「何もしない」を正しく理解して実践するには
「ネガティブ・ケイパビリティ」という考え方が大切というのは分かったが、どうやってその能力を高めていけばいいのか。あくまでも「しなくていい能力」であるが、何もしないことではない。諦めたり、先延ばしにしたり、思考停止になることではなく、待つ、観察する、傾聴する、辛抱するというような、「持ちこたえる能力」なのだ。実は、何もしないことは何かをすることより難易度は高い。
本書は、「ネガティブ・ケイパビリティ」の基本的解説から具体的な実践例までを網羅。「分からない」不安を受容するために参考となるキーワードや考え方の提唱に始まり、日常生活の中でどう能力を鍛えるのか、小さな行動のヒントが多数収録されている。
例えば、「振り返りの習慣をつける」「ひとりブレストとディベート」「文章をつくる」など、すぐに実践できるものばかり。気持ちや視点の切り替えがうまくいかずに煮詰まっているときの焦燥感は、モヤモヤするもの。その心持ちとどうやって付き合うのがよいのかが分かるヒントが詰まっている。
これまで重宝されていた「ポジティブ・ケイパビリティ」は、問題解決能力を発揮すべき状況や、方法が分かっていることが前提であり、これで解決できない場合に「ネガティブ・ケイパビリティ」が必要となる。それぞれで培ったスキルはどちらにも生かせるので、両者を上手に組み合わせることが、今後の社会ではより有効となるだろう。目先の解決策に早急に飛びつかないこと、本当に大切なものを見失わないことは鍛錬で実現できると自信を与えてくれる1冊だ。
本書は、「ネガティブ・ケイパビリティ」の基本的解説から具体的な実践例までを網羅。「分からない」不安を受容するために参考となるキーワードや考え方の提唱に始まり、日常生活の中でどう能力を鍛えるのか、小さな行動のヒントが多数収録されている。
例えば、「振り返りの習慣をつける」「ひとりブレストとディベート」「文章をつくる」など、すぐに実践できるものばかり。気持ちや視点の切り替えがうまくいかずに煮詰まっているときの焦燥感は、モヤモヤするもの。その心持ちとどうやって付き合うのがよいのかが分かるヒントが詰まっている。
これまで重宝されていた「ポジティブ・ケイパビリティ」は、問題解決能力を発揮すべき状況や、方法が分かっていることが前提であり、これで解決できない場合に「ネガティブ・ケイパビリティ」が必要となる。それぞれで培ったスキルはどちらにも生かせるので、両者を上手に組み合わせることが、今後の社会ではより有効となるだろう。目先の解決策に早急に飛びつかないこと、本当に大切なものを見失わないことは鍛錬で実現できると自信を与えてくれる1冊だ。
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『答えを急がない勇気 ネガティブ・ケイパビリティのススメ』
発行:イースト・プレス
著者:枝廣淳子
定価:1980円(税込)
発行日:2023年2月25日
判型:四六判
頁数:320P
ISBN:978-4-7816-2176-0
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781621760
発行:イースト・プレス
著者:枝廣淳子
定価:1980円(税込)
発行日:2023年2月25日
判型:四六判
頁数:320P
ISBN:978-4-7816-2176-0
https://www.eastpress.co.jp/goods/detail/9784781621760
人生の悩みに対してマインドセットから見直す
どんな人でも、何かに悩まずには生きていけない。誰かに相談してベストな回答、これという正解を出してほしいと思ったときこそ、悩みに向き合う前提条件から立て直すチャンスだ。
本書は、「人生は問題解決のためにあるわけではない。安易に答えを出すことをせずに、問いを抱えながら生きていくすべを学んでほしい」という著者の思いから生まれた、人生相談の形式をとった1冊。思考の出発点を「人生は無目的、人間は無力で無責任」とセッティングし、悩みは自分が生きているということの矛盾の表れだと述べる。
