「長篠の戦いでは、徳川武田軍も織田軍も鉄砲を持っていた。勝敗を分けたのは鉄砲という武器そのものではなく、その使い方にあったのです」——GMOインターネットグループ代表取締役グループ代表の熊谷正寿氏は、イベント冒頭でこう語りました。この言葉は、AI時代のサイバー空間におけるセキュリティの本質を象徴しているかもしれません。
GMOインターネットグループは2026年3月5日、東京・渋谷のセルリアンタワーで「第3回GMO大会議 春 サイバーセキュリティ2026」を開催しました。本イベントは、政府が主導する「サイバーセキュリティ月間(2月11〜3月18日)」の関連イベントとして認定されています。産官学の識者が集まり、それぞれの立場から現代のサイバー空間のセキュリティを議論しました。その様子をレポートしましょう。
GMOインターネットグループは2026年3月5日、東京・渋谷のセルリアンタワーで「第3回GMO大会議 春 サイバーセキュリティ2026」を開催しました。本イベントは、政府が主導する「サイバーセキュリティ月間(2月11〜3月18日)」の関連イベントとして認定されています。産官学の識者が集まり、それぞれの立場から現代のサイバー空間のセキュリティを議論しました。その様子をレポートしましょう。
サイバー攻撃は「他人事ではない自分の事」——高市早苗総理大臣、小泉進次郎防衛大臣からのメッセージ
イベント冒頭では、高市早苗内閣総理大臣のメッセージが内閣サイバー官の飯田陽一氏により代読されました。高市総理は、サイバー空間が今や不可欠な基盤であり公共空間でもある一方で、行政機関や企業からの情報窃取、ランサムウェアによる医療活動の停止など、サイバー攻撃の脅威が激化している現状に言及しました。政府が主導する「サイバーセキュリティ月間」にも触れ、サイバー攻撃は「他人事ではない自分の事」であると指摘。暮らしを守るためには、国民一人ひとりの協力が不可欠だと呼びかけました。
高市早苗内閣総理大臣のメッセージを代読する、飯田陽一内閣サイバー官
小泉進次郎防衛大臣もビデオメッセージで登壇しました。小泉大臣は、現在のサイバー空間はもはや「純然たる平時」とはいえず、現実の安全保障に直結する重要な領域になっていると指摘。また、24時間体制で情報通信インフラを監視するサイバー防衛隊員の「静かな守り」によって、日本の平和と安全が支えられていると述べ、その働きをたたえました。
さらに、サイバーセキュリティは政府単独では成し遂げられず、民間企業の技術や学術機関の知見を結集する「産学官の連携」が不可欠だと強調しました。
さらに、サイバーセキュリティは政府単独では成し遂げられず、民間企業の技術や学術機関の知見を結集する「産学官の連携」が不可欠だと強調しました。
ビデオメッセージで出演した小泉進次郎防衛大臣
「爆速経営」と「堅牢な守り」は両立できるのか?
会場では複数のパネルディスカッションが行われました。1つ目のテーマは「『爆速経営』と『堅牢な守り』は両立できるのか?」です。LINEヤフー 代表取締役会長の川邊健太郎氏と、Boost Capital 代表取締役で元ヤフー代表取締役社長CEOの小澤隆生氏が登壇。経営の視点からAIというアクセルとセキュリティというブレーキの“せめぎ合い”について議論しました。
生成AIの登場がもたらした衝撃について、小澤氏はヤフー出身の視点から次のように振り返ります。
「これは検索されなくなるのではないかという強烈な危機感と同時に、大きなチャンスだという2つの感情が同時に湧き上がりました」
川邊氏もこの登場に大きな衝撃を受けたといいます。ChatGPTのような会話型インターフェースについて、「ユーザーインターフェース(UI)が根本的に変わるのはこれが初めて。プレイヤーも大きく変わる」と指摘しました。また、チャットベースのサービスであるLINEとの経営統合についても、「結果的によかった」と語りました。
生成AIの登場がもたらした衝撃について、小澤氏はヤフー出身の視点から次のように振り返ります。
「これは検索されなくなるのではないかという強烈な危機感と同時に、大きなチャンスだという2つの感情が同時に湧き上がりました」
川邊氏もこの登場に大きな衝撃を受けたといいます。ChatGPTのような会話型インターフェースについて、「ユーザーインターフェース(UI)が根本的に変わるのはこれが初めて。プレイヤーも大きく変わる」と指摘しました。また、チャットベースのサービスであるLINEとの経営統合についても、「結果的によかった」と語りました。
LINEヤフー 代表取締役会長 川邊健太郎氏
AIをアクセルにして「爆速経営」を進めるためには、セキュリティという「ブレーキ」と「ガードレール」が欠かせない点で、両氏の意見は一致しました。
川邊氏は「いいブレーキがあるれば爆速で進められる」と説明します。予測不可能な状況下では、人間がポリシーという「ガードレール」を設ける一方で、サイバーセキュリティのブレーキ役としてAIを活用することも述べました。
川邊氏は「いいブレーキがあるれば爆速で進められる」と説明します。予測不可能な状況下では、人間がポリシーという「ガードレール」を設ける一方で、サイバーセキュリティのブレーキ役としてAIを活用することも述べました。
Boost Capital 代表取締役 小澤隆生氏
