「インターネットで稼ぐ」ということ
──ここからは、メディアも含めたインターネットサービスのあり方について、2人に聞いていきたいと思います。
<岩崎>
私が「窓の杜」に在籍していた頃の後半で、当たった壁が「売上・利益」でした。
窓の杜は、「Impress Watch」というIT系情報サイト群の1サイトなので、編集長になると全サイトのPVや売上を一覧で見られるんですね。当時の窓の杜は、サイト群の中でPVとしては上位集団にいるんですが、売上は中位集団。赤字ではありませんでしたが、PVも売上も上位のサイトと比べると、利益が少なかった。
当時のウェブ広告は、CCI*6が売っていたYahoo!のネットワークくらいしかネットワーク広告*7がない頃で、いわゆる手売り(サイトに直接出稿してもらう)がメインの時代でした。
窓の杜の売上が中位だった理由として、担当の営業さんから聞いていたのは「フリーソフトを探している人は、PC関連製品にあまりお金を払わない傾向があるので、広告が入りにくい」というもので、つまり手売りの広告を買ってくれる広告主があまりいないサイトだったんです。
ボランティア精神が好きで窓の杜に行ったのに、そのボランティア精神が仇になったかたちです。インプレスは、鷹木さんも言ってましたが、読んでもらうものを作るという熱量の高い会社だったので、利益が多くないことを責められたりはしませんでしたが、個人的には、インターネットのボランティア精神を愛していくべきかどうかが分からなくなりました。
とはいえ、ただ悩んでいてもどうにもならないので、利益の出し方、売上の上げ方を勉強したいと思うようになりました。そこで転職したのが、GMOインターネットグループなんです。
グループ入社後、一番最初に担当したのは、ブログサイトの「ヤプログ!*8」でした。広告はまだ掲載されておらず、その一方で「しょこたんブログ*9」が大変な人気で、第1弾の書籍が出る直前でした。そのトラフィックを無償でさばいていたんです。
最初の仕事はヤプログ!の収益化でした。当時は、GMOインターネットグループが米国のRSS広告配信サービスFeedBurner*10と業務提携しており、日本での独占販売権がグループ傘下にあったので、これを掲載するところから始めました。その後、FeedBurnerがGoogleに買収されたのに伴って、掲載広告をAdSenseに切り替え、さらにさまざまな広告手法を検討し、掲載し、ということを繰り返しました。時間はかかりましたが、最終的には黒字化にこぎつけました。
そのほかでは携帯電話向けの公式サイト事業を、ちょうどスマートフォン化の時期に担当しており、スマートフォン向けの公式サイトを立ち上げたり、利益もきちんと出せるサイト作りを体験しました。事業計画の書き方や、それを実行して現実にする手法など、いろいろ教わりました。
増収増益を繰り返しているGMOインターネットグループでは、売上利益の作り方を身をもって教わることができたので、本当に感謝しています。あの経験があったからこそ、その後のキャリアも作れたと思っています。
<岩崎>
私が「窓の杜」に在籍していた頃の後半で、当たった壁が「売上・利益」でした。
窓の杜は、「Impress Watch」というIT系情報サイト群の1サイトなので、編集長になると全サイトのPVや売上を一覧で見られるんですね。当時の窓の杜は、サイト群の中でPVとしては上位集団にいるんですが、売上は中位集団。赤字ではありませんでしたが、PVも売上も上位のサイトと比べると、利益が少なかった。
当時のウェブ広告は、CCI*6が売っていたYahoo!のネットワークくらいしかネットワーク広告*7がない頃で、いわゆる手売り(サイトに直接出稿してもらう)がメインの時代でした。
窓の杜の売上が中位だった理由として、担当の営業さんから聞いていたのは「フリーソフトを探している人は、PC関連製品にあまりお金を払わない傾向があるので、広告が入りにくい」というもので、つまり手売りの広告を買ってくれる広告主があまりいないサイトだったんです。
ボランティア精神が好きで窓の杜に行ったのに、そのボランティア精神が仇になったかたちです。インプレスは、鷹木さんも言ってましたが、読んでもらうものを作るという熱量の高い会社だったので、利益が多くないことを責められたりはしませんでしたが、個人的には、インターネットのボランティア精神を愛していくべきかどうかが分からなくなりました。
とはいえ、ただ悩んでいてもどうにもならないので、利益の出し方、売上の上げ方を勉強したいと思うようになりました。そこで転職したのが、GMOインターネットグループなんです。
グループ入社後、一番最初に担当したのは、ブログサイトの「ヤプログ!*8」でした。広告はまだ掲載されておらず、その一方で「しょこたんブログ*9」が大変な人気で、第1弾の書籍が出る直前でした。そのトラフィックを無償でさばいていたんです。
最初の仕事はヤプログ!の収益化でした。当時は、GMOインターネットグループが米国のRSS広告配信サービスFeedBurner*10と業務提携しており、日本での独占販売権がグループ傘下にあったので、これを掲載するところから始めました。その後、FeedBurnerがGoogleに買収されたのに伴って、掲載広告をAdSenseに切り替え、さらにさまざまな広告手法を検討し、掲載し、ということを繰り返しました。時間はかかりましたが、最終的には黒字化にこぎつけました。
