ゴールデンウィークも終わり、次は夏休みに何をしようか……と計画を立て始める頃ではないだろうか。せっかくの長期休暇、ゆっくり骨休めをしたり、実家に帰ったり、旅行に出たりと、普段できない体験をしたりするのもいいだろう。しかしこの機会に、キャリアアップに向けて知識やスキルの向上に努めたいと考えている方もいるはずだ。
そんな方のために、筆者が翻訳を担当した『センスフルネス——どんなスキルも最速で磨く「マスタリーの法則」』という書籍を、夏休みに向けて読むことを提案したい。
本書の著者は、効果的な学習戦略を探求する研究者として知られるスコット・H・ヤング。ヤングは、さまざまな勉強法を研究・実践し、その効果を検証している人物だ。彼は自らの体験談をまとめた『ULTRA LEARNING 超・自習法――どんなスキルでも最速で習得できる99つのメソッド』という本を既に出版しているが、本書はその続編として「特定の分野に限らず、読者が挑戦しようと考えているあらゆることの上達に応用できる、実践的なアプローチと思考法」を解説した1冊となっている。
その核心にあるのは「上達には3つの基本的な要素が不可欠だ」というシンプルな考え方だ。その3つとは、「他者のやり方から学ぶこと(See)」「効果的な実践を自分で行うこと(Do)」、そして「得られた結果に基づいて調整すること(Feedback)」。この3つがうまく組み合わさったとき、驚くほどの速さで進歩が生まれるとヤングは指摘する。それぞれの要素は目新しいものではないが、本書の価値は、自ら何かを学び、上達したいと願うすべての人びとに対して、そのプロセスを明確にし、具体的な行動へと導く「実践的な道具箱」を提供してくれる点にある。
スキルを「最速で身につける」には、再現可能な仕組みがある。スコットが提唱する「マスタリーの法則」では、上達の基本ステップとして次の3つが挙げられている。
1. 観察:上手な人のやり方と考えをよく見る
2. 実践:少し難しいことに挑みながら、工夫して練習する
3. フィードバック:結果を見て調整し、より良い方法を探る
この3ステップを軸に、学習をさらに加速させるためのポイントもまとめられている。
・模倣する:まずは上手な人を真似て、基礎を身につける
・小さな成功を重ねる:うまくいった体験がやる気を引き出す
・練習のループを作る:「お手本→やってみる→直す」の反復で着実に上達
・いろいろなやり方で反復する:順番や場面を変えて応用力を育てる
・迷いも成長の一部と考える:うまくいかない時こそ学び直しのチャンス
本稿では、これらの考え方がなぜ「夏休み」という時期に効果的なのかを、5つの理由に分けて紹介していく。
そんな方のために、筆者が翻訳を担当した『センスフルネス——どんなスキルも最速で磨く「マスタリーの法則」』という書籍を、夏休みに向けて読むことを提案したい。
本書の著者は、効果的な学習戦略を探求する研究者として知られるスコット・H・ヤング。ヤングは、さまざまな勉強法を研究・実践し、その効果を検証している人物だ。彼は自らの体験談をまとめた『ULTRA LEARNING 超・自習法――どんなスキルでも最速で習得できる99つのメソッド』という本を既に出版しているが、本書はその続編として「特定の分野に限らず、読者が挑戦しようと考えているあらゆることの上達に応用できる、実践的なアプローチと思考法」を解説した1冊となっている。
その核心にあるのは「上達には3つの基本的な要素が不可欠だ」というシンプルな考え方だ。その3つとは、「他者のやり方から学ぶこと(See)」「効果的な実践を自分で行うこと(Do)」、そして「得られた結果に基づいて調整すること(Feedback)」。この3つがうまく組み合わさったとき、驚くほどの速さで進歩が生まれるとヤングは指摘する。それぞれの要素は目新しいものではないが、本書の価値は、自ら何かを学び、上達したいと願うすべての人びとに対して、そのプロセスを明確にし、具体的な行動へと導く「実践的な道具箱」を提供してくれる点にある。
スキルを「最速で身につける」には、再現可能な仕組みがある。スコットが提唱する「マスタリーの法則」では、上達の基本ステップとして次の3つが挙げられている。
1. 観察:上手な人のやり方と考えをよく見る
2. 実践:少し難しいことに挑みながら、工夫して練習する
3. フィードバック:結果を見て調整し、より良い方法を探る
この3ステップを軸に、学習をさらに加速させるためのポイントもまとめられている。
・模倣する:まずは上手な人を真似て、基礎を身につける
・小さな成功を重ねる:うまくいった体験がやる気を引き出す
・練習のループを作る:「お手本→やってみる→直す」の反復で着実に上達
・いろいろなやり方で反復する:順番や場面を変えて応用力を育てる
・迷いも成長の一部と考える:うまくいかない時こそ学び直しのチャンス
本稿では、これらの考え方がなぜ「夏休み」という時期に効果的なのかを、5つの理由に分けて紹介していく。
理由1:どこから始めればいいかが見えてくる