登場する9つの悩みは「どうしても許せない人がいる」「夢を諦めきれない」「大人になるってどういうこと?」といった、誰もが一度は思い当たるものから、不倫や延命治療まで、身近かつ普遍的なテーマばかり。これらの悩み一つひとつに対して、著者はマズローの欲求五段階説や等価交換と贈与交換の原理、貨幣経済など、哲学的で論理的な知見を踏まえて丁寧に説いていく。
よくある人生相談の回答のように、ただなだめたり、理屈で収めたり、こうすべきという指南はしない。誰にとっても正しい答えは存在しないということを前提にしたうえで、自分自身で悩み抜き、考えていく覚悟を与えてくれる。煮詰まっていたモヤモヤの全体像を客観的に捉えることができるだろう。悩みを手放すことを最優先せずに、答えが出せないという葛藤に耐えていく力を鍛えることが解決よりも重要であると実感するはずだ。
本書は、「人生は問題解決のためにあるわけではない。安易に答えを出すことをせずに、問いを抱えながら生きていくすべを学んでほしい」という著者の思いから生まれた、人生相談の形式をとった1冊。思考の出発点を「人生は無目的、人間は無力で無責任」とセッティングし、悩みは自分が生きているということの矛盾の表れだと述べる。
登場する9つの悩みは「どうしても許せない人がいる」「夢を諦めきれない」「大人になるってどういうこと?」といった、誰もが一度は思い当たるものから、不倫や延命治療まで、身近かつ普遍的なテーマばかり。これらの悩み一つひとつに対して、著者はマズローの欲求五段階説や等価交換と贈与交換の原理、貨幣経済など、哲学的で論理的な知見を踏まえて丁寧に説いていく。
よくある人生相談の回答のように、ただなだめたり、理屈で収めたり、こうすべきという指南はしない。誰にとっても正しい答えは存在しないということを前提にしたうえで、自分自身で悩み抜き、考えていく覚悟を与えてくれる。煮詰まっていたモヤモヤの全体像を客観的に捉えることができるだろう。悩みを手放すことを最優先せずに、答えが出せないという葛藤に耐えていく力を鍛えることが解決よりも重要であると実感するはずだ。
『「答えは出さない」という見識』
発行:夜間飛行
著者:平川克美
定価:1870円(税込)
発行日:2023年6月12日
判型:四六判
頁数:248P
ISBN:978-4-9067-9041-8
https://books.yakan-hiko.com/
発行:夜間飛行
著者:平川克美
定価:1870円(税込)
発行日:2023年6月12日
判型:四六判
頁数:248P
ISBN:978-4-9067-9041-8
https://books.yakan-hiko.com/
今こそ身につけたい「分からないまま」でいる力
オススメした4冊とも、実は読むほどにモヤモヤしていくような内容ばかり。具体的なソリューションがない、何も進展させられないままで不安が解消されない……。
それこそが、分からないことに耐えるネガティブ・ケイパビリティを鍛えていく第一歩。分からない問いに安易に答えを出さず、諦めないで耐えることが重要なのは当然のこと。最近この言葉を頻繁に見聞きするのは、急速に転換点を迎えた現代社会における不安の表れでもあるだろう。
こうしたせわしない日々の中、違和感や疲れを感じている人は、この機会に本を手に取り、ネガティブ・ケイパビリティをライフワークとして取り組んでみてはいかがだろうか。
それこそが、分からないことに耐えるネガティブ・ケイパビリティを鍛えていく第一歩。分からない問いに安易に答えを出さず、諦めないで耐えることが重要なのは当然のこと。最近この言葉を頻繁に見聞きするのは、急速に転換点を迎えた現代社会における不安の表れでもあるだろう。
こうしたせわしない日々の中、違和感や疲れを感じている人は、この機会に本を手に取り、ネガティブ・ケイパビリティをライフワークとして取り組んでみてはいかがだろうか。
葉々社 小谷輝之
本屋と出版社
2社の出版社勤務を経て、2022年4月に東京・梅屋敷で本屋「葉々社」を開店。ひとりで本屋の運営を切り盛りしながら、出版社としての本作りにも取り組み中。Twitter:@youyousha_books