「面白スマホ」はなぜ出てこないのか
しかしこれら無名メーカーが自由気ままに製造してきたフィーチャーフォンも、スマートフォンの普及とともにほぼ絶滅してしまった。最大の理由は価格競争が極限まで進み、価格以外の部分にコストをかけることが難しくなったからだ。新興国では1000円程度でフィーチャーフォンが売られており、付加価値を高めた高価格なフィーチャーフォンには誰も見向きもしない。そもそもフィーチャーフォンに求める付加機能は大きな画面や高性能なカメラであり、ならばスマートフォンを選べばよい。ひげ剃りの付いたケータイなど実は誰も求めていないのだ。
新興国では付加機能としてフルキーボード付きフィーチャーフォンも流行った
スマートフォンもこれだけ普及が進むと各社似たような外観の製品ばかりになってしまっている。各メーカーはカメラ性能の強化で差別化を図ろうとしているが、それ以外の部分ではなかなか特徴を出せていない。ならば、外観や付加機能を搭載したモデルがそろそろ出てきてもいいのかもしれない。Nothingが2022年7月に発売した「Nothing Phone(1)」は背面を透明パネルとしライトを内蔵させるアイディアで大きな話題となった。スマートフォンの性能競争が一段落している今だからこそ、デザインで勝負する製品には十分勝機があるだろう。
「Nothing Phone(1)」のアイディアは悪くない
その一方で、ひげ剃りケータイのような「面白スマホ」は登場しないのだろうか? 前述したように、プロジェクターを内蔵したスマートフォンはサムスンなどが過去に発売したが、最後の製品が登場したのは今から約10年前。その後中国の無名メーカーが何機種か製品化を行ったが主力製品にはなっていない。
ひげ剃りケータイのようにスマートフォンに何かを合体させるアイデアは、モトローラが2016年に複数の合体モジュールを自在に組み合わせできるスマートフォン「moto Z」を製品化した。ベースとなるスマートフォンの背面は平らな構造で「moto mods」と呼ばれる合体モジュールが多数販売された。
ひげ剃りケータイのようにスマートフォンに何かを合体させるアイデアは、モトローラが2016年に複数の合体モジュールを自在に組み合わせできるスマートフォン「moto Z」を製品化した。ベースとなるスマートフォンの背面は平らな構造で「moto mods」と呼ばれる合体モジュールが多数販売された。
スマートフォンの背面にカメラやプリンターを合体できる「moto Z」スマートフォン
moto modsには、背面デザインを変えるカバーや駆動時間を延長できる外付けバッテリー、JBLとコラボしたスピーカーなどありがちなモジュールだけではなく、面白いモジュールが数多く登場した。老舗のカメラメーカーのハッセルブラッドとコラボしたカメラモジュール、ポラロイドとコラボしたインスタントプリンターモジュール、さらにはプロジェクターモジュールや360度カメラモジュールなど、いずれも楽しく面白い。。アメリカではスマートフォンを5Gに対応させる5Gモジュールも販売されたほどだ。
しかしこのmoto Zシリーズも2019年に発売された「moto Z4」を最後に終了。合体式スマートフォンはわずか3年で終息を迎えた。その理由は、スマートフォンの機能が高まるにつれ、モジュールによる拡張性が不要になってしまったからだ。またスマートフォンだけではなく新しいモジュールの開発も必要になるなどコストもかさみ、スマートフォン市場で合体式は主流になれなかったのだ。
しかしこのmoto Zシリーズも2019年に発売された「moto Z4」を最後に終了。合体式スマートフォンはわずか3年で終息を迎えた。その理由は、スマートフォンの機能が高まるにつれ、モジュールによる拡張性が不要になってしまったからだ。またスマートフォンだけではなく新しいモジュールの開発も必要になるなどコストもかさみ、スマートフォン市場で合体式は主流になれなかったのだ。
「次世代のひげ剃りケータイ」も登場?
今や高性能なスマートフォンがあれば、足りない機能は周辺機器やアプリ、サービスで十分カバーできる。そのため面白い機能が合体されたスマートフォンが出てくることは期待できそうにない。一方フィーチャーフォンは通話するユーザーがいなくならない限りまだまだなくならないだろう。では今後フィーチャーフォンはどのように進化していくのだろうか? 日本ではガラケーも製造しているFCNTが経営破綻、京セラが一般向け端末の製造開発から撤退してしまった。
そうなると今後は海外で販売されているフィーチャーフォンを日本に投入する動きが加速するかもしれない。海外のフィーチャーフォンは価格競争に耐えうるベーシックな製品ばかりと思いきや、ノキアブランドで製品展開を行っているHMD Globalは過去のノキアの名機のリバイバル版を発売するなど意欲的な製品を次々と出している。
そのなかで「現代版ひげ剃りケータイ」と呼べる製品が「Nokia 5710 XpressAudio」だ。一見すると普通のフィーチャーフォンだが、背面上部のカバーをスライドさせるとワイヤレスイヤホンが内蔵されている。イヤホンを使わないときは本体に収納して持ち運ぶことができ、しかも収納中に充電もしてくれる。本体デザインも良く実用性も悪くない。またフィーチャーフォンでありながらグーグルサービスが利用できる「KaiOS」を採用しており、SNSアプリの利用もできる。日本語入力に対応させるのも難しくないだろうから、日本向けに販売するのも十分ありだろう。
そうなると今後は海外で販売されているフィーチャーフォンを日本に投入する動きが加速するかもしれない。海外のフィーチャーフォンは価格競争に耐えうるベーシックな製品ばかりと思いきや、ノキアブランドで製品展開を行っているHMD Globalは過去のノキアの名機のリバイバル版を発売するなど意欲的な製品を次々と出している。
そのなかで「現代版ひげ剃りケータイ」と呼べる製品が「Nokia 5710 XpressAudio」だ。一見すると普通のフィーチャーフォンだが、背面上部のカバーをスライドさせるとワイヤレスイヤホンが内蔵されている。イヤホンを使わないときは本体に収納して持ち運ぶことができ、しかも収納中に充電もしてくれる。本体デザインも良く実用性も悪くない。またフィーチャーフォンでありながらグーグルサービスが利用できる「KaiOS」を採用しており、SNSアプリの利用もできる。日本語入力に対応させるのも難しくないだろうから、日本向けに販売するのも十分ありだろう。
「Nokia 5710 XpressAudio」は、一見すると普通のフィーチャーフォンだが、背面上部にワイヤレスイヤホンを収納
今後ひげ剃りケータイほど突拍子もない製品が出てくる可能性は低いだろうが、ノキアのイヤホン内蔵ケータイのような実用性のある製品は、まだまだ新しいアイデアが実現されるかもしれない。AirTagのような忘れ物防止トラッカーを数枚収納できるフィーチャーフォン、なんていうのもありかもしれない。スマートフォンの性能アップが続くなか、フィーチャーフォンの進化もひっそりと進んでいくだろう。
山根 康宏
香港在住携帯研究家
スマホとSIMを求めて世界各国を取材中。海外、特に中国の通信事情に精通している。大手メディアへの執筆も多数。海外スマホ・ケータイを1800台所有するコレクターでもある。