何か新しいことを始めるとき、多くの人が「具体的に何をすればいいのか?」という疑問にぶつかる。本書ではそれに向けて、抽象的な理論ではなく、具体的な行動につながる「実践的なアドバイス」を提供している。
特に重要なのが、上達の第一歩としての「他者から学ぶ(See)」という視点だ。ヤングのアプローチは、成功している人びとの思考や行動を注意深く観察し、そこから学び取ることの重要性を教えてくれる。例えばあるスキルを習得したいなら、その分野の専門家がどう課題に取り組んでいるかを示す「お手本」を見つけることが出発点だと本書は提唱している。それは解説付きの模範解答を研究することかもしれないし、熟練者の動きを動画で観察することかもしれない。最初は模倣から入ることも、創造性を育む上で有効な戦略となり得る。
このように明確な手本や具体例を起点にすれば、「一体どこから手をつければいいのか」という最初の混乱を乗り越え、進むべき道が見えてくる。問題を正しく捉え、具体的な第一歩を踏み出すための助けとなるのだ。
複雑なスキルであっても、まずは全体を分解して構成要素を理解し、基礎を固めることが重要だとも本書は示している。しっかりとした土台があってこそ、より高度な応用が可能になるのである。夏休みに挑戦したいことが何であれ、この「まず見て学ぶ」という姿勢は、学習のスタートダッシュを力強く後押ししてくれるだろう。
特に重要なのが、上達の第一歩としての「他者から学ぶ(See)」という視点だ。ヤングのアプローチは、成功している人びとの思考や行動を注意深く観察し、そこから学び取ることの重要性を教えてくれる。例えばあるスキルを習得したいなら、その分野の専門家がどう課題に取り組んでいるかを示す「お手本」を見つけることが出発点だと本書は提唱している。それは解説付きの模範解答を研究することかもしれないし、熟練者の動きを動画で観察することかもしれない。最初は模倣から入ることも、創造性を育む上で有効な戦略となり得る。
このように明確な手本や具体例を起点にすれば、「一体どこから手をつければいいのか」という最初の混乱を乗り越え、進むべき道が見えてくる。問題を正しく捉え、具体的な第一歩を踏み出すための助けとなるのだ。
複雑なスキルであっても、まずは全体を分解して構成要素を理解し、基礎を固めることが重要だとも本書は示している。しっかりとした土台があってこそ、より高度な応用が可能になるのである。夏休みに挑戦したいことが何であれ、この「まず見て学ぶ」という姿勢は、学習のスタートダッシュを力強く後押ししてくれるだろう。
理由2:「完璧」より「より良く」を目指す、続けやすい学びの姿勢
「完璧でなければ意味がない」「失敗は許されない」。そんなプレッシャーが、新しい挑戦への意欲を奪ってしまうことがある。本書が教えてくれる大きな気づきの一つは、こうした完璧主義の呪縛から自由になれるということだ。ヤングが原題に「Get Better Anything(どんなことでもより良くなる)」という表現を選んだのには理由がある。「完璧を目指せ」と言われると、目標が遠すぎて気後れしてしまう。しかし「より良くなる」ことは、今いる場所から踏み出す次の一歩であり、誰にとっても身近で、達成可能な目標だ 。
この考え方がもたらすのは、スキルアップを苦しい登山ではなく、景色を楽しみながら一歩ずつ進む旅に変える視点だ。
「より良くなろう」という姿勢は、心理的なハードルを大きく下げてくれる。新しいことに挑むのが怖くなくなり、たとえ壁にぶつかっても「完璧ではないけれど、前よりは進歩した」と前向きに捉え、挑戦を続ける力になる。その小さな成功体験が次の意欲につながり 、「上達は一直線ではない」という現実も受け入れやすくなる。
この考え方は、夏休みの計画を無理なく続ける上でも非常に有効だ。最初から完璧を目指して短期間で燃え尽きてしまうような無理な計画ではなく、「少しずつでも、着実に前進する」というアプローチのほうが、楽しみながら学び続けられる。
夏休みを有意義に過ごすために、この取り組みやすい姿勢は大きなアドバンテージとなるだろう。
この考え方がもたらすのは、スキルアップを苦しい登山ではなく、景色を楽しみながら一歩ずつ進む旅に変える視点だ。
「より良くなろう」という姿勢は、心理的なハードルを大きく下げてくれる。新しいことに挑むのが怖くなくなり、たとえ壁にぶつかっても「完璧ではないけれど、前よりは進歩した」と前向きに捉え、挑戦を続ける力になる。その小さな成功体験が次の意欲につながり 、「上達は一直線ではない」という現実も受け入れやすくなる。
この考え方は、夏休みの計画を無理なく続ける上でも非常に有効だ。最初から完璧を目指して短期間で燃え尽きてしまうような無理な計画ではなく、「少しずつでも、着実に前進する」というアプローチのほうが、楽しみながら学び続けられる。
夏休みを有意義に過ごすために、この取り組みやすい姿勢は大きなアドバンテージとなるだろう。

小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。