脳波計で脳をモニタリング、ポジティブな状態を維持してトレーニングへ
脳の動きを計測しているところ
では、具体的にはどのようなことをやっているのだろうか?VIE STYLEの茨木氏によれば「ウェアラブル脳波計のVIE ZONEをドライバーにつけてもらい、脳波が出す微弱な電波を測定し、それを数値化していく。その数値で理想の脳状態になるようにドライバー達にトレーニングしてもらい、それをする前とした後で走りに違いが出てくるかを調べた」という。
ウェアラブル脳波計、耳に装着する部分が脳からの微弱な電波を受信する
ウェアラブル脳波計などと言われると、ある年代以上の人には「もしかしてヘッドギア?」という反応が出てくるかもしれないが、もちろんVIE STYLEが提供しているウェアラブル脳波計は、きちんとしたデジタル技術に基づいたセンシングデバイスになっている。耳にセンサー部分を装着し、そのセンサーにより脳波が出すという微弱な電波を計測し、それにより脳の動きを数値化するというデバイスになる。
現時点では、その電波が何を意味しているかというよりも、例えばドライバーがポジティブなことを考えている時などの脳波データに近づけられるようにイメージトレーニングしてもらい、走っている時も常にその状態で走れるようにする、そうしたトレーニングであるということだった。
現時点では、その電波が何を意味しているかというよりも、例えばドライバーがポジティブなことを考えている時などの脳波データに近づけられるようにイメージトレーニングしてもらい、走っている時も常にその状態で走れるようにする、そうしたトレーニングであるということだった。
「おなか空いた」よりも「おいしいとんかつ食べたい」がいい
実際、筆者も装着してみた。煩悩の塊であることに自負だけはある筆者は「お腹すいた、お腹すいた」というネガティブなことを考えている時には脳波が安定した状態にならず、「よし、この取材が終わったらとんかつ食べに行こう、とんかつとんかつ……」と思っていると安定するという感じだった。
このバーが安定するようになるべく良いことを考える……とんかつ以外に思いつかなかったのがお昼前の取材ならではか
このバーが安定するようになるべく良いことを考える……とんかつ以外に思いつかなかったのがお昼前の取材ならではか?
茨木氏に楽しいことを考えてくださいと言われて、ひたすら「とんかつ、とんかつ」と考えるといい方向に向かっていると言ってもらえたのだが、とんかつを想像していて良かったのかは微妙な所。しかし、ほめてもらえたのでよしとしておきたい。
茨木氏に楽しいことを考えてくださいと言われて、ひたすら「とんかつ、とんかつ」と考えるといい方向に向かっていると言ってもらえたのだが、とんかつを想像していて良かったのかは微妙な所。しかし、ほめてもらえたのでよしとしておきたい。
KDDIのレーシングシミュレータ
ベースはT3R Simulator
ハンドルコントローラはFANATEC ClubSport Steering Wheel RS
シフターはFANATEC ClubSports SHIFTER SQ
ペダルはHPP Sim1000 R2
シートはSPARCO PRO2000
ソフトウェアでさまざまな設定ができる
筆者のような適当な素人はともかく、プロのドライバーやeモータースポーツプレイヤーでの結果は、KDDIのWebサイトで公開されていて、2020年のFIA F4選手権(日本シリーズ)のチャンピオンでもある平良響(たいら・ひびき)選手や今やSUPER GTにも参戦している冨林勇佑(とみばやし・ゆうすけ)選手などのeモータースポーツ出身のリアルドライバーなどが参加して、脳トレを受けた被験者は実際にタイムなどが上がったりする結果がでたということだった。
そうした「脳トレーニング」の後で、筆者もKDDIのオフィスに用意してあったドライビングシミュレータシステム「T3R Simulator」に実際に乗ってみた。Intelが提供したゲーミングPCに、ハンドルコントローラは「FANATEC ClubSport Steering Wheel RS」、シフターは「FANATEC ClubSports SHIFTER SQ」、ペダルは「HPP Sim1000 R2」、さらにシートは本物のレーシングカーのバケットシートそのものである「SPARCO PRO2000」という本気のシミュレータ。インストールされていた「Assetto Corsa」をずっと走り込んでしまった。
VR HMDを装着してもプレイできる
まずは外した状態で設定
VR HMDで走っていると臨場感が増して本人は必死に走っているのだが、周囲からは面白いシーンの連続になる……
特にVR HMDをつけて走ると臨場感が半端なく、いやこれサーキット走ってるよね、今という実感がわいてくるほどだった。というか、このシステムが家にあれば毎日乗ってしまって仕事なんて手につかないだろう、という意味であまりに“キケン”なデバイスだと感じた。
この取材後、KDDIはこうしたレーシングコックピットとVR HMDをセットにした「リアルレーシングシミュレーター ドライブエックス au PAY マーケットモデル」を298万円(税込)という非常にお買い得な価格で販売しており、ちょっと株で一発当てた人などには頑張ればお小遣いで買えそうな値段だけにマジで見ない方がいいだろう、いいか、見るなよ、見るなよ……。
この取材後、KDDIはこうしたレーシングコックピットとVR HMDをセットにした「リアルレーシングシミュレーター ドライブエックス au PAY マーケットモデル」を298万円(税込)という非常にお買い得な価格で販売しており、ちょっと株で一発当てた人などには頑張ればお小遣いで買えそうな値段だけにマジで見ない方がいいだろう、いいか、見るなよ、見るなよ……。
冗談はともかく、プロジェクトを回している人も、実際に研究している人も楽しみながらやってるなというのが取材してみた筆者の感想だ。誰ですか、「本人達が楽しみたいからこんなシステム導入したのでしょ」なんて陰口言ってる人は? 仮にそうだったとしても良いじゃないか、当の本人達が楽しそうにやってないプロジェクトが、ほかの人から見て面白そうだなと思える訳はないのだから。
笠原 一輝
ライター
1994年よりテクニカルライターとして活動を開始。90年代はPC雑誌でライターとして、2000年代からはPC WatchなどのWeb媒体を中心に記者、ライターとして記事を寄稿している。海外のカンファレンス、コンベンションを取材する取材活動を1997年から20年以上続けており、主な分野はPC、半導体などで、近年はAIといった分野での執筆が増えている。