「✕ GMO SONIC 2025」ユースカルチャーの現在地、GMO SONICでU19が泣きながら踊るのを目撃する:河崎環のタマキ✕(カケル)

迂闊な行動が招いた悲劇
そんな中、私は重大なミスを犯してしまう。「いったん休憩……」と思い立ち、あとの時間割を考えずにアリーナを出て、フードスタンドへと向かってしまったのだ。手に入れたのは、昨年も絶賛したGMO SONICのフェス飯、今回はイスタンブールGINZAのケバブデラックス! お肉が2倍、レタスも赤玉ねぎもシャキシャキで最高においしいよう。しかし、その満足感もつかの間……。
戻ってきたアリーナで目にしたのは、すでにみっちみちに埋まった人、人、人。そう、次に控えていたのは、あのROSÉ(ロゼ)のステージ。BLACKPINK活動休止当時にブルーノ・マーズとのコラボ「APT.」でメガヒットを飛ばしたばかりのロゼが来日した、超レアなソロステージを一目見ようと、会場の前には既に分厚い人の塊がガッチリ形成されていた。迂闊だった。アリーナに戻れない。もう一歩も前に進めない。そういえば、GMOインターネットグループの関係者も言ってたのに……「ロゼさんの参加がオフィシャルアナウンスされた途端、チケットがあっという間に売れたんです」。そりゃBLACKPINKだもん!
私の周りには、美しいロゼの出現を今か今かと待ち構える若い男子たちがひしめいていた。彼らの会話に耳を傾けると、「昨日(GMO SONIC DAY1)のSKRILLEX(スクリレックス)が」とEDMの話題で盛り上がっている。MARTIN GARRIX(マーティン・ギャリックス)のどの曲が最高か、最近のMarshmello(マシュメロ)の新曲はどうだったか。EDMは中学時代の掃除の時間に放送部の放送で聴いてたとか、帰国子女の友達が教えてくれた、なんて話もしていて、ほほ笑ましい。
そこで私は気づいた。彼らにとってEDMとは、私たちアラフォー、アラフィフ世代にとってのロックやポップスのような存在なのだ。10代、20代に聴き続け、自分のアイデンティティの一部となったカルチャーとしての音楽。それがEDMなのだ。
そうかと思ったら、「明日は仕事で」と言い出すから、あっ若見えするけど学生じゃなくて社会人なんだこの子たち、と気づく。「職場が40代くらいばっかりで気を使う。けどすごく優秀な人たちなんで、勉強になる」「えらいなー」なんて、なんだか、ちゃんとしてていい子たちじゃん。自然体のワカモノの話を盗み聞きして、胸熱になっていた“お姉さん”である。
戻ってきたアリーナで目にしたのは、すでにみっちみちに埋まった人、人、人。そう、次に控えていたのは、あのROSÉ(ロゼ)のステージ。BLACKPINK活動休止当時にブルーノ・マーズとのコラボ「APT.」でメガヒットを飛ばしたばかりのロゼが来日した、超レアなソロステージを一目見ようと、会場の前には既に分厚い人の塊がガッチリ形成されていた。迂闊だった。アリーナに戻れない。もう一歩も前に進めない。そういえば、GMOインターネットグループの関係者も言ってたのに……「ロゼさんの参加がオフィシャルアナウンスされた途端、チケットがあっという間に売れたんです」。そりゃBLACKPINKだもん!
私の周りには、美しいロゼの出現を今か今かと待ち構える若い男子たちがひしめいていた。彼らの会話に耳を傾けると、「昨日(GMO SONIC DAY1)のSKRILLEX(スクリレックス)が」とEDMの話題で盛り上がっている。MARTIN GARRIX(マーティン・ギャリックス)のどの曲が最高か、最近のMarshmello(マシュメロ)の新曲はどうだったか。EDMは中学時代の掃除の時間に放送部の放送で聴いてたとか、帰国子女の友達が教えてくれた、なんて話もしていて、ほほ笑ましい。
そこで私は気づいた。彼らにとってEDMとは、私たちアラフォー、アラフィフ世代にとってのロックやポップスのような存在なのだ。10代、20代に聴き続け、自分のアイデンティティの一部となったカルチャーとしての音楽。それがEDMなのだ。
そうかと思ったら、「明日は仕事で」と言い出すから、あっ若見えするけど学生じゃなくて社会人なんだこの子たち、と気づく。「職場が40代くらいばっかりで気を使う。けどすごく優秀な人たちなんで、勉強になる」「えらいなー」なんて、なんだか、ちゃんとしてていい子たちじゃん。自然体のワカモノの話を盗み聞きして、胸熱になっていた“お姉さん”である。
遠くから見るロゼと、近くで感じる熱気
ステージが始まり、ロゼが登場すると、会場は悲鳴のような歓声に包まれた。出遅れた私は、レーザー演出されるステージの光を人々の頭越しに遥か遠くから眺めるしかなかった。LEDの大画面に映し出される映像を見ながら、本物の姿を想像する。

