教えて、USBってなんなの?(前編):テクニカルライター・笠原一輝さんに聞く

笠原 一輝

Special特集

質問:USB Type-A、Type-B、Type-Cの違いって何?

USB Type-AやUSB Type-Bという端子名は存在しない。正式にはUSB Standard-A、USB Standard-Bというのが端子の名称になる。

USBの初期の段階では、USB Standard-A端子、それにUSB Standard-B端子の2つだけだった。前者はPC側、後者がプリンターなどの機器側として規定されていた。しかし、いずれも携帯電話などのモバイル端末には大きすぎたので、USB Mini-A端子、USB Mini-B端子などの小型の規格が登場し、さらにそれでも大きいとなり、USB Micro-B端子が出てきたのである。

そのうちUSB Mini-A端子はほとんど使われずに消えて、USB Mini-B端子、USB Micro-B端子がそれぞれMini-USB、Micro-USBという通称で呼ばれるようになった。その後USB 3.0のMicro-USB端子なども登場し、複数のUSB端子が乱立する結果になってしまった。このため、ユーザーはPCのUSB Standard-AとUSB Micro-Bを接続する場合には、USB Standard-A-USB Micro-Bのケーブルを、USB Standard-AとUSB Mini-Bは……というように端子ごとにケーブルを用意する必要があったのだ。

その反省として新しく規定されたのがUSB Type-C端子。USB Type-Cは上下どちらの方向にも使えるようなリバーシブルな端子設計になっており、PCのようなやや大きめ機器でも、スマートフォンのように小型な機器でもどちらでも使えるようなコンパクトで薄型の端子である。USB Type-Cの登場により、以前のように同じUSBなのに複数の種類のケーブルがなければ対応できないという面倒はなくなっている。

なお、USB Type-CはUSB-Cと呼ばれることもあり、これは規格書の中で認められている。例えばAppleはUSB Type-Cと呼ばず、USB-Cと呼んでいるがそれは正しい呼称だ。ただし先ほど述べたように、USB Standard-AをUSB Type-AないしはUSB-Aと呼ぶのは通称であって、正式な規格書ではそうした呼び方はされていない。このため、より正確に従来型のUSB端子の意味で使う場合にはUSB Standard-Aと呼ぶべきだが、メディアなどではUSB Type-AやUSB-Aと通称を利用する方が多いのが現状だ。

質問:USB Type-CなのにUSB 2.1って何?

既に述べたとおり、USB Type-Cの仕様は端子とケーブルを規定しているオプション仕様であって、USBの電気的な仕様(USB Specification Revision x.x)からは独立している。このため、USB Type-Cという最新の規格の端子とケーブルでも、電気的にはUSB 2.0に準拠して転送速度が480Mbpsという実装はあり得るし、可能だ。

質問:USB 3.0/3.1/3.2? それともUSB 3.2 Gen 1/Gen 2/Gen 2×2?

これはUSB 3.xが同じUSB 3.x世代なのに、データ転送速度が2度も上がっていることによる混乱を受けたものだ。最初のUSB 3.0では5Gbpsの転送速度を実現し、その後USB 3.1で5Gbpsに加えて10Gbpsの転送モードを新たにサポートした。このため、USB 3.1がリリースされたときには、USB 3.1の5Gbpsのモードを「USB 3.1 Gen 1」と呼び、10Gbpsのモードを「USB 3.1 Gen 2」と呼んでいた。

ところがその後、USB 3.2において、さらに20Gbpsのモードを追加し、これをUSB 3.2 Gen 2x2と呼ぶことになり混乱に拍車がかかった。従来USB 3.1 Gen 1と呼んでいたモード(5Gbps)をUSB 3.2 Gen 1、USB 3.1 Gen 2と呼んでいたモード(10Gbps)をUSB 3.2 Gen 2と呼び変えたので、何がなんだかわからなくなってしまったのだ。

USBの規格を管理している非営利団体USB Implementers Forum(USB-IF)は、USB 3.1 Gen 1およびUSB 3.1 Gen 2という表記を今後は使わないという見解を打ち出しており、同じUSB3の世代でも5GbpsをUSB 3.2 Gen 1、10GbpsをUSB 3.2 Gen 2、20GbpsをUSB 3.2 Gen 2x2と呼ぶとガイドラインを出している。正式にはそのように呼ぶといいだろう。

質問:PDって何?

