「猫ゲー」「すごく猫がリアル」「猫になれる」と、ちまたを賑わす猫のサイバーパンクアクションアドベンチャーゲーム『Stray』。やればやるほど「私、猫だ……」と感じてしまう猫ゲーは、ゲーマーをどう変えてしまうのでしょうか。
犬派も思わずうなる“あの猫のゲーム”
2020年頃から「“あの猫のゲーム”、早く出ないかな」ってずっと待っていました。2022年7月19日にPlayStation 4・PlayStation 5、そして翌7月20日にはSteamでもリリースされたアドベンチャーゲーム、Strayのことです。
香港の尖沙咀(チムサーチョイ)を思わせるようなネオンサイン、すすけた裏路地、つぎはぎだらけのトタン屋根をトボトボ歩く1匹の茶トラの猫……これらのゲーム画面の魅力といったら! しかもプレーヤーはその茶トラの猫になって都市をさまようアドベンチャーゲームだというのです。たまらん。
私はかなり強めの犬派で、猫派のみなさんとは程よい距離感で付き合ってきました。しかし、魔窟のような都市でしなやかにサバイブするならば犬じゃなくて猫のほうが適役だろうなということはわかっています。いや、そもそもそんな種としての有利不利を差し引いたって、Strayの小さな猫はとてもキュートで勇敢で楽しそうだった。犬派の私の心にもひょいっと跳び込んできたわけです。
ということで待ちわびた発売日の夜、私はPlayStation 5のコントローラを鼻息荒く握りしめ、ダウンロードしたての『Stray』で遊び始め…………。なんと30分ほどで寝てしまいました。徹夜も辞さぬぞと思っていたのに。
Stray開発者の名誉のために最初にお伝えしたいことは、私は決して退屈したから寝たわけではありません。ものすごーく猫の気持ちになってしまったのです。ほら、猫ってよく寝るでしょ? 猫として振る舞い、猫として考え、猫の体で活動していたら、寝てました。想像以上に猫のゲームだったStrayの魅力をご紹介します。
香港の尖沙咀(チムサーチョイ)を思わせるようなネオンサイン、すすけた裏路地、つぎはぎだらけのトタン屋根をトボトボ歩く1匹の茶トラの猫……これらのゲーム画面の魅力といったら! しかもプレーヤーはその茶トラの猫になって都市をさまようアドベンチャーゲームだというのです。たまらん。
私はかなり強めの犬派で、猫派のみなさんとは程よい距離感で付き合ってきました。しかし、魔窟のような都市でしなやかにサバイブするならば犬じゃなくて猫のほうが適役だろうなということはわかっています。いや、そもそもそんな種としての有利不利を差し引いたって、Strayの小さな猫はとてもキュートで勇敢で楽しそうだった。犬派の私の心にもひょいっと跳び込んできたわけです。
ということで待ちわびた発売日の夜、私はPlayStation 5のコントローラを鼻息荒く握りしめ、ダウンロードしたての『Stray』で遊び始め…………。なんと30分ほどで寝てしまいました。徹夜も辞さぬぞと思っていたのに。
Stray開発者の名誉のために最初にお伝えしたいことは、私は決して退屈したから寝たわけではありません。ものすごーく猫の気持ちになってしまったのです。ほら、猫ってよく寝るでしょ? 猫として振る舞い、猫として考え、猫の体で活動していたら、寝てました。想像以上に猫のゲームだったStrayの魅力をご紹介します。
ウヒョーみたいな顔のロボ。犬派の私にもこのロボの気持ちはわかる
猫のゲップを手元で響かせたい
本作のチュートリアルでは、最初に「ニャー」と鳴くことを練習します。○ボタンを押すだけ。
でもこの○ボタン1つで「ああ、私は“本当の猫”になるんだ」と思いました。これは猫化の儀式としてとてもよかった。「ニャー」のバリエーションが豊富なのです。ありきたりな「ニャー」だけじゃなく「ニャッ」や「ギニャ」や「ナンッ」、はては「ゲウッ」みたいな鳴き声も搭載しています。実際に犬や猫と暮らしたことのある人は聞いたことがあるはず。彼らは短い鳴き声も使いこなすんですよね。
このチュートリアル以降、私は暇さえあれば○ボタンを連打するようになってしまいました。手元のコントローラーから猫のゲップみたいな声が聞こえると幸せな気持ちになるのです。PlayStation 5の表現力の高さをこんな形で味わうことになるとは。
ニャーニャー鳴きながらゲームを進めます。ある出来事をきっかけにひとりぼっちになってしまった猫がたどり着いたのは、ロボット達が暮らす奇妙なスラム街。この薄汚れた都市でも「やっぱり私、猫だわ!」としみじみ実感することに。
