連日の猛暑も落ち着き、今年もようやく秋が到来した感がある。秋といえば、"芸術の秋"、ということで、久しぶりに美術館にでも足を運ぼうと思い立ち、訪れたのが東京・六本木にある国立新美術館にて開催中の『田名網敬一 記憶の冒険』だ。
国際的にも高く評価される日本人アーティスト、田名網敬一初の大規模回顧展
今年8月に88歳で亡くなった、国際的に高く評価される日本人アーティスト・田名網敬一は、幼少期に経験した戦争の記憶とその後に触れたアメリカ大衆文化からの影響が色濃く反映された、色彩鮮やかな作品で知られる。
2024年11月11日まで開催される同展は、田名網にとって初となる大規模回顧展。創作当時の資料を含めて田名網が手掛けた膨大な作品を紹介することで、これまで包括的に捉えられることがなかった、彼の60年以上におよぶ活動を「記憶」というテーマのもとに改めてひも解く内容になっている。
2024年11月11日まで開催される同展は、田名網にとって初となる大規模回顧展。創作当時の資料を含めて田名網が手掛けた膨大な作品を紹介することで、これまで包括的に捉えられることがなかった、彼の60年以上におよぶ活動を「記憶」というテーマのもとに改めてひも解く内容になっている。
多彩なコラボレーションで世代や国を超えて影響を与えたアーティスト
80歳を超えても精力的な創作活動を続けていた田名網は、その独特の作風から世代や国を超えたアーティスト、そしてデザイナーたちを魅了。これまでにコラボレーションを手がけたのはルイ・ヴィトンやステューシー、マリークヮント、アディダス・オリジナル、Ground Yといったファッションブランド、フィギュアブランドのBE@RBRICK、ディズニー、さらには赤塚不二夫、GENERATIONS from EXILE TRIBE、八代亜紀、RADWIMPSなどの漫画家やアーティストも含まれる。
実際、筆者が田名網を最初に知ったのも、彼が手がけた日本のロックバンド、SUPERCARのアルバム『ANSWER』のカバーアート(宇川直宏との共作)だった。このように多種多様なポップカルチャーに影響を与えた田名網の作品をどこかで目にしたことがある人は多いはずだ。そこで今回は熱心なアートファンだけでなく、広くポップカルチャーが好きな人まで楽しめる美術展として、『田名網敬一 記憶の冒険』をご紹介したい。
実際、筆者が田名網を最初に知ったのも、彼が手がけた日本のロックバンド、SUPERCARのアルバム『ANSWER』のカバーアート(宇川直宏との共作)だった。このように多種多様なポップカルチャーに影響を与えた田名網の作品をどこかで目にしたことがある人は多いはずだ。そこで今回は熱心なアートファンだけでなく、広くポップカルチャーが好きな人まで楽しめる美術展として、『田名網敬一 記憶の冒険』をご紹介したい。
11章構成で紹介される田名網の多彩な作品群
『田名網敬一 記憶の冒険』では、これまでに田名網が手がけた絵画、コラージュ、立体作品、アニメーション、実験映像、インスタレーションが11章に分けて展示されている。
入場するとまず登場するのが、同展のイントロダクションとなる0章「生と俗の境界にある橋」だ。この章では田名網にとって重要なモチーフである「橋」を使った新作インスタレーション「百橋図」が紹介されている。プロジェクションマッピングを使ったインスタレーションや屏風型のコラージュ作品も展示され、これから始まる田名網の記憶をたどる旅の始まりを告げる。
入場するとまず登場するのが、同展のイントロダクションとなる0章「生と俗の境界にある橋」だ。この章では田名網にとって重要なモチーフである「橋」を使った新作インスタレーション「百橋図」が紹介されている。プロジェクションマッピングを使ったインスタレーションや屏風型のコラージュ作品も展示され、これから始まる田名網の記憶をたどる旅の始まりを告げる。
0章「生と俗の境界にある橋」より、インスタレーション「百橋図」の展示風景。会場内は撮影OK(フラッシュ・動画はNG)だった(以下、写真撮影は全て筆者)
0章「生と俗の境界にある橋」より、屏風型のコラージュ作品「百橋図」の展示風景
日本最初期のポップ・アート「ORDER MADE!!」シリーズなど初期作品から最晩年の作品まで展示
次に1章「NO MORE WAR」では、日本最初期のポップ・アートとも評される「ORDER MADE!!」シリーズや米『Avant Garde』誌が主催したベトナム反戦ポスターコンテストに入選した「NO MORE WAR」シリーズなど、田名網が1960〜1970年代に手がけた作品が展示される。
1章「NO MORE WAR」より、「ORDER MADE!!」シリーズの展示風景
1章「NO MORE WAR」より、「NO MORE WAR」シリーズの展示風景
さらに2章「虚像未来図鑑」では、1969年に出版された同名のアーティストブックや日本版月刊『PLAYBOY』といった70年代のコラージュ作品、3章「アニメーション」では、1960〜1970年代の映像作品の素材が展示されるほか、実際のアニメーションも展示。
続く4章「人工の楽園」で展示されるのは、1981年に結核を患い、4カ月に及ぶ入院生活を余儀なくされた田名網が薬の強い副作用によって見た幻覚のイメージを創作に発展させた複数の立体作品や絵画だ。ここでは鶴や毛、虎といったアジアの吉祥文様や摩天楼が漂う奇妙な楽園的世界に魅了される。
続く4章「人工の楽園」で展示されるのは、1981年に結核を患い、4カ月に及ぶ入院生活を余儀なくされた田名網が薬の強い副作用によって見た幻覚のイメージを創作に発展させた複数の立体作品や絵画だ。ここでは鶴や毛、虎といったアジアの吉祥文様や摩天楼が漂う奇妙な楽園的世界に魅了される。
2章「虚像未来図鑑」より、1960年代に田名網が手がけた雑誌の展示風景
3章「アニメーション」より、映像作品「楽しい金曜日」で使われた素材の展示風景
4章「人工の楽園」より、複数の立体作品の展示風景
さらに5章「記憶をたどる旅」では、1990年頃の「エレファントマン」シリーズや1995年〜2000年の「生命誕生」シリーズが、6章「エクスペリメンタル・フィルム」では、1970年代に制作された実験映像作品「Why」などが展示される。
また、7章「アルチンボルドの迷宮」では、最晩年となった2024年の新作立体作品「アルチンボルドの迷宮」や、会場内にしつらえられた小さなアトリエのようなものが目を引く。
また、7章「アルチンボルドの迷宮」では、最晩年となった2024年の新作立体作品「アルチンボルドの迷宮」や、会場内にしつらえられた小さなアトリエのようなものが目を引く。
5章「記憶をたどる旅」より、「エレファントマン」シリーズの展示風景
6章「エクスペリメンタル・フィルム」より、実験映像作品「Why」の展示風景
7章「アルチンボルドの迷宮」の展示風景。手前が新作立体インスタレーション
Jun Fukunaga
ライター・インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はバーチャルライブ関連ネタ多め。DJと音楽制作も少々。