それらのペルチェベスト、冷却性能自体はとても高く、ペルチェデバイスの部分は結露するほどキンキンなのですが、直接デバイスが当たる場所とその周辺しか冷たさが届かないという気になる悩みもあることが確か。とはいえ、接触面全てをペルチェにしてしまうとバッテリーも持たなくなるし、排熱も大変です。
そんな悩みの解決策の1つとして6月30日、家電やガジェットの企画・開発・製造を手がけるShiftallから、新たな冷却方式「ペルチェチラー」を採用した水冷ウェア「ChillerX(チラーX)」が発表されました。発売は8月上旬を予定、価格は3万9900円(税・送料込、バッテリー別売)です。
最大の特徴は、ウェアの広い範囲に取り付けた水冷シート内に水を循環させ、2つのペルチェ素子で冷却する点です。常に冷たい状態の水が循環する、このペルチェチラー方式の採用により、従来の「点」での冷却から「面」での冷却を可能にしています。
実際に、その冷却性能はどこまで高くなったのでしょうか? 今回、試作機を借りて数日間試すことができたので、その使い心地などについてレポートします。

Shiftallの水冷ウェア「ChillerX」を装着した筆者
新次元の冷却性能を実感
水冷方式を採用するものの中には1~2万円台の製品もありますが、これらは氷水のボトルを取り付けて冷却性能を確保するスタイル。ボトル内の水が冷たいうちはいいのですが、水がぬるくなると冷却効果も失われてしまいます。
同社が採用したペルチェチラー方式は、水をペルチェ素子で冷却して電動ポンプで循環させる仕組みのため、ペルチェ素子が稼働している間は常に冷却性能が確保されます。
早速、実際の製品をチェックしてみましょう。今回借りた試作機は、正面から見ると腹部が完全に露出するショートベストのようなデザインを採用。ポケットなどはなく冷却機能に特化したつくりです。

正面から見るとショートベストのようなコンパクトなデザイン。ポケットなどは備えず、冷却機能に特化しています

背面にはかなり大型の排気ファンを備えます。すごく大きいので、とても目立ちます

ユニットのサイズは実測で縦/横約16cm、厚さは最大で約7cmほどでした

ベストの部分には排気ファンなどがないため、上からジャケットなどを着ることもできます

ただし背面の排気ファンは表に出す必要があり、上着の裾は畳まなければなりません

バッテリー接続部の手前にコントローラー
バッテリーの出力が足りない場合には「PWR」のLEDランプが赤く点灯。このLEDが点灯するバッテリーやACアダプターは利用できません。また、冷却が追いつかないような場面では「TEMP」のLEDランプが赤く点灯して、異常を知らせます。

バッテリーを接続すると「MAX」モードで動作を開始。中央の丸いボタンを押すことでモードが切り替わり、長押しで電源オフも可能です

接続したバッテリーやUSB Type-Cアダプターが合わない場合は赤色の「PWR」ランプが点灯して動作しない
もちろん、野外では別次元の冷却効果が体感できます。
冷却効率を上げるコツとしては、着用時にChillerXをとにかく体にピッタリとフィットさせること。本製品の胸部と腹部には固定するバックルがあるのでこれを留め、さらに肩部に付いているアジャスターも締め上げて、若干苦しさを感じるくらいピッタリとフィットさせて水冷シートと体への密着部分を増やすことで、より冷却効果が高められます。
ちなみにECOとMAXの両モードの冷却性能の差もチェックしてみました。MAXモードの方が冷えるのは確かですが、ECOモード利用時でも、従来の冷房服などと比較するとかなり冷却性能が高いため、暑いと感じた時だけMAXモードにして、冷えてきたところでECOモードに切り替えればバッテリーを長持ちさせることもできそうです。動作音については後ほど詳しく説明しますが、ECOモードもMAXモードも差はほぼありませんでした。
バッテリーは、腰部のベルトに装着する付属ポーチに入れて持ち運べるようになっており、無駄のないシンプルな構成です。これまでにもいろいろな冷房服を試してきた筆者ですが、実際にChillerXを試してみて、新たな次元に突入した製品といっても過言ではない、性能の高さを感じました。

肩部ベルトのアジャスターを引っ張ると肩口から背中までの部分を締め付けられます

バックルのベルトのアジャスターを引っ張れば胸部を締め付けられます。腰部のベルトも同様の仕組みで、密着度を高めるほど冷却効果が高まります

ベスト内部には広範囲をカバーするかたちで冷却シートが貼り付けられており、このシートの内部を冷却された水が循環して涼しくする仕組みです
バッテリー稼働時間についてもざっくりと調べてみました。公開されている仕様では容量2万5000mAhのモバイルバッテリーを使用して「ECO」モードで動作させた場合で、連続稼働時間は2.5時間となっています。2万mAhのバッテリーを使用して「ECO」モードで実際に動作時間をチェックしてみたところ、2時間30分の連続稼働ができました。「MAX」モード利用時には同じバッテリーを使用して、だいたい1時間15分程度でバッテリーを使い切りました。

バッテリーが付属しないので、USB PD 60W以上(20V 3A)のモバイルバッテリー、またはUSB Type-Cアダプターが必要です

池 紀彦
ゲーム&ガジェットライター
自ら触れて得た体感を形にする兼業ライター。ソフトウェア事業のディレクションと検証を行なう傍ら、パソコン雑誌編集部やAV機器メディア編集部を経て得た経験を活かし、パソコン、ガジェット、ゲーム、おもちゃなどのレビューを日夜各所で執筆。ThinkPadと程よい懐古物を好み、懐かしのゲームやパソコン、アニメ、漫画などをこよなく愛します。「やってみた」には定評あり。