組で紹介されるほどのブームとなりました。

そんなタイピングゲームブームを知っている世代としては、親となったいま、子供にもタイピングをマスターするためにタイピングソフトを所望しようとするのですが、スマートフォンの全盛によるものか、タイピングゲーム市場がすっかり廃れてしまい、なかなかいいソフトやゲームが見当たらない状況となってしまいました。

自然と学んでいく「タイピングクエスト」は習うより慣れろ

そんな中、4月22日にセナネットワークスから発売されたNintendo Switch用のタイピングゲーム「タイピングクエスト」は、子供をターゲットにした本格的タイピングゲームで、遊びながら飽きずにタイピングをマスターする工夫が散りばめられています。

遊べるモードは、一人で黙々とステージをクリアしていく「シングル」と、友達などと対戦できる「バトル」、そして日々ワードが更新されて出題される「デイリー」の3つがあります。

基本は、横スクロール型のゲームで、プレイヤーがピックと呼ばれる生き物を倒すことで元の姿に戻すという冒険的な設定になっています。ピックを倒すには、表示されている文字を入力するのですが、タイピング練習ソフトにありがちな「まず基本をマスターしよう」といった指の置き方の説明や、キーの並びを覚えるような繰り返し練習というものがありません。

デイリーモードやバトルのオンライン対戦は、オンライン会員の必要がある

最初にキャラクターを選び、容姿や衣装の色を好きなように変え、10歳以上かを選択すると(難易度が変わります)、すぐに冒険が始まります。最初のステージは1文字で、一定の時間が経っても入力できないとガイドがキーの位置を表示してくれるため、キーボードに触れたことがないお子さんでも何度も繰り返していくうちになんとなくキーの場所を覚えていくはずです。

最初は、入力できないとキーの場所を教えてくれる

筆者の子供もそうですが、単純作業によるキーの位置を覚えさせるというのは、結構すぐに飽きてしまいます。その点、敵を倒すというゲーム性はそのままに、わからなかったらキーの位置を教えてくれることで、ゲームをクリアする喜びと、キー配置をまったりと覚えていけるので、飽きずに続けられることでしょう。習うより慣れろの精神です。

ステージが進んでいくと、難易度は増していき、複数の文字(単語)を入力したり、複数の敵が現れたり、ボスが登場したりと横スクロールシューティングゲームのような展開で楽しみながらタイピングも覚えられていくでしょう。
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飯島 範久

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