「NISA」「iDeCo」知ってる?使ってる?利益は? infoQが年代別・年収別投資状況を調査

安蔵 靖志

ソーシャルグッドネットサービス金融・銀行・暗号資産
GMOリサーチは同社が運営する会員登録数約70万人のアンケートサイト「infoQ」にて、少額投資非課税制度「NISA」と個人型確定拠出型年金「iDeCo」についてのWebアンケートを2021年10月に実施し、その結果を発表しました。

調査は20代~70代の各500人ずつ合計3000人を対象に、「NISA」に加えてNISAとセットで活用されることの多い個人型確定拠出型年金「iDeCo」についても実施。NISA・iDeCoの利用率や利益率、そのほか人気の証券会社や金融機関などについて、年代別だけでなく年収別にも分析しました。

【「NISA」とは? 「iDeCo」ってなに?】

NISAとは少額投資非課税制度という税制優遇制度のことです。通常、株式・配当金・譲渡益といった投資による利益については20%ほど税金がかかりますが、NISA口座内で購入した一定額の投資の利益についてはこの税金が最長5年間(2023年までの現行制度の場合)非課税で受け取れるというもの。NISAを使えば通常預金や定期預金などよりも資産を増やせる可能性がある上、少額からスタートできるため、活用する人が増えています。

NISAにはスポット購入と積み立て方式の購入が可能な「一般NISA」と、積み立て方式の「つみたてNISA」の2つに分かれます。年間投資金額の上限は一般NISAが120万円でつみたてNISAが40万円、非課税期間が一般NISAは5年まででつみたてNISAは20年という違いがあり、どちらか1つだけ選択可能で、同時に利用することはできません。

iDeCoとは国が創設したもので、将来に向けて毎月決まった金額を積み立てることで節税しながら老後に備えられる個人型年金制度です。

NISA、iDeCoともに運用して得た利益を非課税にすることで資産形成をサポートするというもの。NISA(積み立てで運用する「つみたてNISA」も含む)とiDeCoを併用されることが多いことから、今回はiDeCoも含めてアンケート調査を行ったとのことです。

NISA利用者は36.5%、利用率と認知度は低く留まる

【Q.1】「NISAの利用状況」

「NISAの利用状況」の調査結果

NISAの利用状況について、「NISAを利用していない」と答えた人は63.5%に上りました。「NISAを利用している」「つみたてNISAを利用している」を合わせて36.5%と、利用率は低くとどまっています。

「NISAを知っていますか?」との質問に対し、「名前も内容もよく知っている」(「概要は知っている」と回答した人は56.1%で、残りの43.9%は「名前は聞いたことがある」「知らない」と回答。NISAの利用率が低いのは、そもそも認知度の問題が大きいようです。

一般NISAの21%に比べてつみたてNISAは15.5%と少ないですが、20年間積み立てできることなどから若い世代に人気があります。専門家に資産運用を任せる投資信託になっていることも選びやすく、若い世代が始めやすい要因と言えるでしょう。

ちなみに現行のNISA制度は2023年に終了を予定していますが、2024年から2028年までも新しい制度として施行されることがすでに決定しています。 当面の間は同様の制度が利用できると考えて良いでしょう。

年収が多いほどNISAの利用者が増加

【Q.2】「年収別」NISAの利用状況

「年収別 NISAの利用状況」の調査結果

NISAの利用状況は、年収によって違いがあるようです。 調査では、年収の増加とともに「利用していない」は減少し、逆に「NISAを利用している」の利用者が増えていました。 NISAのような比較的少額の投資であっても、年収が高くなるにつれて利用が増加しているのには、高収入層ほど

・投資余力がある
・金融リテラシーがある
・節税への意識が高まる


といった要因があると考えられます。

もう1つ特徴的なのは、「NISA」の利用は年収が上がるほど増加しているのに対し、「つみたてNISA」の方は200万~1000万までの間でほぼ20%前後で推移し、それ以上になると減少しています。

このことから、年収が1000万を超えると投資信託での運用よりも、大きく利益が出る可能性のあるNISAを好んで選んでいると読み取ることもできます。

見方を変えると、800万~1000万の年収があっても、つみたてNISAで堅実な投資を考える人は多いとも言えます。

「利益が出ている」が全体の72.3% 特に若い世代で高い結果に

【Q.3】「年代別」NISAの運用状況

「年代別 NISAの運用状況」の調査結果

NISAを利用して資産運用を始めるときに気になることは、「結局、利益が出るのか」というところではないでしょうか。

実際にNISAを利用している人の運用状況を見てみると、最も「利益が出ている」と回答した人の割合が大きかったのは30代で、84%でした。最も低い70代でも62.4%で、全体では「利益が出ている」が72.3%、「損失が出ている」は13.2%となっています。NISA利用者は損失と比較すると多くの利益が出ていると言えそうです。

