「モノのインターネット」を進化させるナノサテライトIoT

小林 啓倫

物理的な実体を持つ「モノ」がインターネットに接続し、さまざまな情報をやり取りするようになる「モノのインターネット(Internet of Things、IoT)」。総務省は2021年度の情報通信白書において、全世界のIoTデバイス数は2020年の時点で253億台に達しており、2023年までに340億台を超えるとの予測を紹介している。世界の総人口は80億人に達しようとしているが、仮に生まれたばかりの赤ちゃんから高齢者まで全人類がインターネットに接続したとしても、その3倍から4倍の「モノ」がインターネットに接続しているわけだ。こうした状況を表す言葉として、「あらゆるモノのインターネット(Internet of Everything、IoE)」なる表現まで登場している。

このようにIoTは、既に私たちの身の回りで深く浸透している技術と言えるだろう。そしていま、IoTの進化は新たなステージに入ろうとしている。それは超小型の人工衛星とIoTを組み合わせるというものだ。

IoTの歴史

まずはIoTの歴史について確認しておこう。実は「モノのインターネット」という言葉自体が初めて登場したのは、今から20年以上も前の1999年のことだ。

この概念を考え出したのは、RFID技術の専門家であったケビン・アシュトンという人物である。RFIDとは、電波を当てると作動する小さな回路を使い、その回路と無線で情報をやり取りする技術で、無線タグやICタグとも呼ばれる(身近なところでは、SuicaやPasmoといった非接触型の交通系ICカードにも使われている)。

RFIDは電源が不要なため、さまざまなモノに取り付け、情報を付加することができる。例えば配送中の商品にタグを付け、配送状況をネットで追跡するといった対応が可能になるのだ。アシュトンがこうした状況を指して使ったのが、「モノのインターネット」という言葉である。彼はさまざまなモノがインターネットに接続することで、社会のあり方が変わるだろうと予想した。

ただ現在と比べれば、1999年の時点では情報技術がそれほど高度化しておらず、インターネット人口もようやく2億人を突破しようかというところだった。携帯電話からのウェブサイト閲覧を可能にした世界初のサービス「iモード」が始まったのもこの年である。RFIDを通じたモノのネット接続は大きな可能性を持つとはいえ、できることは限定的だった。

しかし「ムーアの法則」が象徴するように、デジタル技術は急速に進化するという特徴を持つ。IoTを発展させるには、モノが持つ情報処理能力と通信能力、そしてモノが接続する通信ネットワークの3つがそろわなければならないが、21世紀最初の10年で、その全てが大幅に進歩した。

その結果、さまざまなモノがネットに接続できるようになり、それを利用したサービスも次々に登場することとなる。例えば2004年には既に、リコーが「@Remote(アットリモート)」というサービスを開始している。これは複合機やプリンターといった製品を対象に、ネット経由で遠隔サポートを行うもので、リアルタイムで機器の状態や利用状況を管理できる。それを基に故障を未然に防いだり、少なくなった消耗品を自動的に発送したりといったサービスを提供しているのだ。いまやさまざまな機器が当たり前のように備えている機能だが、IoTの実用化に伴って普及したものである。

スマートフォンの登場と普及も、IoTの追い風となった。モノ自体がネットに接続する力を持たなくても、消費者が持つスマホと近距離通信できれば、それを通じてネットにつながることが可能になるからである。操作用の画面を用意するのも、スマホ側に任せてしまえば良い。例えば現在、さまざまな企業が身体の活動量を測定するウェアラブル機器を発売しているが、こうした機器がセンサーで集めたデータを送信したり、機器の操作をしたりするのに、スマホを経由する仕組みが採用されている。そのため足で登った階段のカウントや、睡眠状態の分析などさまざまな機能を実現しながら、機器本体は非常に小さく、装着しているのが気にならないほどのサイズになっている。

その後もIoTの進化は続き、アシュトンの唱えた「モノのインターネット」という世界は、彼の想定をはるかに超えた広がりを見せようとしている。そしていま、IoTを新たなステージへと進化させようとしているのが、ナノサテライト(nano satellite、超小型人工衛星)だ。
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小林 啓倫

経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。

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