何を撮ってもギンギラギン、“ハリウッドの爆発王”ことマイケル・ベイ監督の愛すべき劇場未公開作たち

花森 リド

Specialライフスタイル映画・音楽

とにかく早く家に帰りたい、『13時間 ベンガジの秘密の兵士』

あらすじ:2012年、“世界一危険”といわれたリビア東部・ベンガジで武装集団が突如アメリカ在外公館を襲撃。現地CIA施設の極秘警備に当たっていた民間軍事会社の精鋭6人は、上層部からの待機命令に背き、大使らを救うべく領事館に向かう。彼らを待ち受けていたのは13時間の壮絶な戦いだった。実際にリビアで起こったアメリカ在外公館襲撃事件を扱った戦争アクション。

本作については「元気が出るか、出ないか」でいうと「別に元気も勇気も出ないが、ドッと疲れて逆に全身が活性化する」が正しいかと思われます。現代戦のイヤな緊張感がずっと続く作品で、主人公らが市街地をクルマで移動するだけでずっとヒヤヒヤ。

実話ベースかつ終始戦いっぱなしの映画なので、スピルバーグの『プライベート・ライアン』のような作品かと思ったら全然『プライベート・ライアン』ではなく、結局マイケル・ベイが約150分間(長い!)ずっとマイケル・ベイしている映画です。他のベイ作品のような悪ノリは封印し、シリアスに戦争映画を撮っていて、おそらくそれはとても成功しているのに、ちょっとゾンビ映画のように感じる瞬間があります。暗視カメラのグリーンも妙にギラギラ。

この映画、とにかく「わからない」んです。主人公たちの前にちょいちょい現れるリビア人たちは誰が味方で誰が武装集団なのかよくわからず、街のどこからRPG(ロケット砲)が飛んでくるかもわからず、かと思いきやRPGが飛び交う街角でテレビを見ている現地のジイさんがいたり。

そもそも何のために戦っているのかまったくわからず、もっというと主人公の6人が全員ひげ面の大柄なアメリカ人男性でそもそも見分けがつきにくく、そんな彼らが薄暗いところでドッカンドッカン撃ち合うので個体識別がますます困難に。なのに私は6人それぞれの個性や家庭事情を知っているのでとにかく心配! 150分ほとんど緊張し通しでヘトヘトになります。ベイ映画だから重火器の音も火力もすごいし……。

アメリカ在外公館襲撃事件の背景に少し触れる演出はあるものの、おそらく実際に戦闘に加わった人びとも「何が何だかよくわからない」まま、軽口を叩きながら地獄に突入したのかもなと思わせる不気味さがあります。とにかく「早く家に帰りたい」という感想に尽きる傑作です。

「戦争とは何なのか」などと考えるスキを観客に与えることなく、爆風とカオスにぶち込んで意義もへったくれもないまま「もうヤダ帰りたい!」と思わせるベイの戦争映画もまた、他の名匠と同じく真剣なアプローチなのではと思います(『プライベート・ライアン』も開始10分で帰りたくなりますが)。

13時間 ベンガジの秘密の兵士
『13時間 ベンガジの秘密の兵士』はAmazon Prime Video、Hulu、U-NEXTで公開中。

開始15分で古都フィレンツェをぶっ壊す『6アンダーグラウンド』

あらすじ:軽薄な億万長者がロクデナシの独裁者に強い憤りを感じて正義に目覚め、きらびやかな経歴を捨て「この世に存在しない人間=ゴースト」となり、ありあまる資金と技術とチームワークで巨悪を私刑する。付け鼻の変装から香港の摩天楼までフル活用するアクション超大作。

こちらは2019年のNetflixオリジナル作品であり、つまり「劇場未公開」とは呼べませんが、劇場で見たかったなあと思わせる映画です。Netflixの豊富な予算とベイのハデさの2階建てみたいな良作。世界中の「こういうところで銃撃戦をしたら大変だろうな、ハデだろうな」と思うような場所にわざわざ行って、わざわざスーパーカーを走らせ、マイケル・ベイの映画に出てきそうなものがインフレ気味に登場します。爆発、軍隊、空撮、唐突なベッドシーンに家族愛。 戦闘機も飛ぶ位置が低い低い。

実話ではなく創作であることをいいことに、主人公たちの活動資金が無尽蔵なんですよ。キャラクター紹介のついでにセキセイインコみたいな色したアルファロメオをかっ飛ばしてフィレンツェを壊し、敵地に乗り込むだけで無駄にフェラーリを横付けし(もちろんベイはネットリ撮る!)、数百億するであろう“ギラギラした乗り物”を「世界一巨大な磁石」にしたりと大忙し。行く先々の都市を破壊して大騒ぎしながら独裁者を追い詰めます。「この世に存在しない人間」というには無理があるくらいハデ。同じフィクションでも007の歴代ボンドだってここまでドカンドカンやらないですよ。でもボンドは一応は雇われの身(国家公務員)だもんなあ……。

なお大金持ちの割にはドンキで買ってきたような安っぽい変装をしたり、小学生のような口ゲンカをしたりとベイ的悪ノリ演出もバッチリ。

主演はライアン・レイノルズ。「テスラの自動運転機能やスマートフォンに欠かせない技術」を開発した天才エンジニアで億万長者で私刑集団のリーダーという、設定が少年マンガ以上に過積載なキャラクターを軽快に演じています。私刑とはいえ、やっていることは国家転覆です。本作はシリーズ化も期待されていましたが、今のところ続編の気配なし。体感として世界の30%くらいは破壊した印象なので、この先何に取り組めばいいのか難しいのかもしれません。行動半径が広すぎて仲間いっぱいの陽気なバットマンって感じで楽しいんですけどね。

ライアン・レイノルズ主演『6アンダーグラウンド』最終予告編 - Netflix
『6アンダーグラウンド』はNetflixで公開中。

そろそろマイケル・ベイ監督最新作が見たい!

「はたしてこのシーンに意味があるのか」なんてことを観客に考えさせるスキを一切与えないところが、私の最も気に入るベイの作風です。目くらましのためだけに爆破される壁も、ニコケイの胸毛も無駄なフェラーリも、そりゃ「いる?」ってツッコミを入れたくなるけど、その行為そのものが、すでに映画体験に包まれています。われわれは、上映中も上映後も、ずっとベイの手のひらの上にいるのです。

ところで、私だけじゃなく地球上のいろんな人たちを元気にしているに違いないベイですが、ここ数年は監督ではなく製作として関わる作品が続いています。『テキサス・チェーンソー』やスリラー映画の金字塔『クワイエット・プレイス』もベイのプロデュースによるもの。彼のフィルモグラフィーをたどると実はホラー作品が充実しています。爆発しようがしなかろうが、とにかくドキドキハラハラさせる映画ばかり。

そろそろ「マイケル・ベイ監督最新作!」みたいなニュースが来てほしいものです。予告編のドアタマで「ぼーーーーーん」みたいな鈍い音が鳴るタイプの、ギラギラなクルマがいっぱい壊れる感じの!
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花森 リド

ライター・コラムニスト
主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」、「Engadget 日本版」、「映画秘宝」などで執筆。
X:@LidoHanamori

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