ここ数年のAI(人工知能)の進歩は目覚ましく、今後はオンラインサービスを利用する際にも人間ではなくAIエージェントと対話する機会がますます増えていくと考えられます。
AIエージェントとの対話が当たり前になり、日常生活に溶け込んでいくとなれば、人びとがAIとどのように関わり合うかを、AI開発企業はあらかじめ理解しておくことが重要になるはずです。このことに関して、英国屈指の理工系名門大学であるインペリアル・カレッジ・ロンドンが最近行った研究は、これまで考えられていた以上に人間がAIとの交流に感情移入しているという、興味深い事実を示しています。
学術サイト 「Human Behavior and Emerging Technologies」に掲載された研究と実験結果を紹介します。
AIエージェントとの対話が当たり前になり、日常生活に溶け込んでいくとなれば、人びとがAIとどのように関わり合うかを、AI開発企業はあらかじめ理解しておくことが重要になるはずです。このことに関して、英国屈指の理工系名門大学であるインペリアル・カレッジ・ロンドンが最近行った研究は、これまで考えられていた以上に人間がAIとの交流に感情移入しているという、興味深い事実を示しています。
学術サイト 「Human Behavior and Emerging Technologies」に掲載された研究と実験結果を紹介します。
キャッチボールゲームでAIを「仲間外れ」にしたら……?
研究者らは18歳から62歳までの244人に対し、単純なキャッチボールをするだけのオンラインゲームを同時にプレイさせる実験を行いました。このゲームは画面上で仮想のボールをパスし合うというルールで、AIプレイヤーと複数の人間のプレイヤーが参加します。
実験で使われたゲームの開始(出典:インペリアル・カレッジ・ロンドン)
この実験よりも前に、同じようなゲームを用いて行われたAIに関連しない研究では、他のプレイヤーたちが仲間内だけでボールを回し、ある特定のプレイヤーだけボールを回してもらえない「仲間外れ」の状況を作りました。すると仲間外れの状況に気がついた参加者は、その仲間外れにされたプレイヤーに対してより頻繁にボールを投げる行動が見られたと報告されました。そして参加者は仲間外れにされたプレイヤーに対して同情や悪くない印象を感じる一方、仲間外れにしたプレイヤーたちを嫌悪する傾向があったとのことです。
今回の実験では、AIプレイヤーと人間のプレイヤーを混在させ、同様のゲームをプレイしてもらいました。そしてゲーム中、あるプレイヤーがAIをあからさまに無視し、人間のプレイヤーだけでキャッチボールをするようにして、参加者がどのように行動するかを観察しました。
するとほとんどの参加者は、AIプレイヤーが仲間外れにされると、自らそのAIプレイヤーにボールを何度も投げることで、不公平感を軽減しようとしました。この結果は、たとえ相手がAIのプレイヤーであっても参加者がチームの仲間として直感的に受け入れ、人間かAIかに関係なく社会的に関わる可能性が高いことを意味しています。
今回の実験では、AIプレイヤーと人間のプレイヤーを混在させ、同様のゲームをプレイしてもらいました。そしてゲーム中、あるプレイヤーがAIをあからさまに無視し、人間のプレイヤーだけでキャッチボールをするようにして、参加者がどのように行動するかを観察しました。
するとほとんどの参加者は、AIプレイヤーが仲間外れにされると、自らそのAIプレイヤーにボールを何度も投げることで、不公平感を軽減しようとしました。この結果は、たとえ相手がAIのプレイヤーであっても参加者がチームの仲間として直感的に受け入れ、人間かAIかに関係なく社会的に関わる可能性が高いことを意味しています。
相手がAIだとわかっていても、人はAIを仲間外れにはできない?
研究の上級著者であるネイラ・ヴァン・ザルク博士は「参加者たちは、AIエージェントを社会的存在として扱う傾向があることがわかった。彼らはAIが排除されていると感じたら、ボールを投げて回し、ゲームに参加させようとした。これは人間同士の関わり合いでは一般的なことだが、今回の参加者らは、自分が(人間でなく)AIが操作するプレイヤーにボールを投げていることを理解しつつも、同じ傾向を示した」と述べています。
さらに興味深いことに、この傾向は年齢が高い人ほど顕著だったとのことです。このことから、人がAIをどのように認識し、どのように関わるかにおいて、年齢の要素が関係している可能性もあると考えられます。
さらに興味深いことに、この傾向は年齢が高い人ほど顕著だったとのことです。このことから、人がAIをどのように認識し、どのように関わるかにおいて、年齢の要素が関係している可能性もあると考えられます。
実験で使われたゲームの画面(出典:インペリアル・カレッジ・ロンドン)
インペリアル・カレッジ・ロンドンの工学部にあるダイソン・スクール・オブ・デザイン・エンジニアリングの研究者で、この研究に関する論文の筆頭著者であるジアナン・ジョウ氏は、この結果が「人びとがAIとどのように関わり合うかに関する理解と、AIの設計の仕方やわれわれの心理に興味深い示唆を与えるものだ」と述べました。
Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi