「eスポーツ」って何?普通のゲームとは違うものなの?

岡安 学

Specialインターネットカルチャーゲーム

ゲームはあくまでも競技のためのツール

eスポーツの場合、ゲームをする目的は“自身の向上”にあります。つまり人と対戦する以上、勝ち負けがあるので、勝てるようになる、自分が強くなり良い対戦結果を残すことが目的です。ですから、eスポーツプレイヤーにとってゲームは、ゲーム側が設定したゴールという壁を超えるためものではなく、対戦相手と競い合って強くなるためのツールなのです。

筆者もプレイしている『SFV』を例に挙げてみると、ゲームとして普通にプレイするのであれば、「ARCAADE」モードでラスボスを倒すことが目的です。自分の使うキャラクターの特性を見極め、相手のキャラクターの動きや弱点をつき、倒します。

しかし、eスポーツとしてにプレイするのであれば、先の情報に加え、攻撃方法を組み立て精度を高め、対戦相手のクセを知るなどの読み合いや有利な戦術を考えていかなければなりません。もちろん、対戦相手が変われば別の読み合いや戦い方を考えなければならず、基本的に終わりのない道のりとなります。eスポーツが、スポーツの名を冠しているゆえんだといえるでしょう。

2019年に韓国で開催された「リーグ・オブ・レジェンド」の世界大会

eスポーツの日々のプレイは、遊びではなく鍛錬

eスポーツタイトルであっても、ゴールを目指したゲームプレイが目的の場合、対戦や試合がプレイ時間の大半を占めると思います。しかし、eスポーツプレイヤーとしてタイトルと向き合っているのであれば、トレーニングモードなどで反復練習をすることにも時間を割くことになります。

例えば、対戦格闘ゲームの場合なら、コンボといわれる連続技を確実に繰り出せるようにしたり、相手の攻撃後の隙の大きさを、攻撃の種類によって見極め、隙に応じた反撃をするように知識を得たりもします。シューティングゲームの場合なら、いち早く狙いを定めて相手よりも早く撃てるようにしたり、武器の特性を覚えて戦い方を変化させられるように練習をします。つまり、スポーツの練習と同じで、基礎練習や反復練習を繰り返し行うことで、腕を上げていくわけです。

もちろん、試合での感覚や実践でのスキル向上が重要なのはいうまでもありません。好きなゲームをプレイしながら、厳しい訓練を課す部分もあるのが、eスポーツをプレイすることでもあるわけです。

それだけ苦労して培ったスキルを維持し活かすために、eスポーツでは、基本的に同じタイトルを繰り返しプレイする点も特徴かもしれません。世界一プレイされているeスポーツタイトルである『リーグ・オブ・レジェンド』は10年以上プレイされていますし、先の『SFV』もリリースから5年が経過しています。ストリートファイターシリーズとして考えると30年以上プレイされています。

その点においては長期サービスとなりやすいスマホのソーシャルゲームと似ていますが、ソーシャルゲームは定期的に新しいイベントを開催することで、プレイヤーの熱量が下がらないようにゲーム側が工夫を続けている点が異なります。つまり、プレイヤー自身の技術の向上とは別なところに長期間遊び続ける要素があり、似て非なるものといえます。

eスポーツは、同じゲームで例えると、将棋や囲碁などに近いといえるでしょう。将棋や囲碁はゲームシステムがまったく変化することはありません。しかし、プロを目指したり、アマチュアながら上達を願う人は、一生をかけて指し続け、腕を磨いていくわけです。たかがゲームでありながら、単なる遊びに留まらないのは、ここに理由があります。

本来1度クリアしてしまえば終わってしまうゲームも、人によっては、さらにやりこみをし、何度も繰り返しプレイする人はいます。多くの人がそのタイトルをやり込んでいる場合、ゲームのクリア時間を競いあう競技すらあります。いわゆる「リアルタイムアタック(RTA)」です。eスポーツとはちょっと毛色が違いますが、ゲームを使って競い合うと言う意味では、これもeスポーツかもしれません。しかし個人でプレイし、対戦者と競い合っているのでなければ、ただの修行に近いものとして見られるため、RTAはeスポーツとはいえないわけです。

プレイヤーの成長こそが目的

eスポーツは最近、ようやく高校生大会、大学生大会が開催され始め、職業としてのプロeスポーツ選手も確立しつつあります。プロeスポーツ選手を目指すのであれば、単純にゲームを楽しんだり、たまたまゲームがうまいで済む状況ではなくなっています。

プロeスポーツ選手への足がかりとして大会で好成績を残すのは、甲子園を目指し、プロ野球選手を目指すのと一緒なわけです。野球自体、つまりゲーム自体を楽しむレベルを超えています。会社の付き合いで始めたゴルフをハンデ1桁まで行けるように努力を重ねている人と、気の置けない仲間と一緒にコースを回っているだけで楽しいと感じている人とは大きく目的が違います。

eスポーツで求められていることはプレイヤーの成長です。自分の腕前が上がることは、達成感もあり、それが楽しみにつながります。そのために、日々の練習や反復が必要になってきます。その結果はゲームがうまくなることで、たかがゲームにリソースを割くのはナンセンスだと思う方もいるかと思います。しかし、鍛錬と成長の過程を体験することは、他のスポーツカテゴリーと同じく、自分の内面の成長をも実感できる行為と言えるでしょう。

またeスポーツが上達することで、同じように上達を目指している人たちと共感し、さらに競い合うことができるようになります。今は社会人サークルとしてのeスポーツサークルやイベントもあり、他社他業種との交流のツールとしても機能しています。

さらにeスポーツは、リアルなスポーツと違って大きく身体を動かす必要がありませんので、プレイヤーの年齢や性別による体格などの制限があまりないと言われています。老若男女、障害の有無を問わずプレイできるので、高齢になっても続けられます。つまりeスポーツは、他者との競い合い、そして自分の成長を長い間楽しむことができる「スポーツ」なのです。
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岡安 学

ライター・eスポーツジャーナリスト
eスポーツを精力的に取材するフリーライター。ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランスに。さまざまなゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行う。関わった書籍数は50冊以上。現在は、Webや雑誌、Mookなどで活動中。近著に『みんなが知りたかった最新eスポーツの教科書』(秀和システム刊)、『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。Twitter:@digiyas

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