「ChatGPT」ってどんなもの? 話題の対話型AIから考える人間とAIの向き合い方

Jun Fukunaga

AISpecialカルチャークリエイターテクノロジー映画・音楽

誤情報や偏見が示されるという問題点や人間の仕事を奪うという懸念も

ただ、そんなChatGPTにももちろん制限はある。例えば、問題点として指摘されているひとつは、質問の答えにまつわるものだ。ChatGPTの回答は、一見するともっともらしく思えるものが多い。しかし、実際には全く意味を成さなかったり、明らかに間違った情報が含まれることもあり、エンドユーザーはそこにも十分注意を払う必要があるだろう。

また質問があいまいだった場合、ChatGPTはその質問の意味を問い返す代わりに推測しようとするため、質問への回答が想定していなかったものになることもあるとZDnetが指摘している。実際にこの問題を受けて、プログラミング関連の開発者向けQ&Aサイトの「Stack Overflow」は、12月5日(米国時間)にChatGPTが質問を受けて生成した回答の投稿を一時的に禁止。ChatGPTによる回答には間違っているものが多く、「ユーザーにとって実質的に有害」だとしている。

その他にもChatGPTのようなAIプログラムは、人間が作った画像や文章を統計的な方法で機械学習することから、事実をねつ造したり、ヘイト発言や偏見を含む文章を生成したりする問題も抱えている。ChatGPTに関しても、すでに虚偽の内容や偏見を示すことがエンドユーザーから報告されている。

また別の問題点として挙げられるのが、ChatGPTに限らず、Stable DiffusionやMidjourney、mimicなど多くのAIプログラムに対して寄せられる、「人間の知性や仕事を奪うかもしれない」という懸念だ。ChatGPTの場合であれば、あらゆるトピックについて、数秒で効率的に記事を作成できるため、人間の書き手が不要になる可能性があるという指摘や、学生がカンニングをしたり、適切な文章の書き方を学ぶのを避けたりするのが容易になるという指摘がある。

人間の可能性を拡張させるツールとして捉えてみる

そのことを踏まえて、AIの使い方として考えたいのが、AIを万能の存在として捉えるのではなく、あくまで人間の可能性を拡張させる便利なツールとして利用するということだ。

例えば、音楽業界では、AIが音楽を作るAI作曲サービスがあるが、このようなサービスは、先述のように人間から作曲の仕事を奪うという懸念を持つ人は一定数いる。しかし、その一方で、ソニーコンピュータサイエンス研究所が開発する「Flow Machines」のように人間とAIが共作することを念頭に置いた人間の作曲を支援する作曲アシストツールなども存在する。

AI作曲アシストツールは、音楽制作の知識がなくても、曲の雰囲気などユーザーの設定に沿ってAIがフレーズを自動で生成してくれる。ただし、それをそのまま使うかどうかを判断するのは人間に委ねられる。つまり、AIによって提案されるアイデアを受けて、人間がその判断を下すことができるため、作曲の過程には人間とAIとの対話がある。

またAIが生成したフレーズを後から手動で修正を加えることができるなど、人間の手を入れる余地もある。そのため、AI作曲アシストツールのメリットは、専門知識がなくてもAIの支援を受けることで作曲が可能になるというだけでなく、自分では考えつかない作曲のアイデアを得ることができるなど、専門家のクリエイティブを支援するという面でもある。

筆者はライター業でも同じようにコラムやエッセイなどのライティングをアシストしてくれるAI支援ツールが欲しいと以前から思っていたのだが、そう考えるとChatGPTは、そのようなライティングのアシスト役として活用できる可能性もある。

ChatGPTでは、特定のキーワードを入力することで、AIにちょっとしたエッセイを一篇まるまる書かせることもできる。しかし、そういったフルオートに振り切った使い方だけでなく、例えば、ライティングのアイデアとして、自分が書きたいエッセイのアウトラインや構成案を提案してくれるアシスタントとして活用してみるのはどうだろうか? このような使い方をすれば、ChatGPTの提案を参考にすることで、自分では考えつかなかったアイデアを発見したり、それを発展させて、自分のコンテンツにしていくこともできるだろう。

またライティングを本業としている場合は、執筆のためのアイデアを練る際の時短にもなり、より効率的に仕事をこなせるようになるかもしれない。このような視点から見れば、AIは人間の仕事を奪うものというネガティブな捉え方だけでなく、あくまで人間の可能性を拡張してくれる便利なツールとして、ポジティブな捉え方もできるのではないだろうか。

ChatGPTを含め、今後のAIの発展の可能性については、開発者の倫理観やそれに対応する法整備など、悪用されないための仕組みが当然求められる。しかし、それらを使うエンドユーザーもどのようにAIと向き合っていくのかを考えていくべきだろう。包丁のような刃物は使い方を誤れば人を傷つけるが、正しく使えば便利に料理が作れる調理道具だ。そのことをAIに置き換えて考えていくことで、自分たちにとって、最もメリットがあるAIの活用方法を見いだせるようになるはずだ。
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Jun Fukunaga

ライター・インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はバーチャルライブ関連ネタ多め。DJと音楽制作も少々。

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