アウトドアにも災害時にも! ライターやマッチ以外の火起こしツール4選

齋藤 千歳

Specialアウトドア・お出かけ使ってみた

火を起こそうと思っても着火道具が意外と家にない

使い捨てライターやマッチは、いざというときに本当に使えるのか不安

アウトドアが趣味の筆者。キャンピングカーがあるので、そこに災害時に必要なアイテムをある程度用意しているのですが、意外と困るのが着火道具です。

「着火ならマッチやライターでいいのでは」という意見もあるでしょうが、マッチやライターは自然発火すると非常に危険。季節によっては高温になる車には保管できません。また、マッチはしけてしまうことがありますし、使い捨てライターなどはガスが抜けてしまうこともあります。この使い捨てライターのガスは適切に保管すれば抜けないという記述も目にするのですが、筆者は長期保管していた使い捨てライターがいざというとき使えなかったという経験を何度もしているので、あまり信用していません。

そもそも最近はタバコを吸う人も減っていますし、電子タバコの普及でライターを持ち歩く人も少なくなりました。つまり今だと、万が一事故で無人島に大勢が流れ着いても、都合よく誰かがライターを持っていたりはしないわけです。

テレビで無人島生活の番組などを見ると、「火を起こす方法の確保」がどれだけ大切なのかはよく分かります。いますぐ無人島に行くことはなくても、被災時に備えて、火起こしツールだけでも用意しておきたいもの。そこで、安心して保管ができて、キャンプ時などに気軽に試せる着火アイテムとしてよく見かける「ファイアピストン」「虫眼鏡集光着火」「マグネシムファイアスターター」「プラズマライター」から数種類を実際に実際に試してみました。そこからおすすめできる商品4つを厳選して、ランキング形式でご紹介しましょう。

第4位:実用性はないけれど、火を付けるワザを楽しむ趣味のアイテム「PSKOOK ファイヤーピストン」

左から、 ファイヤーピストン、セリアで購入したチャークロス、ドラッグストアで購入した白色ワセリン

コンスタントに火が付くまで2時間以上! マスターすると人前で付けたくなる

最初に紹介するのはファイアピストンです。筆者が試したのは「PSKOOK ファイヤーピストン」(実勢価格2000円前後)。この製品には着火剤のチャークロスを自作するためのアイテムもセットになっているのですが、ファイヤーピストンを入れる缶が汚れて再度使えなくなるので、セリアにて110円で購入した「チャークロス」と、ファイアピストンの密閉度を上げるための「白色ワセリン」も用意しました。実際に火を起こすためには麻の火口も必要になります。筆者の購入した製品はこの麻の火口もセットに含まれています。

火を起こすだけで必要となるアイテムが多すぎるわけです。しかし、ファイアピストンにはロマンがあります。16世紀以前から東南アジアで使われていたというファイアピストンは圧気発火器とも呼ばれ、空気を圧縮して圧縮熱で着火する仕組み。身近なものではトラックなどのディーゼルエンジンが同じように空気を圧縮して圧縮熱で自己着火し動いています。

この空気の圧縮を手動で行って、ピストン内部の入れたチャークロスを発火させるのです。なにか魔法みたいでかっこいいではないですか。筆者は多少手間がかかっても、このファイアピストンでの圧縮熱での着火を行ってみたいと考えたわけです。

発火の理屈は極めてシンプル。密閉されたピストン状のファイアピストンを素早く押し込んで空気を圧縮、その圧縮熱で中に入れたチャークロスが発火するのです

このファイヤーピストンの発火の理由は極めてシンプル。密閉されたピストンの空気を素早く一気に圧縮すると発生した熱エネルギーが逃げ場を失い、ピストン内部に入れたチャークロスが発火するというもの。

素早く、一気に圧縮するために筆者は力任せに何度も、何度もファイヤーピストンを硬い場所に叩きつけるように、何度も着火に挑戦しました。しかし、残念ながら一向に火が付く様子がなく、ただ全身の筋肉が痛み、ピストンを叩きつけている手が痛くなるばかりでした。

そこですべての着火手順を見直し、力任せではなく、ひとつずつ丁寧に着火作業を行うことで劇的に着火の確率が上がることを発見しました。

結局2時間近くかけて、ファイアピストンで火種を作り、麻の火口に火を付けて、着火剤を燃やすことに成功しました

ファイアピストンで火種を作り、着火剤に火を移すまでの作業で筆者が気が付いたポイントは下記のとおりです。

1.ファイアピストンの各部にゆるみがないかを毎回確認
2.ワセリンなどをしっかり塗って密閉度を上げる
3.ファイアピストンの中に入れるチャークロスは指先で崩して、ふんわりと盛る
4.体重を掛けるようにして、できるだけ垂直にファイアピストンを素早く押し切る
5.ファイアピストンを開けて火種ができているかチェック
6.火種ができていない場合は中に入れたチャークロスがはみ出していれば撤去して、再度1.からの手順を繰り返す
7.火種ができたら麻の火口で包みながら、炎が上がるまで息などを吹きかけながら火を育て上げ、着火剤に火を移す


筆者はインターネットの記事やYou Tube動画なども参考に試行錯誤を繰り返したのですが、着火剤に火を付けるところにまでたどり着いたのは2時間近くたってからです。しかも、無駄に力を入れていたので、その後数日は腕などの上半身が筋肉痛に……。