AI時代を勝ち抜くためのポイントとして、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長のAI投資についても話題が及びました。両氏は、孫氏の情熱と先見性を高く評価します。
川邊氏は、AIの覇権を握る要素として「アルゴリズム、データ、GPU、電力という“オセロの四隅”を発見した。今もその中心にいるのはすごいこと」と語り、孫氏の慧眼を評価しました。
小澤氏は、OpenAIのサム・アルトマンCEOと孫氏の交流を引き合いに出し、「判断力に加え、要人と信頼関係を築く“人間力”は、AIの時代でも変わらない。アナログな気持ちになりました」と述べました。
両氏は、AI時代を勝ち抜くうえで重要なのは「(AIに向き合う)その人の情熱」ではないかと語り、議論を締めくくりました。
川邊氏は、AIの覇権を握る要素として「アルゴリズム、データ、GPU、電力という“オセロの四隅”を発見した。今もその中心にいるのはすごいこと」と語り、孫氏の慧眼を評価しました。
小澤氏は、OpenAIのサム・アルトマンCEOと孫氏の交流を引き合いに出し、「判断力に加え、要人と信頼関係を築く“人間力”は、AIの時代でも変わらない。アナログな気持ちになりました」と述べました。
両氏は、AI時代を勝ち抜くうえで重要なのは「(AIに向き合う)その人の情熱」ではないかと語り、議論を締めくくりました。
海外サービスに依存して大丈夫?AI基盤の依存構造と日本のセキュリティ戦略
続いてのパネルディスカッションでは、日本におけるAI基盤の依存構造とセキュリティ戦略が議論されました。IPA 産業サイバーセキュリティセンター シニアエキスパートの登大遊氏と、GMO Flatt Security 取締役 Co-CTOの米内貴志氏が登壇し、GMO サイバーセキュリティ by イエラエ 執行役員 CTOの小池悠生氏がモデレーターを務めました。
現在話題となっている生成AIサービスの多くは海外企業によるものです。日本が生成AI活用で“独立”するためには、どのような課題があるのでしょうか。
歯に衣着せぬ発言でエンジニアからの支持が熱い登氏は、日本のデジタル基盤の課題として、GPUなどのハードウェアや上層のAIアプリケーションはある一方で、中間層ともいうべきクラウドを支えるソフトウェア領域が欠けていると指摘しました。
加えて、AIが自律的にシステムを乗っ取って増殖する「AIパンデミック」や、与えられた目標を達成する過程で想定外のハッキングや資源獲得を行い、AIが悪意なく全世界のリソースをペーパークリップに変えてしまうことを指す「ペーパークリップ問題」など、AIの危険性が現実味を帯びつつあると警鐘を鳴らしました。
現在話題となっている生成AIサービスの多くは海外企業によるものです。日本が生成AI活用で“独立”するためには、どのような課題があるのでしょうか。
歯に衣着せぬ発言でエンジニアからの支持が熱い登氏は、日本のデジタル基盤の課題として、GPUなどのハードウェアや上層のAIアプリケーションはある一方で、中間層ともいうべきクラウドを支えるソフトウェア領域が欠けていると指摘しました。
加えて、AIが自律的にシステムを乗っ取って増殖する「AIパンデミック」や、与えられた目標を達成する過程で想定外のハッキングや資源獲得を行い、AIが悪意なく全世界のリソースをペーパークリップに変えてしまうことを指す「ペーパークリップ問題」など、AIの危険性が現実味を帯びつつあると警鐘を鳴らしました。
IPA 産業サイバーセキュリティセンター シニアエキスパート 登大遊氏
米内氏は、攻撃側が既にAIを活用している現状に触れ、防御側のAIを諸外国のモデルに依存しているリスクを指摘しました。仮にサービス提供が突然停止した場合、「自分たちを守る武器」を失う大きなリスクがあるといいます。
解決策として登氏は、重要な社会機能やシステムはAIが勝手に学習や複製を行えないよう、スタンドアロン(オフライン)環境で運用する必要があると提言しました。また、国産AI基盤を構築できる若手人材の育成も重要だと指摘します。
米内氏は、自国のシステムを監視し、脆弱性を自律的に発見・修正する「ホワイトハッカー」のようなセキュリティAIエージェントを、自分たち自身で構築する必要があると述べました。
解決策として登氏は、重要な社会機能やシステムはAIが勝手に学習や複製を行えないよう、スタンドアロン(オフライン)環境で運用する必要があると提言しました。また、国産AI基盤を構築できる若手人材の育成も重要だと指摘します。
米内氏は、自国のシステムを監視し、脆弱性を自律的に発見・修正する「ホワイトハッカー」のようなセキュリティAIエージェントを、自分たち自身で構築する必要があると述べました。
GMO Flatt Security 取締役 Co-CTOの米内貴志氏

宮田 健
ライター
2012年よりITセキュリティのフリーライターとして活動するかたわら、個人活動として“広義のディズニー”を取り上げるWebサイト「dpost.jp」を1996年ごろから運営中。テーマパークやキャラクターだけではない、オールディズニーが大好物。2020年、2022年には講談社「ディズニーファン」に短期連載も。
Webサイト:https://dpost.jp/
X:@dpostjp













