「政治的に調整された」悪魔はプラダのコートを投げ捨てない
実感から言うと、映画が描く以上のスピードと容赦のなさで世間がファッション媒体への関心を失った現在、もはや雑誌の編集長が「政治的に不適切なブランドを推した」くらいのことでネットミームにされてSNSを埋めたりなどしない。世界はもうそれほどに雑誌に対して無関心だ……が、ともかく、映画はそういった、ファッションメディアへの批判的風潮から始まる。
そこから描かれる現在の「RUNWAY」編集部には、オリジナル「プラダ」が醸していた、ヒリつくような権威や緊張感はもう見当たらない。
美しくファッショナブルな人材しか存在することを許されていなかった編集部には、(一見アフリカ系と見えるがインド系の)褐色の肌をした有能な編集者や、ぽっちゃりして背の低いアジア人の新人女子や、肉付きも機嫌もいい男性アシスタントがいる。ジェンダーや人種的多様性、ルッキズムなどにも“対応”した印象だ。そしてミランダはもう悪魔じゃない。「人事にクレームがあった」ために、出社するとアシスタントに小声で挨拶し、バッグを投げ捨てたりもせず自分の部屋へ粛々と向かい、コートは自分でハンガーにかける。
そこから描かれる現在の「RUNWAY」編集部には、オリジナル「プラダ」が醸していた、ヒリつくような権威や緊張感はもう見当たらない。
美しくファッショナブルな人材しか存在することを許されていなかった編集部には、(一見アフリカ系と見えるがインド系の)褐色の肌をした有能な編集者や、ぽっちゃりして背の低いアジア人の新人女子や、肉付きも機嫌もいい男性アシスタントがいる。ジェンダーや人種的多様性、ルッキズムなどにも“対応”した印象だ。そしてミランダはもう悪魔じゃない。「人事にクレームがあった」ために、出社するとアシスタントに小声で挨拶し、バッグを投げ捨てたりもせず自分の部屋へ粛々と向かい、コートは自分でハンガーにかける。
前作に続き「RUNWAY」編集長ミランダ・プリーストリーを演じるメリル・ストリープ(画像:『プラダを着た悪魔2』 公式サイトより)
出版社の会長が死去し、エリートだが投資とスポーツにしか興味のないドラ息子が後継者となるが、赤字タイトルである「RUNWAY」は事業整理候補とされ、マッキンゼー(経営戦略コンサルタント)のチームが連れてこられる。高名な伝説の編集長ミランダを前にして、そこで口火を切る“プロジェクトリーダー”はインド系のまだ若くぎこちないコンサルタントだ。名前を名乗ってすかさずハーバードMBAであると付け加える細部も、実にリアルで皮肉に富んでいる。
ファッションとはこれまでも今も常に、時の権力者の社交を彩るものである。だから「誰がファッション業界にお金を出しているのか」で、その時代の権力のありかがわかるといってもいい。「プラダ2」では、ファッションのパトロンは米国人のIT長者だ。戯画化されたIT長者の前妻はアジア系モデル、今の恋人はクチュールブランドの美貌のエグゼクティブということで、これまたいかにもありそうな現実を映し出している。
オリジナル「プラダ」で2人目の夫に離婚されたミランダが、今作で結婚している3人目の夫がどんな男性であるかも注目である。映画の中で誰がお金や権力を持っているのかと同様に、誰が誰とどう付き合っているか(結婚しているか)、もまた現実の縮図。「プラダ2」の見どころは華やかなファッションだけじゃない。20年前と今とで、女の仕事、女の出世、女の恋愛や人生の選択がどう変化しているかこそが、元祖お仕事女子映画ならではの、一番の見どころといっていいだろう。
ファッションとはこれまでも今も常に、時の権力者の社交を彩るものである。だから「誰がファッション業界にお金を出しているのか」で、その時代の権力のありかがわかるといってもいい。「プラダ2」では、ファッションのパトロンは米国人のIT長者だ。戯画化されたIT長者の前妻はアジア系モデル、今の恋人はクチュールブランドの美貌のエグゼクティブということで、これまたいかにもありそうな現実を映し出している。
オリジナル「プラダ」で2人目の夫に離婚されたミランダが、今作で結婚している3人目の夫がどんな男性であるかも注目である。映画の中で誰がお金や権力を持っているのかと同様に、誰が誰とどう付き合っているか(結婚しているか)、もまた現実の縮図。「プラダ2」の見どころは華やかなファッションだけじゃない。20年前と今とで、女の仕事、女の出世、女の恋愛や人生の選択がどう変化しているかこそが、元祖お仕事女子映画ならではの、一番の見どころといっていいだろう。

河崎 環
コラムニスト・立教大学社会学部兼任講師
1973年京都生まれ神奈川育ち。慶應義塾大学総合政策学部卒。子育て、政治経済、時事、カルチャーなど多岐に渡る分野で記事・コラム連載執筆を続ける。欧州2カ国(スイス、英国)での暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、政府広報誌などに多数寄稿。ワイドショーなどのコメンテーターも務める。2022年よりTOKYO MX番組審議会委員。社会人女子と高校生男子の母。著書に『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)など。












