GMOヒューマノイド・ラボ、初の社外開放へ──ヒューマノイドハッカソン「Humanoid Hack Tokyo」レポート

i4U編集部

AIGMOインターネットグループイベントテクノロジー
東京・渋谷のセルリアンタワーにある「GMOヒューマノイド・ラボ 渋谷ショールーム(以下、GMOヒューマノイド・ラボ)」で5月30・31日、ヒューマノイドロボット限定のハッカソン「Humanoid Hack Tokyo」が開催された。主催はサンフランシスコに拠点を置くロボットスタートアップのOrboh(オーボ)とStrike Robotで、同ラボが社外イベントに開放されるのは今回が初。

同ラボにはGMOインターネットグループGMO AI&ロボティクス商事(以下、GMO AIR)、GMO Various Roboticsが入居しており、今回はGMO AIRが運営協力として会場と機材を提供した。イベントの様子をレポートする。

GMO ヒューマノイド・ラボが社外イベントに開放されるのは今回が初。多くの学生やスタートアップの技術者らが集まった

2日間でヒューマノイドロボットの実機を動かす

ハッカソンとは、エンジニアやデザイナーらが短期間に集中して開発を行い、その成果を競うイベントだ。参加者同士の交流や技術検証、新規事業の創出の場として世界各地で開催されている。

ただ、今回のようにヒューマノイドロボットに特化したハッカソンは極めて珍しい。機体の調達や運用準備のハードルが高く、ハッカソン文化が根付くサンフランシスコでも、ヒューマノイド限定のハッカソンの事例はほとんどないという。

今回の会場となったGMOヒューマノイド・ラボは、複数台のヒューマノイドロボットを備える国内有数の研究開発拠点だ。参加する全チームが実機を使いながら開発に取り組める環境が整っており、今回の開催を可能にした。

ヒューマノイドロボットの研究開発拠点であり、ショールームとしても機能するGMO ヒューマノイド・ラボで初のハッカソンが開催された

使用機材はUnitreeのヒューマノイドロボット「G1」。テーマはG1を使ったアプリケーション開発で、「社会課題をヒューマノイドでどう解決するか」がコンセプトだ。VLA(Vision-Language-Action、視覚・言語・行動を統合したAIモデル)、テレオペレーション、モーションコントロール、LLM連携など開発形式は自由で、自作のロボットハンドや追加の道具の持ち込みも認められた。

審査では実機デモを重視し、配点は実機完成度50点、創造性20点、実用性15点、プレゼンテーション15点の合計100点満点。「ヒューマノイドが実際に動作しているか」「安定して再現できるか」が最も重視される評価項目となった。

また、Orboh代表の宮嶋壯太氏によると、参加チームの選考では「2日間で完成できそうか」という実現可能性を重視したという。

今回の開催の背景には、宮嶋氏とGMO AIRの藤間裕史氏との縁があった。両氏はかつてサンフランシスコで同じシェアハウスに住んでいたことがあり、そのつながりをきっかけに今回の取り組みが実現したという。

Orboh Inc.代表の宮嶋壯太氏(写真左から2番目)とGMO AIRの藤間裕史氏(写真右前面)

運び込まれるドリルドライバー、VRヘッドセット、そして“すしおけ”

では、ヒューマノイドロボットのハッカソンはどのような雰囲気だったのか。

会場の机に並んでいたのはプログラミングに用いるノートPCだけではない。マキタのドリルドライバーや養生テープが机に並び、「すしおけ」を抱えて現れたチームもいた。VRヘッドセットを装着して作業を始める参加者の姿も見られる。

ソフトウェアのハッカソンで主役となるのは「コード」だが、ヒューマノイドロボットの動作を開発するにはそれだけでは足りない。ハードウェアの調整や部品を固定する治具の製作、センサーや周辺機器との連携など、実機を前提としたロボティクス開発ならではの光景が広がっていた。

大きなきねを装着し、すしおけの前にたたずむG1。「デモンストレーションで使う餅は、どこで調達しようか」といった議論も交わされていた

各チームのアプローチも実にさまざまだ。強化学習を用いてロボットの動作を学習させるチームがある一方で、音声認識と画像認識を組み合わせたアプリケーション開発に取り組むチームもあった。

ヘッドセットでの操作の傍らでは、シミュレーター上での機械学習が行われていた

会場では英語、中国語、日本語が入り交じり、活発な議論が続く。国際色豊かな雰囲気のなか、参加者たちはそれぞれのアイデアの実現に向けて開発を進めていた。

また、UnitreeのトップエンジニアであるEnze Li氏も会場を訪れ、開発中のチームに技術的なアドバイスを提供した。Li氏は最終審査にも参加し、各チームの成果を見守った。

「その日のうちに動かせるのはレベルが高い」

会場には、GMO AIRのリサーチエンジニアである滝澤照太氏、森下真成氏がアドバイザーとして参加。開発中のチームに助言を行うだけでなく、必要に応じて3Dプリンターで部品を製作するなど、開発を支援した。

滝澤氏は、「開始から2〜3時間で実機を動かし始めているチームもあり、驚いた」と振り返る。ヒューマノイドロボットの開発は環境構築や機体の理解だけでも時間を要することが多く、短時間で実装までたどり着いた参加者たちを高く評価した。

一方、森下氏はヒューマノイド開発そのものの難しさに触れる。

「まずドキュメントを読み込み、機体の仕様を理解して動かせるようになるまでが大変。その日のうちにロボットを動かしている時点でレベルは高いと思う」(森下氏)

また、滝澤氏は「ハッカソンは技術力に加え判断力も求められる。2日間で成果物を完成させるには、どこを作り込み、どこを割り切るかの判断が欠かせない」と指摘する。近年は生成AIによるコーディング支援も進み、アイデアを短期間で実装へ落とし込みやすくなっていることが、今回の開発を後押ししたという。

チームAG1のメンバーをサポートするGMO AIRシニアリサーチエンジニア滝澤照太氏(写真左)

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