何を撮ってもギンギラギン、“ハリウッドの爆発王”ことマイケル・ベイ監督の愛すべき劇場未公開作たち

花森 リド

Specialライフスタイル映画・音楽

元気がないときはマイケル・ベイの映画を見よう

カゼ気味の日の葛根湯や猛暑日の冷えたビールと同じで、「なんか、ちょっと元気がないな〜!」と思ったら私はいつもマイケル・ベイの映画を見ることにしています。

そう、映画『トランスフォーマー』シリーズや『アルマゲドン』でおなじみ、ハリウッドが誇るメガヒット監督ことマイケル・ベイです。彼が撮ると何もかもが本当にギラギラしてしまう。

「極小ビキニでゴロゴロしている美女の太もも」や「数億円のスポーツカー」なんていう、いかにもギラつきそうな絵を世界一のシズルで撮るのはもちろんとして、墓地の雨垂れやオンボロトラック、それからカジノでなんとなく転がされるサイコロだってギンギラギン。サイコロのCMか?と思うくらい絵が濃い。ベイが撮ればルームサービスの茹でエビすらギルティに見える。エビもサイコロも本筋とは無関係なのに。そんな過剰なシズルと爆発とギラギラが観客の小さな悩みの大半を吹き飛ばします。だからちょっと元気がないときにピッタリなのです。

燃えるドル紙幣、唐突なニコラス・ケイジの胸毛

例えば『トランスフォーマー』。もう隅から隅まで全部ハデで、一気見してもコマ送りしても楽しい名作です。

ハデといえば『バッドボーイズ』のラストシーンなんて今まで何度お世話になったことか。とんでもない枚数のドル紙幣が燃えてる! と思ったら、その数分後には飛行機が期待の1000倍くらいの規模で爆発して、あまりのことに笑っちゃうわけです。マイアミの刑事ってスゴい!って。何度見ても笑顔になる。

『ザ・ロック』もいいですね。ヒマしてる時間が1秒もない。サンフランシスコを救うためにショーン・コネリーを呼び寄せたのに、一悶着あってサンフランシスコがそこそこ破壊されたり、ついさっきまで毒ガス付き時限爆弾人形と格闘していたニコラス・ケイジがいつの間にか胸毛全開でギターをつま弾いてたりするので、よそ見厳禁。そんなに大忙しなお話なのに、集中力ゼロで見ても内容を理解できる。つまり編集も神がかっています。

ギラギラ&神編集による突破力で「ニコケイを半裸にする意味はあるのか」なんてイチャモンをつける余地を一切与えない。そのまぶしいディスコミュニケーションさがベイ作品と映画評論家との相性の悪さの一因なのかもなあと思ったり。

とにかく、どんなジャンルもベイの手にかかると「火薬とガソリンとカメラワークがどうかしてる、ハイテンションなベイの映画」になります。強烈なオリジナリティであり作家性です。イカツいクルマを激突させてダイナマイトをいっぱい使えばベイ作品みたいに仕上がるかといえば、全然そうじゃないことは言わずもがな。

そんな全米No.1ギンギラクレイジー監督のベイだというのに、信じられないことに「日本の劇場で公開されていない作品」がいくつかあります。本当に信じられないので、本稿で紹介します。

(以下、配信情報は2026年4月23日時点の情報です)

ベイにしては小規模ながら爆発はホンモノ、『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』

あらすじ:マイアミのボディビルダー3人組が大金持ちを誘拐し財産を乗っ取ろうと企てる。ところが計画と呼べるほどの計画でもなく、全てにおいてツメが甘すぎ&場当たり的で、どんどん困ったことに……! 90年代に実際に起こった事件を基にした犯罪コメディ。

劇場未公開かつ我が最愛のベイ作品が『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金(以下、ペイン&ゲイン)』です。WOWOWで見かけて目がくぎ付けになり、Blu-rayディスクをすぐに買い、以後ずっと自宅の本棚の一番いい場所に置いています。“見たことない色したエナジードリンク”みたいな映画です。

ずっこけそうなくらいバカなのに拷問シーンは苛烈で、脂汗や血液までギラギラなあたりはさすがベイ。バカと陰惨とスタイリッシュは同時かつ過剰に成立するんですよ、ベイが撮れば。「痛そう!」と思うのに「拷問される側もする側も両者ガンバレ!」みたいな気分になる。

火薬の量は他のベイ作品と比較すると控えめながら、やっぱりガツンと爆発しています。ちょっとクルマと掘っ立て小屋がぶつかっただけじゃない?と思うような状況で、むちゃくちゃ火花が散る(その後ハデに爆発)。ネットリとしたスローモーションも健在で、「自称・知能犯の愚か者が真っ昼間の駐車場をホクホク顔で歩いている」だけのマヌケなシーンも妙に華やか。

主人公のボディビルダー3人を演じるのは、『テッド』のマーク・ウォールバーグと、リングネーム“ザ・ロック”でも知られるドウェイン・ジョンソン、そして『ハート・ロッカー』のアンソニー・マッキー。バカのパターンは三者三様ながら全員カラダをデカく仕上げてマイアミの太陽がよく似合う。特に「刑務所帰りで信心深く、ちょっとお人好しだが、ちょっとどころじゃないコカイン中毒のマッチョ」を演じるドウェイン・ジョンソンが楽しそう&ギンギラギンですばらしい。バカ3人組を追い詰める激シブ探偵を、先ほど紹介したショーン・コネリー&ニコケイの大暴れ映画『ザ・ロック』で最初に大暴れしたハメル准尉で知られるエド・ハリスが演じているのも見どころ。

ちなみに、こんな愚かな話があってたまるかと思いきやまさかの実話。「実話」かつ「場当たり的な犯行で事態が雪だるま式に悪化する」と聞くとコーエン兄弟の超名作『ファーゴ』を思い出しますが、『ファーゴ』は実際にはフィクション。舞台も雪深いミネアポリスで紫外線も弱めで、痛そうなシーンは『ペイン&ゲイン』よりも直視できないくらい痛そう。ガンバレ!みたいな心の余裕は微塵も生まれません。

どちらも大バカ者たちの地獄絵図&大失敗物語ではあるものの、主人公たちの欲望の純度でいうと『ペイン&ゲイン』の方がよりビビッド(つまり底抜けにバカ)な印象で、その不気味なシンプルさがベイのギラギラ作風と好相性。だからなのか終始あきれっぱなしのジェットコースタームービーに仕上がっています。「こっちが実話なのかよ」と脱力する。犯人から学べることが何もない。でも「教訓が何一つないエンタメ」で味わえる爽快感は、間違いなく私の人生を豊かにしてくれます。そもそも教訓を得たところで、人生はさほど変わりませんし。

ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金
『ペイン&ゲイン 史上最低の一攫千金』は各配信サービスで有料にて視聴可能です。
20 件

花森 リド

ライター・コラムニスト
主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」、「Engadget 日本版」、「映画秘宝」などで執筆。
X:@LidoHanamori

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