2026年、“電脳化”が現実になった 『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』が素晴らしかった

Jun Fukunaga

AISpecialイベントカルチャークリエイター
「ネットは広大だわ」

1995年のSFアニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』のラストで草薙素子が残したこの言葉は、30年経った今も色褪せない。その「広大なネット」をさまざまな展示を通して、体験できる場所が、現在、虎ノ門ヒルズ内のTOKYO NODEにて開催中の『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』だ。

押井守ら歴代監督が手がけた作品群から、2026年放送予定のサイエンスSARU制作の新作まで、『攻殻機動隊』全アニメシリーズを横断する史上初の大規模展覧会となる本展は、各作品の持つ独自のテーマや世界観を比較しながら鑑賞できる。そこでシリーズのファンでもある筆者は早速、会場に足を運んでみた。今回はその模様を詳しくレポートする。

*冒頭写真:筆者撮影(一般来場者の場内展示品の撮影・SNSへの投稿は可能だが、一部展示については撮影制限がある)

「in」ではなく「and」──タイトルに込められた問いかけ

賢明な読者はお気づきであろうが、本展のタイトルは『Ghost in the Shell』ではなく『Ghost and the Shell』になっている。「in」ではなく「and」。つまり、魂が肉体の“中に”あるのではなく、魂と肉体を“別々に”捉え直すという意図だ。

作中で公安9課が設立される2029年まで、あと3年。士郎正宗がこの作品を描いた1989年から37年が経ち、AIに質問し、クラウドに記憶を預けることが当たり前になった今、私たちの生活は作品世界に近づきつつある。そんな時代に、何を「自分」と呼び、何に魂を感じるのか。本展はその問いを来場者に投げかける意味で『Ghost and the Shell』と名付けられている。

厚みのある『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』公式図録(筆者撮影)

情報の海にダイブする4つの展示エリア

本展は4つのエリアで構成されている。入口をくぐったあと、来場者が最初に目にするのはGALLERY A「NODE(思考の結節点)」だ。ここで展示されるインスタレーション「巨大電脳ネットワークビジュアライザー "Nerve Net"」では、攻殻機動隊全シリーズのシーンを自在に検索できる。

壁一面にマッピングされる攻殻機動隊のデータベース情報(筆者撮影)

続くPATH A「STORY(世界への導入)」では、押井守、神山健治、黄瀬和哉、荒牧伸志ら歴代監督による、本展のための撮り下ろしインタビュー映像が公開されている。

東京の街並みをバックに並ぶシリーズのキービジュアルとインタビュー映像(©士郎正宗・講談社/攻殻機動隊展 Ghost and the Shell 製作委員会)

次に本展の目玉となっているGALLERY B「DIG(掘り起こす)」では、約1000平方メートルの大空間に1600点超の制作資料、原画、背景美術、セル画が並ぶ。

パネルに展示されたアニメの原画とセル画(筆者撮影)

そして展示の最後にはGALLERY C「本展限定ショップ」が設けられている。ここではファン必携の150種を超えるオフィシャルグッズが購入可能だ。

等身大フィギアやTシャツなどのオフィシャルグッズが販売される「本展限定ショップ」(筆者撮影)

タチコマがナビゲートするAR原画体験「電脳VISION」

このように展示会場では、ここでしか体験できない、さまざまな攻殻機動隊コンテンツが用意されている。中でも筆者が特に印象に残ったもののひとつが、GALLERY Bで楽しめる「電脳VISION」だ(有料・オンライン販売1500円、当日会場窓口販売1700円(税込))。

ARグラスを装着して、原画を鑑賞するこの体験は「90分間、来場者が簡易的に電脳化できる」というもの。体験中は『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズでおなじみのタチコマが、厳選された21シーンについて電脳通信ウィンドウ越しに解説してくれる。

草薙素子のサングラスを彷彿とさせるARグラスは「XREAL Air 2 Ultra」(筆者撮影)

ARグラス越しに見た「電脳VISION」の画面。タチコマがナビゲートしてくれる(©士郎正宗・講談社/攻殻機動隊展 Ghost and the Shell 製作委員会)

ちなみに電脳VISIONのクライマックスには、特別体験が用意されている。草薙素子がネットの海へダイブする『SAC_2045』のラストシーンを、TOKYO NODEからの夜景を背景に目撃できるというものだ。昼間はロールカーテン越しの体験となるが、夜は虎ノ門の夜景が一望でき、AR演出と実際の夜景が重なって没入感が増すという。今回、筆者が訪れたのは昼間だったが、夜の時間帯に再訪する価値は十分にありそうだ。

AR演出と実際の夜景が重なる草薙素子のダイブシーン(©士郎正宗・講談社/攻殻機動隊展 Ghost and the Shell 製作委員会)

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Jun Fukunaga

ライター・インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はバーチャルライブ関連ネタ多め。DJと音楽制作も少々。

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