帰りの電車でぐったり……入試は、受験生にとっても試験監督者にとっても緊張なのだ
共通テスト1日目、ついに予定されていた全試験が終了! 詳細は省くが、1日目ラストの英語リスニングテストなんて、ICプレーヤーを配布したり使い方を間違いなくレクチャーしたり回収したり、大教室だとそれも大変なのだ。
正確にカウントした解答用紙などを入試本部へ届け、教員控室である大講義室へ戻る。ペットボトルに残ったお茶を飲み干しながら、はあ、やれやれ、と天井を仰いだ。これで帰れる……はず。だがどうしたことか、解散していいとのアナウンスが降りてこない。200人近い試験監督たちがざわつき始めた。入試監督における最大のエラー、「受験者数と回収された解答用紙の数が合わない」という事態が発生したのだ。
解答用紙の数が合わないと、試験監督は試験会場からの退出を許されず、帰れない。本部では何度も精査が行われ、30分ほどの足止めを食らって不穏な空気が漂う中、やがて本部スタッフのアナウンスが響いた。「●●番教室の監督ご担当の、●●先生と●●先生はいらっしゃいますか?」という呼び出しに、当該教員たちは青ざめた顔で立ち上がって応じる。「他の先生方は、本日は解散していただいて結構です。お疲れさまでした」。ようやく解放されたが、呼び出された先生たちと入試本部スタッフは、どこかに紛れた解答用紙が見つかるまで探し続けたはずだ。それが入試の厳正さなのである……(筆者注:この後まもなく、解答用紙は無事に発見された)。
や、やっと解散した……。他の先生の手前、タクシーは捕まえられないので、疲労困憊の足を引きずりながら徒歩20分の「最寄駅」へと向かう。「最寄」という言葉が皮肉に思えるほどの距離……。しかし、1日の緊張から解き放たれた今なら、埼玉の住宅街はわりといい雰囲気に感じられた。ちらほら目に入る駅前のオシャレ居酒屋や小さなバルに「ここまで疲れていなかったら、ちょっと飲んで帰ってもいいのに……」という思いが頭をよぎる。が、今日は素直に帰路につくことを選択。だって埼玉から神奈川って遠いんだもん。
やっと座れた電車の中で、1日を振り返りながらしみじみと噛み締める。「入試は、受験生にとっても試験監督者にとっても緊張なのだ」と。受験生たちが必死に解答用紙と格闘している間、私たち試験監督もまた別の角度で緊張し格闘していた。1つのミスも許されない責任感、受験生たちの将来がかかっているという重圧、そして何時間もの集中力の維持(10代の受験生たちの気力体力をはるか昔に失った中高年なのに)。すべてが終わった今、一気に押し寄せてくる疲労の中で、解答用紙を数えるのに使った滑り止めの指サックがバッグのポケットから出てきたのをぼんやりと眺めながら、「先生たちはみんなを見守っているんだよ……」と、心の中でつぶやく。
そういえば今日一緒だった米国人の先生は、共通テストの試験監督に2日とも参加するためにさいたま市内のホテルを取って臨んでいる、って話してたなぁ。それも自腹よ。健やかなコンディションで試験監督の任に当たるために、自腹でホテル取ってまで参加するなんて、本当にいい先生だよね……見習おう。
揺れる電車に身を任せ、2月本試の試験監督はどんなんかなぁと想像したけど、秒で寝落ちした。大変だったけど実はすごく楽しかったんです、誰か映画やドラマにしてくれないかなぁ。今年の学びと教訓を反映し、来年はさらに正確で迅速な配布・回収およびカウント能力を備えた「試験監督の鬼」になりたい私である。
正確にカウントした解答用紙などを入試本部へ届け、教員控室である大講義室へ戻る。ペットボトルに残ったお茶を飲み干しながら、はあ、やれやれ、と天井を仰いだ。これで帰れる……はず。だがどうしたことか、解散していいとのアナウンスが降りてこない。200人近い試験監督たちがざわつき始めた。入試監督における最大のエラー、「受験者数と回収された解答用紙の数が合わない」という事態が発生したのだ。
解答用紙の数が合わないと、試験監督は試験会場からの退出を許されず、帰れない。本部では何度も精査が行われ、30分ほどの足止めを食らって不穏な空気が漂う中、やがて本部スタッフのアナウンスが響いた。「●●番教室の監督ご担当の、●●先生と●●先生はいらっしゃいますか?」という呼び出しに、当該教員たちは青ざめた顔で立ち上がって応じる。「他の先生方は、本日は解散していただいて結構です。お疲れさまでした」。ようやく解放されたが、呼び出された先生たちと入試本部スタッフは、どこかに紛れた解答用紙が見つかるまで探し続けたはずだ。それが入試の厳正さなのである……(筆者注:この後まもなく、解答用紙は無事に発見された)。
や、やっと解散した……。他の先生の手前、タクシーは捕まえられないので、疲労困憊の足を引きずりながら徒歩20分の「最寄駅」へと向かう。「最寄」という言葉が皮肉に思えるほどの距離……。しかし、1日の緊張から解き放たれた今なら、埼玉の住宅街はわりといい雰囲気に感じられた。ちらほら目に入る駅前のオシャレ居酒屋や小さなバルに「ここまで疲れていなかったら、ちょっと飲んで帰ってもいいのに……」という思いが頭をよぎる。が、今日は素直に帰路につくことを選択。だって埼玉から神奈川って遠いんだもん。
やっと座れた電車の中で、1日を振り返りながらしみじみと噛み締める。「入試は、受験生にとっても試験監督者にとっても緊張なのだ」と。受験生たちが必死に解答用紙と格闘している間、私たち試験監督もまた別の角度で緊張し格闘していた。1つのミスも許されない責任感、受験生たちの将来がかかっているという重圧、そして何時間もの集中力の維持(10代の受験生たちの気力体力をはるか昔に失った中高年なのに)。すべてが終わった今、一気に押し寄せてくる疲労の中で、解答用紙を数えるのに使った滑り止めの指サックがバッグのポケットから出てきたのをぼんやりと眺めながら、「先生たちはみんなを見守っているんだよ……」と、心の中でつぶやく。
そういえば今日一緒だった米国人の先生は、共通テストの試験監督に2日とも参加するためにさいたま市内のホテルを取って臨んでいる、って話してたなぁ。それも自腹よ。健やかなコンディションで試験監督の任に当たるために、自腹でホテル取ってまで参加するなんて、本当にいい先生だよね……見習おう。
揺れる電車に身を任せ、2月本試の試験監督はどんなんかなぁと想像したけど、秒で寝落ちした。大変だったけど実はすごく楽しかったんです、誰か映画やドラマにしてくれないかなぁ。今年の学びと教訓を反映し、来年はさらに正確で迅速な配布・回収およびカウント能力を備えた「試験監督の鬼」になりたい私である。

河崎 環
コラムニスト・立教大学社会学部兼任講師
1973年京都生まれ神奈川育ち。慶應義塾大学総合政策学部卒。子育て、政治経済、時事、カルチャーなど多岐に渡る分野で記事・コラム連載執筆を続ける。欧州2カ国(スイス、英国)での暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、政府広報誌などに多数寄稿。ワイドショーなどのコメンテーターも務める。2022年よりTOKYO MX番組審議会委員。社会人女子と高校生男子の母。著書に『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)など。