そのほかでは携帯電話向けの公式サイト事業を、ちょうどスマートフォン化の時期に担当しており、スマートフォン向けの公式サイトを立ち上げたり、利益もきちんと出せるサイト作りを体験しました。事業計画の書き方や、それを実行して現実にする手法など、いろいろ教わりました。
増収増益を繰り返しているGMOインターネットグループでは、売上利益の作り方を身をもって教わることができたので、本当に感謝しています。あの経験があったからこそ、その後のキャリアも作れたと思っています。
<鷹木>
ちょうど先日、ドラゴンクエストの発売35周年というイベントがあって、鷹木も楽しんだんですけど、楽しみながら35年前のことも思い出していたんですね。ドラゴンクエスト買ったなあ、夜通しゲームして親に怒られたなーとか。
そこでふと思ったのは、そのドラクエの情報ってどこから得ていたのか、ということです。実は「週刊少年ジャンプ」からたくさん得ていたんですね。袋とじとか。堀井雄二さんの話を聞くと、初代のドラクエが150万本ぐらい売れて、攻略本が80万部ぐらい売れたとか。これは、その年に売れた本の上位に入ってくる部数です。
攻略本の値段が1部1000円だとして80万部ですから、いきなり8億円の売上ですよ。すごいなあ。ひるがえって今のゲーム攻略系のサイトの売上ってどうなってるんでしたっけ?と気になるわけです。GameWithの投資家向け情報を見てみると、年間だいたい30億円の売り上げがある。もちろん1つのゲームの攻略ではないものの、ポートフォリオとして30億円の売上げが上がっているのって、まあまあいい数字ですよね。
フィジカルな印刷物で勝負していた出版社からしたらインターネットの出現によって億単位の売り上げが消えて行ってしまったことになるわけで、インターネットって残酷だなって思いますが、一方、インターネット上でちゃんと受け皿ができていて、それなりのビジネス規模になっているのはいいですね。
《注》
*6 CCI:インターネット広告会社のサイバー・コミュニケーションズ(cyber communications inc.)。
*7 ネットワーク広告:広告配信会社が複数の広告主から広告を受注し、複数の広告掲載媒体による広告配信ネットワーク「アドネットワーク」を利用して配信する広告。
*8 ヤプログ!:無料の日記レンタルサイト「ヤプース!」を前身とするブログサービス。2020年1月末にサービスを終了。
*9 しょこたんブログ:タレントの中川翔子による公式ブログ。2004年11月にヤプース!で発信を開始、2005年9月に最初の書籍化がされた。2008年2月までヤプログ!が利用されていた。
*10 FeedBurner:2004年にサービスを開始したウェブフィードマネジメントプロバイダー。RSSフィード管理ツールを提供していた。Google傘下に入った後、2021年4月、新インフラへの移行に伴い7月からメンテナンスモードに入るとのアナウンスがあった。
ちょうど先日、ドラゴンクエストの発売35周年というイベントがあって、鷹木も楽しんだんですけど、楽しみながら35年前のことも思い出していたんですね。ドラゴンクエスト買ったなあ、夜通しゲームして親に怒られたなーとか。
そこでふと思ったのは、そのドラクエの情報ってどこから得ていたのか、ということです。実は「週刊少年ジャンプ」からたくさん得ていたんですね。袋とじとか。堀井雄二さんの話を聞くと、初代のドラクエが150万本ぐらい売れて、攻略本が80万部ぐらい売れたとか。これは、その年に売れた本の上位に入ってくる部数です。
攻略本の値段が1部1000円だとして80万部ですから、いきなり8億円の売上ですよ。すごいなあ。ひるがえって今のゲーム攻略系のサイトの売上ってどうなってるんでしたっけ?と気になるわけです。GameWithの投資家向け情報を見てみると、年間だいたい30億円の売り上げがある。もちろん1つのゲームの攻略ではないものの、ポートフォリオとして30億円の売上げが上がっているのって、まあまあいい数字ですよね。
フィジカルな印刷物で勝負していた出版社からしたらインターネットの出現によって億単位の売り上げが消えて行ってしまったことになるわけで、インターネットって残酷だなって思いますが、一方、インターネット上でちゃんと受け皿ができていて、それなりのビジネス規模になっているのはいいですね。
《注》
*6 CCI:インターネット広告会社のサイバー・コミュニケーションズ(cyber communications inc.)。
*7 ネットワーク広告:広告配信会社が複数の広告主から広告を受注し、複数の広告掲載媒体による広告配信ネットワーク「アドネットワーク」を利用して配信する広告。
*8 ヤプログ!:無料の日記レンタルサイト「ヤプース!」を前身とするブログサービス。2020年1月末にサービスを終了。
*9 しょこたんブログ:タレントの中川翔子による公式ブログ。2004年11月にヤプース!で発信を開始、2005年9月に最初の書籍化がされた。2008年2月までヤプログ!が利用されていた。
*10 FeedBurner:2004年にサービスを開始したウェブフィードマネジメントプロバイダー。RSSフィード管理ツールを提供していた。Google傘下に入った後、2021年4月、新インフラへの移行に伴い7月からメンテナンスモードに入るとのアナウンスがあった。
i4U編集部
i4U(アイ・フォー・ユー)は、新しい「情報」と「感動」と「笑顔」をお届けする、GMOインターネットグループのオウンドメディアです。有名メディアでの執筆・編集経験者による記事をお楽しみください。