さて、私は今「開催中」と書きましたが、「彫刻される劇場」のことを正しく述べるなら「上演中」が適切かもしれません。
神奈川芸術劇場はその名が表すとおり、舞台芸術を上演・企画する文化施設です。ちょうど今は一番大きなホールで劇団四季が『マンマ・ミーア!』を上演中。歌って踊って泣いて笑っての、バキバキのミュージカルです。
そんなバキバキな舞台芸術空間の、普段は稽古や小さな公演で使用されるスタジオや観客が行き交うアトリウムに、神奈川在住のアーティスト・三沢厚彦と棚田康司の木彫が並びました。
「彫刻される劇場」は神奈川芸術劇場にとって初の彫刻展。そしてこの施設の芸術監督は阿佐ヶ谷スパイダース主宰の長塚圭史。だったらフツウの彫刻展のハズがなかろう……ということで、行ってみることに。野心的で楽しい40分でした(そう、本展には『上演時間』があり、それが40分なのです。途中退場OKですが、つい長居したくなる)。
大人も子どもも、どんな方にもおすすめしたいですが、個人的には演劇経験者に強くおすすめします。特に演劇から足を洗った人間があの空間に身を置くと「ウワッ」と鳥肌が立つんじゃないでしょうか。私はゾクゾクしました。
ロビーで開演を待つ人たちと彫刻
『マンマ・ミーア!』を見に来たであろうお客さんが記念撮影をしていました。ちなみにKAATの周辺には明治・大正期の外国人居留地の遺構や神奈川県の重要文化財「旧横浜居留地48番館」が残されています
三沢厚彦『Animal 2012−01』(2012)。ボリュームたっぷりな樟(クスノキ)の木彫にカラフルな油彩のホワイトタイガー。目はらんらんと輝き、手足もぶっとくて強そうなんだが愛らしい
三沢厚彦『Animal 2012−01』(2012)を別角度から。こんなに愛らしいのに、表情といい腰回りのゴツさといい、こっちのハナシはあまり通じなさそう。野生生物っぽさを感じます
棚田康司『生える少年』(2011)。こちらも樟ですが、1本の木材から彫り出す「一木造り(いちぼくづくり)」と呼ばれる日本古来の技法で、例えば広隆寺の宝冠弥勒なども一木造りです。シャープで滑らかでとても繊細
階段にいたのは三沢厚彦『Animal 2007-03』(2007)。個人的にとても好きで思い出深い三沢作品です。KAATのお客さんと作品との距離が近い!
この近さから見上げられます。三沢厚彦『Animal 2007-03』(2007)
三沢厚彦『Animal 2007-03』(2007)。お尻も太ももも強そうでかわいい
写真左から:棚田康司『霊魂に就て・七』(2025)、三沢厚彦『Bird 2013-01』(2013)。アトリウムのあちこちに作品がいます。こちらは学芸員の方が「実はあそこにもいるんですよ」と教えてくれました。ちっさい!
「彫刻のカケラ」をお土産にいただきました。手のひらにのせて鼻を近づけると青くて清潔な香りがします。樟ってこんなにいい香りなんですね

花森 リド
ライター・コラムニスト
主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」、「Engadget 日本版」、「映画秘宝」などで執筆。
X:@LidoHanamori