PDとはPower Deliveryの略で、「USB PD」とUSBの名称を付けた略称で紹介されることが多い。簡単に言ってしまえば、USB PDは従来はあまり大きな電力を流せなかったUSBに、より大電力を供給する仕組み。USB 2.xでは5V/500mA(2.5W)を、USB 3.0では5V/0.9W(4.5W)の電力しか給電することができなかった。USBができた当時は、マウスやキーボードなどの低電力の周辺機器をPCに接続する用途だと考えられていたため、この程度の供給電力で十分だったのだ。

しかし、徐々にUSB端子を使っての充電が一般的になってきた。きっかけは携帯電話の充電だ。携帯電話をUSBケーブルで接続して充電する使い方が一般的になってくると、供給電力が低く充電に非常に時間がかかるという状況が発生した。

そのため、端末メーカーなどが独自の急速充電の方法を提唱し、専用のACアダプタを供給するという事態になり、「異なるメーカー間で使える」というUSB本来の趣旨とは異なる方向に進化してしまったのだ。このため、USB-IFでも「USB BC(Battery Charger)Specification」という仕様を策定し、5V/1.5A(7.5W)の急速充電が可能となるよう仕様を追加している。

そうした中でさらに給電量を増やすべく作られたのがUSB PDの規格だ。USB PDでは5V/0.9AというUSB 3.xで規定している仕様に加えて、20V/5A(100W)のように電流だけでなく電圧を引き上げた給電モードを追加し、より大きな電力が必要なノートPCも充電できるようになった。今後登場する最新仕様では100Wを超える給電も可能になる見込みだ。

USB PDに対応したACアダプタを利用すると、ノートPCが汎用のACアダプタで充電できるようになるため、メーカーの専用充電器はもはや必要がない。仮に出先でノートPCのACアダプタを忘れてきたことに気が付いても、近くの家電量販店などで汎用のPD対応ACアダプタを購入すればそのまま利用できるのはユーザーにとって大きなメリットと言える。

質問:急速充電とは?

急速充電とは、「標準速度に比べて急速に充電できる」という意味だ。では急速に充電するにはどうしたらいいかといえば、USBのホスト(主にPCやACアダプタなど)から給電している電力量を増やせばよい。その電力量が標準より多い場合に、「急速充電」が可能になる。

では、標準の給電量とはどれくらいかと言えば、USB 2.0までは5V/0.5A(2.5W)、USB 3.xでは少し供給する電流が引き上げられて5V/0.9A(4.5W)なっている。これが標準の給電量で、それよりも多く給電できる場合に急速充電と呼んでいる。

具体的にはUSB BC(Battery Charger)Specification Revision 1.2(USB BC 1.2)、USB PD(Power Delivery) Specification Revision 3.1(USB PD 3.1)などで規定している追加の給電仕様がそれに当たる。

例えばUSB PDでは20V/5A(100W)などの供給が可能になり、充電時のロスなどを考慮に入れなければ、USB 2.0の2.5Wに比較すると40倍、USB 3.xの4.5Wに比較すると約22倍高速に充電できる計算になる。

なお、USBの標準規格で規定されている急速充電の仕様はこのUSB BCとUSB PDの2つだけで、これ以外の急速充電は、機器メーカーなどの独自規格。同一のメーカーの端末同士であれば使えるが、例えばAというメーカーの独自急速充電機能のACアダプタで、Bというメーカーの独自急速充電機能に対応した機器を充電しようとしても、通常のUSBの給電(2.5Wないしは4.5W)でしか充電できないという互換性の問題が発生する。そうしたことを避ける意味でも、メーカー独自の急速充電は徐々になくなる方向で進んでおり、USB BCとUSB PDに収束しつつある。(後編はこちら
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笠原 一輝

ライター
1994年よりテクニカルライターとして活動を開始。90年代はPC雑誌でライターとして、2000年代からはPC WatchなどのWeb媒体を中心に記者、ライターとして記事を寄稿している。海外のカンファレンス、コンベンションを取材する取材活動を1997年から20年以上続けており、主な分野はPC、半導体などで、近年はAIといった分野での執筆が増えている。

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