若い世代で8割前後の利益が出ているという結果も特徴的です。若い世代は、つみたてNISAの利用が多いという結果が出ており、つみたてNISAで長期的・安定的に利益が出ていることがこの結果に表れていると考えられます。

「利益が出ている」との回答が多い30代は、次の設問である「NISAの口座を開設した目的・動機」で「勉強のため」を挙げた割合が全世代で最も高くなっています。資産運用に対する関心の高さも運用状況に影響を与えているのかもしれません。

資産運用の勉強のためにNISAを始める投資初心者も多い!?

【Q.4】NISAの口座を開設した目的・動機

「NISAの口座を開設した目的・動機」の調査結果

NISAを利用している人に対し、NISAの口座を開設した目的・動機について複数回答での質問を行いました。「資産を増やすため」や「節税のため」が多いですが、若い世代を中心に「勉強のため」という回答も128人と比較的多く、つみたてNISAなど投資初心者が始めやすい資産運用という面が表れています。

「将来に不安を覚えたから」という理由をあげた人も127人いました。こちらは20代~40代の若い世代に多い回答になっています。詳しく見てみると、年収による回答数の差もほとんどなく、年収が多くても将来に金銭的不安を感じているという実情が見えてきます。

「金融機関で案内された」が112人となっています。年収別に見てみると、年収が高いほどNISAの利用者が多いので、こちらの割合も高いと思われるところですが、実際には一番割合が高いのは年収200万円未満になっています。 この結果から、知識さえあれば所得が少なくても利用しやすいのが、NISAのメリットと言えるかもしれません。

若者世代で利用者が増えたのは「つみたてNISA」が影響か

【Q.5】「年代別」NISAの利用率

「年代別」NISAの利用率の調査結果

NISAとつみたてNISAを始めた時期の回答結果を基に、年度ごとの利用率推移を見たところ、2018年頃から若い世代の利用率が大きく伸びてきています。これまでも述べてきたように若者に人気の「つみたてNISA」は2018年からの開始となっているので、その影響がうかがえます。

若い世代は、口座を開設した動機で「家族や知人に勧められた」や「テレビやネットなどを見て興味を持った」の項目が他の世代よりも多いことから、制度が浸透してきていることもあるのではないでしょうか。

一方高齢世代では、制度開始当初に多くの人が利用した反面、その後の利用率の伸びは徐々におだやかになっています。投資余力がある高齢者はNISAの制度開始とともに利用し始めた一方、そうではない人は始めるための金銭的余裕やきっかけがないということが考えられます。

2020年初頭から新型コロナウイルス禍が続いていますが、このグラフを見る限りでは全世代でその影響は少ないと見られます。その中でも突出して20代のNISA利用率が急増しているのは、先述の「つみたてNISA」制度の近年の認知・普及に加えて、コロナ禍による就労事情や収入に対する心境変化に大きな影響を与えた可能性もあると考えて良いでしょう。

確定拠出型年金(iDeCo、企業型DC)はNISAよりも安定!?

【Q.6】確定拠出年金(iDeCo、企業型DC)の運用状況

「確定拠出年金(iDeCo、企業型DC)の運用状況」の調査結果

続いて、確定拠出年金である「iDeCo」と「企業型DC」の利用状況について調査しました。

先ほど紹介したiDeCoとは確定拠出年金という制度の一種で、確定拠出年金には企業型年金(企業型DC)と個人型年金(iDeCo)があります。

iDeCoは年金に似た制度ですが、年金と違って自分で運用方法を指定できるほか、さまざまな税制の優遇もあるのが特徴です。ただし60歳になるまで投資したお金を引き出すことはできません。企業型年金(企業型DC)とは、企業が掛金を毎月従業員の年金口座に積み立て(拠出)してくれる制度のことで、入社した企業で定められてる自動加入の場合と、自由意志で決められる場合があります。

iDeCoはNISAと併せて活用されることの多い制度ですが、実際のところどちらの方が利益が出ていると感じている人の割合が高いのでしょうか?