1度、ファイアピストンで火種を作れるようになると、着火しやすいように適量をフワッと盛ったチャークロスを何度も叩きつけるのではなく、素早く空気を圧縮して発火させる方法が理解できるのですが、ここにたどり着くまでがひと苦労。力ではなく丁寧に、しっかりと一つ一つの作業を行い、きっちり空気を圧縮するのがポイントです。2回に1回程度の確率で火種を作れるようになったころには2時間以上が経過していました。

ファイアピストンで作った火種を麻の火口に移すと、しばらくは燃えているのが分かるのですが、炎が上がるところまで育てる必要があります。これが思う以上に難しい。火種を麻の火口で包み込むようにしながら、息を吹きかけたり、振って空気を通したりしながら、燃え上がるまで育てるのですが、途中で消えてしまうことも度々。こちらもかなり経験がものをいう技術などで何度も練習するしかありません。やけどには要注意です。

結局2時間以上かけて、腕や肩はその後数日に渡る筋肉痛になりながら、かなりの確率で、ファイアピストンで火を起こすことが可能になりました。指先はチャークロスを何度もほぐす作業でまっ黒です。それでも「私はファイアピストンで火が起こせる」という達成感は、かなりのもの。誰かとキャンプに行ったら、絶対人前で披露することを楽しみにしている自分を発見しました。まさに趣味のアイテムです。

ただしファイアピストンを1度も実際にテストすることなく、非常用に備蓄することを、筆者はまったくおすすめしません。火を付けるための趣味の品とすら感じたほどです。しかし、レジャーとして楽しみながらマスターしておくのはかなりおすすめといえます。

第3位:予想以上に楽しいので、ぜひ一度試してほしい「太陽光でつける火おこしセット」

セリアで購入した、太陽光でつける火おこしセット(実勢価格110円)。セット内容は集光板、麻ひも、黒色用紙

セリアで購入したエルオー製のスグレモノ! 子どもといっしょに楽しみたい

100均好きで時折意味もなく100均をパトロールするクセがある筆者が、最近セリアでみつけた火起こし道具が「FIRE STARTER By SOLAR ENEGY 太陽光でつける火おこしセット」(以下「太陽光でつける火おこしセット」)です。集光板、麻ひも、黒色用紙がセットで実勢価格は110円。子どもとキャンプに行く予定があるなら、取りあえず買っておける値段です。

大きさはセットで包装された状態で約18×10cm、厚さは5mm程度。車のグローブボックスに入れておいて邪魔にならないサイズです。セットの麻ひもをほぐして繊維状にして火口を作り、これを適当な大きさに切った黒色用紙で、のり巻きにする要領で包み、火ばさみなどで固定、集光板で太陽光が1点の集中するように角度や距離を調整して光を当て黒色用紙と麻の繊維でできた火口を着火させます。

小学生のときに多くの方が理科の実験で行ったであろう虫眼鏡での集光実験で火を起こすイメージといえます。気温が低かったり、湿度が高かったりするとうまく着火しないことがあるので注意が必要です。また、集光板で集まる光が強いので必ずサングラスを着用して行う必要があります。

麻ひもをほぐして作った麻繊維の火口を適当な大きさに切った黒色用紙でのり巻き状に包んで火ばさみなどで固定。この状態で黒色用紙に太陽光を集めて着火します

レンズや集光板で太陽光を集めて着火を行うのなんて、まさに小学校の時以来です。いや、小学校の実験では黒い紙を焦がすだけで着火までは行わなかった記憶があります。

しかし、まったく取り越し苦労でした。太陽を集光するとかなり簡単に火口に着火してくれました。ただし、晴れとはいっても雲の多い日だったので、太陽の雲がかかると集光した光の力は大幅にダウン。雲の切れ間のタイミングなどをみながら着火までは数分といった感じです。

着火までの必要な時間などは、その日の雲の量、気温、湿度といった要素の大きく影響を受けます。しかし、ある意味集光板を固定してしまえば太陽の光が集まるのを待つだけなので、非常にラクに着火できる方法といえるでしょう。

最終的には着火剤で黒色用紙を固定して、たき火台の上に火口などを置いたまま集光。この数秒後に火口が燃え上がり、着火剤にも火が付きました

天気や太陽の状態に大きく影響を受けますが太陽光でつける火おこしセットは夏場のキャンプなどではマグネシウムファイアスターターよりも少ない労力で着火剤に火を付けることもできそうです。思っていたよりもかなり実用的。太陽の力は本当にすごいと実感することができます。

そういった意味でも「太陽光でつける火おこしセット」は、子どもたちとキャンプに行った時に余裕があれば使用したい火起こしアイテムです。実勢価格も110円と非常にリーズナブルなので、いくつか買い置きして車のグローブボックスにマグネシウムファイアスターターと一緒に収納しておいてもよいかと思っています。実用性よりも火を付けることを楽しむためのアイテムの要素が強いですが、いざというときはきちんと着火の頼りにもなるスグレモノです。ぜひ1つ購入してみてはどうでしょうか。
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齋藤 千歳

フォトグラファー・ライター
北海道千歳市在住・千歳市生まれのフォトグラファー/ライター。キャンピングカーの「方丈号」から各種アウトドア、カメラ、レンズ、ガジェットに関する情報を発信したり、家族3人で北海道一周などしたりを楽しんでいる。

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