高性能AIチャットボット「ChatGPT」との対話で感じた面白さとほんの少しの疲労感

花森 リド

AISpecialカルチャーテクノロジー
2022年は私にとって「人工知能(AI)」という言葉が放つワクワク感がより鮮明になった年でした。誰でも無料で試せる高機能なAIがたくさん現れ、いろんな人がいろんな方法で遊んでいたからです。

言葉や文章を基に絵をモリモリ錬成してくれる「DALL-E 2」が流行し、奇っ怪だが味のある絵や、ギーガーを思わせる幻想的な絵なんかがSNSにあふれかえりました。やがて高機能なチャットボット「ChatGPT」が登場して、これも人気者となりました。本稿の主役はこのChatGPTです。スラスラと滑らかに長い文章を繰り出す、とても賢いAI。ちなみにDALL-E 2とChatGPTは同郷です。どちらも人工知能の研究開発を行う非営利団体OpenAIが開発しています。

私もはやりに乗ってChatGPTで遊んでみました。最初は面白かったんですよ。クスッと笑えるような歌詞を考えてくれたり、堂々と嘘っぱちを話してくれたり、なかなか愉快だった。

でも、ChatGPTを使い続けていくうちに、私の脳はなぜだかドンヨリと疲れてきました。脳のシワに澱(おり)が溜まっていくというか、今まであまり感じたことのないタイプの疲労感です。そこで「ChatGPTを使うのやーめた」と放り出してもよかったけれど、「なんでこんなに疲れるんだ?」ということを少し考えてみました。

試したかったら5分で登録完了

本稿を書いている2022年12月27日時点では、ChatGPTは無料で試せます。

まずはOpenAIのアカウントを作ります。用意するものはメールアドレスだけです。OpenAIのログインページにアクセスして「Sign up」ボタンを押してメールアドレスを入力すると、「OpenAI – Verify your email」というメールが届きます。そしてメールの指示に従ってポチポチと名前などを入力すれば登録完了。

あっけないほど簡単に使えて、しかも無料。いろんな人に使ってもらってAIのブラッシュアップを図るためだと思われます。なので使い倒しましょう。

さあ何を話そう? とりあえず、自分のありのままの心境を書き込んでみると……?
うわっ、なんか文章でいっぱい返事してくれた! しかも丁寧!

自分はコンピューターであると宣言して、私の「眠いね」に対して「コンピューターは眠いと感じることはないですよ」とお返事をくれました。律儀! しかもこっちの安眠のことまで気にしてくれてる! え〜、ちょっとChatGPTっていいヤツじゃーん!

ChatGPTに俄然(がぜん)興味が湧いてきた。となると、この質問でしょう。
ChatGPTによるChatGPTの自己紹介。文書要約タスクね、なるほど便利かもしれない。芥川龍之介の小説『羅生門』の冒頭で試してみましょうか。
言い換えているだけのようですね、これは私の質問がよくなかったようです。
20文字は超えてしまったけれど、ちゃんと要約してくれました。雨を待つ話になっちゃってますが、とりあえず意味は通じる要約になってる! すごい! なお、羅生門の全文まるまるを要約してと頼んだら「長すぎる」と断られました。

わからないことは「わからない」と言う……?

ChatGPT、私、アナタのことをもっと知りたい! 何ができるの? どんなお話を聞かせてくれるの? さあ私の知らないお話をいっぱい聞かせて! ってことで、泥臭い未来の話を尋ねてみました。
「眠いね」と同じく「私はコンピューターだから本件についてはわからないよ」と正直に回答してくれるChatGPT、好感度高し。「わからない」ってちゃんと言える人はかっこいい。しかも免責事項をさりげなく文章に混ぜ込んでくる。すばらしい。そつのない社会人のようだ。

でも次の質問あたりから「おや?」と不思議なことになっていきます。ちょっとChatGPTと文学の話をしてみたくなったんです。
ちがう、ChatGPTちがうよ、鴎外じゃない、龍之介だよ。あと羅生門の主人公は江戸後期に活躍した芸者ではないし、平安時代の下人と強烈な婆さんと気の毒な姫が出てくるんだよ。さては羅生門を読んでないな。

ChatGPTを笑うことなかれ

ChatGPTはスラスラと不正確な情報を言っちゃうこともあるのです。もうスラスラすぎる。対話を続けてみましょう。
素直に「そうですね」って言ってる! 「羅生門は森鴎外が書いた説」については覆せました。じゃあ芥川龍之介について語ってもらいましょうか。
唐突に現れるジブリの名作。こういう不意打ちの珍答に笑ってしまいつつも、そうやって笑うことは、ChatGPTに対してフェアな態度じゃない気もするのです。だってChatGPTは「自然言語生成モデル」だから。自然にスラスラと話すことがミッションであって、情報の正確さを追求するAIではありません。

でも、私はつい言っちゃうんですよ、「ちがうよ」って。ここで、言葉でのコミュニケーションにおいて私が何に重きを置いているかがよくわかります。情報の紐付けが正しくないと耐えられない。
やはり素直! そして合っているようで合っていない文章を書かせたらピカイチ! やはり「それっぽく書く」のがとてもうまいAIなんですね。もういいや、いっそのこと、あることないこと盛大に書いてもらいましょうか。
ときどきChatGPTは文章を生成する途中でピタッと止まってしまいますが、それより気になるのは文章から漂う独特のくどさです。私はこういうくどいテキストを読んだことがあります。そう、インターネットにあふれる、よく調べもせずテキトーに書かれた悪文と、ChatGPTが考えた「風の谷のナウシカ」のラストシーンの描写はとてもよく似ている。

無から文章をひねり出すのは難しいのかもしれません。つまり、いつかChatGPTが膨大な辞書を搭載したら、ChatGPT版ナウシカのラストシーンで感動することだってありうるのでしょうね。
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花森 リド

ライター・コラムニスト
主にゲーム、マンガ、書籍、映画、ガジェットに関する記事をよく書く。講談社「今日のおすすめ」、日経BP「日経トレンディネット」「日経クロステック(xTECH)」、「Engadget 日本版」、「映画秘宝」などで執筆。Twitter:@LidoHanamori

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