確定拠出型年金(iDeCo、企業型DC)の運用状況は、全体の69.3%が「利益が出ている」と答えていました。 NISAの運用状況は全体の72.3%が「利益が出ている」と回答していたので、ほとんど同じ程度と見て良さそうです。

ちなみに確定拠出型年金(iDeCo、企業型DC)は長期の投資という性質上、現状の損益について「分からない」の回答が多くなっています。

そこで利益と損失に焦点を当て「利益が出ている」と「損失が出ている」の比率が何倍になっているかを比べてみると、

【NISAの場合】 72.3(利益)÷13.2(損失)=5.47倍

であったのに対し、

【確定拠出型年金(iDeCo、企業型DC)の場合】 69.3(利益)÷7.7(損失)=9倍

と、損失よりも利益が出ている人がNISAよりも多くなっていました。

年収600万円以下の約8割が利用していない確定拠出年金

【Q.7】「年収別」確定拠出年金(iDeCo、企業型DC)の利用状況

「「年収別」確定拠出年金(iDeCo、企業型DC)の利用状況」の調査結果

確定拠出年金を現在利用していない人は、平均的な年収である年収400~600万円で78.1%。全体では80.5%となっていました。NISAでは現在利用していない人が全体の63.5%だったので、確定拠出年金の方がさらに利用者が少ないことがわかります。

確定拠出年金ではさまざまな税制の優遇が受けられますが、そもそも認知度がNISAよりも低いということもあり、そのことがこの結果につながっているのではないでしょうか。

iDeCoと企業型DCの比較では、同程度の利用率もしくは企業型DCがやや多いというデータです。確定拠出年金は会社員が始めるケースが多く、口座を開設した理由でも会社に指定されたという声がよく聞かれました。

確定拠出年金は一定条件の下、企業型DCとiDeCoの両方を利用することも可能となっています。NISAとiDeCoを比べてみると、iDeCoは年収による差がよりわかりやすく出ています。これは年収が高いほど投資余力があるなどの理由のほか、iDeCoはNISAと違い「所得控除」もあるので、節税効果が大きいことが要因になっていると考えられます。

口座開設はNISA・確定拠出年金ともに取扱商品が多く手数料が安い証券会社が人気!

【Q.8】NISA・確定拠出年金(iDeCo、企業型DC)の口座を開設した証券会社や金融機関

NISAやiDeCoを始めるには、証券会社や金融機関に口座を作る必要があります。制度を利用している人がどこで投資を始めたのか、自由記述の設問の結果から回答を集計しました。その結果と主な理由が以下の通りです。

●NISA
・SBI証券……ブラウザやアプリの操作性が便利なため
・松井証券……50万円以下無料の手数料
・楽天証券……クレジットカード払いでポイントがつくから

●確定拠出年金(iDeCo・企業型DC)
・三菱UFJ銀行……昔から利用していたし、安心感があるから
・三井住友銀行……会社からの指定口座だったから
・マネックス証券……そこでしか買えない商品があったから

なお、人気の証券会社のNISA取引では以下の特徴がありました。

・取扱商品が多い
・手数料が安い
・海外株を取り扱っている
・夜間取引が可能
・ポイントが付与される


一方、確定拠出年金では「会社で指定された」との回答が目立ちました。その影響か、大手銀行系もよく利用されていました。NISAもiDeCoもまだまだ認知度が低く、利用するとお得な制度なのに利用されていないという印象があります。

つみたてNISAなど、資産運用の初心者でもを始めやすい制度もありますので、まだ始めていない方も興味を持ってくわしく調べてみるのも良いかもしれません。

【調査概要】
・調査方法:infoQでwebアンケート実施
・調査期間:2021年10月15日(金)~2021年10月21日(木)
・有効回答:3,000サンプル
・調査対象:全国15~99歳男女

安蔵 靖志

Techジャーナリスト/家電エバンジェリスト
家電製品協会認定 家電製品総合アドバイザー(プラチナグレード)、スマートマスター。AllAbout デジタル・家電ガイド。ビジネス・IT系出版社を経てフリーに。デジタル家電や生活家電に関連する記事を執筆するほか、家電のスペシャリストとしてテレビやラジオ、新聞、雑誌など多数のメディアに出演。KBCラジオ「キャイ~ンの家電ソムリエ」にレギュラー出演するほか、ラジオ番組の家電製品紹介コーナーの商品リサーチ・構成にも携わっている。

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