猫はドアを開けられないし、ノックだってできません。ドアの前に立って「ニャー」と鳴いても反応はありません。ご自慢の鳴き声がむなしく響くばかり。「ああ、そっかあ」と思いました。猫、無力。
でもね、猫にもできることはたくさんあるんですよ。背の高いロボットが入れないような隙間をスルッと通り抜けたり、配管を伝って2階にお邪魔したり、扉をカリカリひっかいてドアの向こうにいるロボットにアピールしたり。
本作は「猫の体だからできること」を非常に丁寧にアクションゲームの中へ織り込んでいます。
でもこの○ボタン1つで「ああ、私は“本当の猫”になるんだ」と思いました。これは猫化の儀式としてとてもよかった。「ニャー」のバリエーションが豊富なのです。ありきたりな「ニャー」だけじゃなく「ニャッ」や「ギニャ」や「ナンッ」、はては「ゲウッ」みたいな鳴き声も搭載しています。実際に犬や猫と暮らしたことのある人は聞いたことがあるはず。彼らは短い鳴き声も使いこなすんですよね。
このチュートリアル以降、私は暇さえあれば○ボタンを連打するようになってしまいました。手元のコントローラーから猫のゲップみたいな声が聞こえると幸せな気持ちになるのです。PlayStation 5の表現力の高さをこんな形で味わうことになるとは。
ニャーニャー鳴きながらゲームを進めます。ある出来事をきっかけにひとりぼっちになってしまった猫がたどり着いたのは、ロボット達が暮らす奇妙なスラム街。この薄汚れた都市でも「やっぱり私、猫だわ!」としみじみ実感することに。
猫はドアを開けられないし、ノックだってできません。ドアの前に立って「ニャー」と鳴いても反応はありません。ご自慢の鳴き声がむなしく響くばかり。「ああ、そっかあ」と思いました。猫、無力。
でもね、猫にもできることはたくさんあるんですよ。背の高いロボットが入れないような隙間をスルッと通り抜けたり、配管を伝って2階にお邪魔したり、扉をカリカリひっかいてドアの向こうにいるロボットにアピールしたり。
本作は「猫の体だからできること」を非常に丁寧にアクションゲームの中へ織り込んでいます。
猫ですから、バケツの中に器用に入れるよ!
「これは(ゲーム攻略的に)何か意味があるんだろうか」とドキドキしつつ、爪とぎにピッタリな絨毯を無心になってバリバリやってみたり。
満足するまでバリバリできちゃう。やめどきがわからないぜ
ピアノも踏んじゃうぞ!
スラム街そのものが「ネコチャン!」
猫はひとりぼっちですが、不思議とさみしくありません。街がちょっとだけ優しいんです。たとえば猫に友好的なロボットもいれば、そうでないロボットもいます。でも、よそものの猫が街から追い出されることはありません。ちょっとした演出のそこかしこから開発者の猫愛が伝わります。「ネコチャン!」って黄色い悲鳴が聞こえてくるようです。
猫は会話ができないけれど、ある方法でロボットとコミュニケーションを取れます。
猫は会話ができないけれど、ある方法でロボットとコミュニケーションを取れます。
ペンキと猫、いい組み合わせ。この後は察してください
つかの間の休息ポイントがたくさん用意されています。「さあ寝てください」と言わんばかりにソファやクッションがそっと置いてあるのです。
ちょうどよいクッションが! いびきかいて寝ました
しかも猫がそこで休んだところでゲーム的に強くなるでも元気になるでもなし。ただただ寝るだけ! そして猫は快適な場所を見逃しません。ありがたく寝てます。
次第に私は「これはゲーム攻略的に意味がある行動なのかなー」と考えなくなりました。「私って猫だし、この状況ならコレやるっしょ」といった具合に、判断基準がどんどん猫サイドへ寄っていったのです。
次第に私は「これはゲーム攻略的に意味がある行動なのかなー」と考えなくなりました。「私って猫だし、この状況ならコレやるっしょ」といった具合に、判断基準がどんどん猫サイドへ寄っていったのです。
ビリヤード台で球をチョイっと突いて観察
寝起きはグーッと伸びをします
麻雀のテーブルもちゃんと破壊。ゲップしながら邪魔したよ!
花森 リド
ライター・コラムニスト
主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」、「Engadget 日本版」、「映画秘宝」などで執筆。
X:@LidoHanamori