遠くから眺めるしかなかったROSÉ
だがロゼのステージの特徴は全方位ポップな華やかさだけじゃない。KPOPファンとEDMファンの最大熱量の統合、そして集約だった! とうとう来ちゃったヒット曲「APT.」で、アリーナを埋めた人々が1つの塊となって上下にドシドシとジャンプしまくる! 前後左右から押し寄せる熱気と興奮。これ以上ここにいたら酸欠を起こしかねない。周囲の「えっどうしちゃったのこの人? このタイミングで出るの?」な白い目線を感じつつ、私は「APT.」終わりでスタンド席へと逃げ出した。
そこで目撃したのは、驚くべき光景だった。ロゼのステージが終わった後も、アリーナの多くのファンはそのまま一歩も動かない。次のステージまでの20〜30分以上のインターバルを、あの熱気を維持したまま、ひたすら待ち続けていたのだ。
彼らが待っていたのは、本年度GMO SONICのトリを飾るマーティン・ギャリックス。クラブ・DJ専門メディア『DJ MAG』のランキングで1位に輝いた、彼の登場だった。
そこで目撃したのは、驚くべき光景だった。ロゼのステージが終わった後も、アリーナの多くのファンはそのまま一歩も動かない。次のステージまでの20〜30分以上のインターバルを、あの熱気を維持したまま、ひたすら待ち続けていたのだ。
彼らが待っていたのは、本年度GMO SONICのトリを飾るマーティン・ギャリックス。クラブ・DJ専門メディア『DJ MAG』のランキングで1位に輝いた、彼の登場だった。
若者たちの情熱と、大人の理解の乖離
マーティンが最初に鳴らした小節で、会場が1つになった。イントロが流れ、マーティンのこれまでを記録した映像に見入りながら、アリーナもスタンドも、一斉に揺れ始める。スタンド席にいた私の周りでも、U19なのかな? と思うくらいの若い男子グループが、イントロを聴いた途端「Gravityだ」と曲名を囁きあった。ステージ上にマーティンの姿はまだない。けれど、すでにコーラスを口ずさむ彼ら。1度目のドロップで登場したマーティンに、会場は拳を突き上げて歓声をあげた。少年たちの方を見ると、彼らは飛び跳ね、歌い、踊り、全身全霊でその音楽を体に浴びていた。
「そうかぁ」と、なんだかうれしくなった。彼らはこの音楽を聴いて、共に育ってきたのだ。それは私たちが若かりし頃、ロックの轟音に身を任せてヘドバンしていたのと同じこと。ただ音楽のジャンルが違うだけで、音楽に対する情熱は何も変わっていないし、体の中にこれが流れているんだよね。
私も含めて、大人たちはよくZ世代とかなんとか、あっさりした言葉で彼らを括る。どう理解したらいいかわからない、でも何か名前をつければ分かった気になれるからだ。「少子化社会で、大人たちの中で育って、情報に敏感で、冷静で素直でちょっと内向きなZ世代」。そうやって大人が作った枠の中に彼らを閉じ込めようとする。
けれど、彼らの素顔はそんな単純なものじゃない。GMO SONICのあの会場で、彼らが周りなんか気にせずに全力で楽しみ、放出するエネルギーを目の当たりにして、私はハッとした。当の若者たちは、大人が思っている以上に熱いのではないか。彼らの情熱は、ただ表現の対象や場所が変わっただけで、ちゃんとそこにあるんじゃないか。
その証拠に、私はマーティンのステージの後半、「Told You So」で1人の男子が泣きながら頭を振り、踊る姿を目撃した。きっと、あの曲に何かの記憶があるのだろう。聴いた瞬間に感情が溢れる、思い入れがあるのだろう。私たちの時代と何一つ変わらない、永遠の「ワカモノ」の姿がそこにはあった。
「そうかぁ」と、なんだかうれしくなった。彼らはこの音楽を聴いて、共に育ってきたのだ。それは私たちが若かりし頃、ロックの轟音に身を任せてヘドバンしていたのと同じこと。ただ音楽のジャンルが違うだけで、音楽に対する情熱は何も変わっていないし、体の中にこれが流れているんだよね。
私も含めて、大人たちはよくZ世代とかなんとか、あっさりした言葉で彼らを括る。どう理解したらいいかわからない、でも何か名前をつければ分かった気になれるからだ。「少子化社会で、大人たちの中で育って、情報に敏感で、冷静で素直でちょっと内向きなZ世代」。そうやって大人が作った枠の中に彼らを閉じ込めようとする。
けれど、彼らの素顔はそんな単純なものじゃない。GMO SONICのあの会場で、彼らが周りなんか気にせずに全力で楽しみ、放出するエネルギーを目の当たりにして、私はハッとした。当の若者たちは、大人が思っている以上に熱いのではないか。彼らの情熱は、ただ表現の対象や場所が変わっただけで、ちゃんとそこにあるんじゃないか。
その証拠に、私はマーティンのステージの後半、「Told You So」で1人の男子が泣きながら頭を振り、踊る姿を目撃した。きっと、あの曲に何かの記憶があるのだろう。聴いた瞬間に感情が溢れる、思い入れがあるのだろう。私たちの時代と何一つ変わらない、永遠の「ワカモノ」の姿がそこにはあった。

MARTIN GARRIXのステージの美しい演出
GMO SONICは、そんな若者たちの今を映し出す鏡なのかもしれない。マーティンがプレイしてくれたアヴィーチー(スウェーデン出身の音楽プロデューサー/DJ、2018年に27歳で逝去)の「Waiting for Love」と「Starlight (Keep Me Afloat)」のマッシュアップ。早逝したアヴィーチーへの永遠のメッセージを感じた私も、泣いてたよ。

河崎 環
コラムニスト・立教大学社会学部兼任講師
1973年京都生まれ神奈川育ち。慶應義塾大学総合政策学部卒。子育て、政治経済、時事、カルチャーなど多岐に渡る分野で記事・コラム連載執筆を続ける。欧州2カ国(スイス、英国)での暮らしを経て帰国後、Webメディア、新聞雑誌、企業オウンドメディア、政府広報誌などに多数寄稿。ワイドショーなどのコメンテーターも務める。2022年よりTOKYO MX番組審議会委員。社会人女子と高校生男子の母。著書に『女子の生き様は顔に出る』(プレジデント社)など。