「卵の小さな発見」が常識をくつがえす
この研究は、「卵は、とがっている方を下にして落とすと割れにくい」という一般的な常識の誤解を明らかにしました。実際、卵の形の中で最も強度があるのは、先端のとがった部分です。これは、殻の曲率が高いほど殻の剛性(かたさ)が
増すためで、卵の頂点と底を指で挟んで押しつぶそうとしても、なかなか割れないはずです。一方で、卵を横向きに寝かせて、その脇腹の中央を押すと、それほど強い力を入れずとも、簡単に割れてしまいます。
しかし、この特性は落下時には逆に作用します。卵を割れずに着地させるには、衝撃をどれだけ吸収させるかが重要になります。
縦に落とした場合、卵は剛性が高いためある程度の衝撃には耐えられますが、それ以上の力が加わると割れてしまいます。一方、横向きであれば、殻が変形して衝撃を吸収する靱性が働き、「より高い場所から落としても、割れにくい可能性が高い」ことを示唆していると、コーエン氏らは述べました。
増すためで、卵の頂点と底を指で挟んで押しつぶそうとしても、なかなか割れないはずです。一方で、卵を横向きに寝かせて、その脇腹の中央を押すと、それほど強い力を入れずとも、簡単に割れてしまいます。
しかし、この特性は落下時には逆に作用します。卵を割れずに着地させるには、衝撃をどれだけ吸収させるかが重要になります。
縦に落とした場合、卵は剛性が高いためある程度の衝撃には耐えられますが、それ以上の力が加わると割れてしまいます。一方、横向きであれば、殻が変形して衝撃を吸収する靱性が働き、「より高い場所から落としても、割れにくい可能性が高い」ことを示唆していると、コーエン氏らは述べました。
当たり前の常識を疑ってみる
今回の実験からわかったのは、卵を落としたときに割れずに済むかは、「剛性(硬さ)」よりも「靱性(丈夫さ)」の方が重要だということです。そのため、立てて落とすよりも横向きの方が割れにくいという、これまでの常識を覆すような新たな事実を発見したといえます。
今回紹介した研究に少し似た事例として、コイントスの表と裏の出る確率が完全に50:50ではないという説を、実際に35万回以上トスして検証した論文が2023年に発表されています。
一般的には、コイントスによる結果は表も裏も同じ確率だと考えられています。だからこそ、スポーツで先攻・後攻を決めるときなどに、公平な方法として用いられています。
しかし、オランダ・アムステルダム大学の研究者はこの常識に疑問を持ち、46種類のコインと多くのボランティアを用意してトスの前後に上になる面が同じになる確率を調べました。そして、合計35万757回におよぶコイントスの結果として出た確率は、50.8%でした。つまり、コイントスの確率は、厳密には50:50ではなかったのです。
この結果は、2007年にアメリカの数学者パーシ・ダイアコニス氏が、コインの物理的な運動を解析して導き出した理論ともほぼ一致しています。つまり、トスの前に上を向いていた面が、トスの後にも上になる確率には偏りがあると実証されたのです。
もちろん、卵の割れにくい落とし方や、コイントスの確率の偏りの発見は、確かに世の中の常識を覆すものではありますが、コペルニクス的転回と呼べるほどの大発見ではないかもしれません。それでも、人びとが信じて疑わない「常識」が実は正しくないかもしれないと思ったら、それを確かめる姿勢から、隠れていた真実を手に入れることもあります。
どんな小さな発見でも、少なくとも居酒屋で誰かを感心させられる程度には、役立つウンチク話になるでしょう。そして、そうした研究の積み重ねが、やがて大きな発見につながる知識になるかもしれません。
今回紹介した研究に少し似た事例として、コイントスの表と裏の出る確率が完全に50:50ではないという説を、実際に35万回以上トスして検証した論文が2023年に発表されています。
一般的には、コイントスによる結果は表も裏も同じ確率だと考えられています。だからこそ、スポーツで先攻・後攻を決めるときなどに、公平な方法として用いられています。
しかし、オランダ・アムステルダム大学の研究者はこの常識に疑問を持ち、46種類のコインと多くのボランティアを用意してトスの前後に上になる面が同じになる確率を調べました。そして、合計35万757回におよぶコイントスの結果として出た確率は、50.8%でした。つまり、コイントスの確率は、厳密には50:50ではなかったのです。
この結果は、2007年にアメリカの数学者パーシ・ダイアコニス氏が、コインの物理的な運動を解析して導き出した理論ともほぼ一致しています。つまり、トスの前に上を向いていた面が、トスの後にも上になる確率には偏りがあると実証されたのです。
もちろん、卵の割れにくい落とし方や、コイントスの確率の偏りの発見は、確かに世の中の常識を覆すものではありますが、コペルニクス的転回と呼べるほどの大発見ではないかもしれません。それでも、人びとが信じて疑わない「常識」が実は正しくないかもしれないと思ったら、それを確かめる姿勢から、隠れていた真実を手に入れることもあります。
どんな小さな発見でも、少なくとも居酒屋で誰かを感心させられる程度には、役立つウンチク話になるでしょう。そして、そうした研究の積み重ねが、やがて大きな発見につながる知識になるかもしれません。

Munenori Taniguchi
ライター。ガジェット全般、宇宙、科学、音楽、モータースポーツetc.、電気・ネットワーク技術者。
実績媒体:TechnoEdge、Gadget Gate、Engadget日本版、Autoblog日本版、Forbes JAPAN他
Twitter:@mu_taniguchi