誰でもオリジナル曲が持てる時代に!? 作曲経験がなくても音楽が作れる注目のAI自動作曲サービスを使ってみた

Jun Fukunaga

AISpecialクリエイター映画・音楽

シンプルな操作でAIが作成した楽曲を自分好みにアレンジできる「SOUNDRAW」

2020年にサービスを開始した「SOUNDRAW」は、著作権フリーで利用できるAI作曲サービス。日本発でありながらユーザーの75%が北米を中心とした海外ユーザーで占められているほか、2023年にはアメリカの有名ラッパーのFivio Foreignとコラボした楽曲を公開するなど、現在グローバル市場でも注目を集めている。

SOUNDRAWは、Stable Audioと同じく無料版と有料版が用意されており、無料版でも使用することはできる。ただし、無料版は無制限に作曲できるもののダウンロードはできず、楽曲をブックマークするだけの機能限定版となっている。

一方、月額1650円のクリエイター向けの有料版「Creator Plan」では、作成した楽曲を無制限でダウンロード可能。動画プラットフォームやSNS、テレビ、ラジオなどでBGMとして商用・個人利用もできる。さらに月額29.99ドルの「Artist Plan」は、自分の歌やラップを加えたものであれば各種音楽配信サービスで配信して収益化が可能。楽曲は月に30曲までダウンロードできる。

SOUNDRAWは楽曲作成時の自由度という点では、テキストで好みのテイストを指定できるStable Audioと比べて一歩劣る印象がある。しかし、SOUNDRAWは「曲の長さ」「テンポ」に加えて「ムード」「ジャンル」「テーマ」の中から好きな項目をひとつをクリックするだけで、自動的に楽曲が作成されるという圧倒的にシンプルなワークフローを持っている。これは、特に深い音楽的な知識を持っていないユーザーにとっては、非常にユーザビリティが高い仕様だといえる。

筆者は実際に試してみて、SOUNDRAWの強みはシンプルな操作でAIが作成した楽曲を、より自分好みに調整できるアレンジ機能にあると感じた。SOUNDRAWで作成される楽曲は、基本的に4小節を1フレーズとして、フレーズごとに「Energy」と呼ばれる“盛り上がり度合い”を設定できる。Energyは「Low(低い)」「Medium(中くらい)」「High(高い)」「Very High(非常に高い)」の4段階で設定でき、ユーザーは楽曲を試聴しながら、盛り上がりの度合いを調整することで楽曲の構成を自分好みにカスタマイズ可能だ。

ユーザーは楽曲の「Energy」(楽曲の盛り上がりの度合い)を4段階で調整できる

さらに「Pro mode」と呼ばれる上位カスタマイズ機能をオンにすれば、4段階のEnergyを「Melody」「Backing」「Base」「Drum」「Fill」といったパートごとに設定することもできる。これによって、例えば、特定のフレーズでドラムを抜く、メロディをより強調するなど、AIが作成した楽曲をさらにオリジナルな展開を持つ楽曲にカスタマイズできる。

また通常モードでは、テンポを「Slow」「Normal」「Fast」の3段階から選択する仕組みになっているが、Pro modeでは、BPM単位で設定できる(基本のBPMから10BPMごとに3段階で選択)。さらにキーや各パートの音色や音量も変更することもできる。

このように、AIによるセミオーダー楽曲をシンプルな操作で直感的にアレンジできる機能によって、SOUNDRAWのユーザーはより自分好みのオリジナルな楽曲を手軽に手に入れることができる。

「Pro mode」では、各パートごとにEnergyの調整が可能。さらにオリジナルな展開を作ることができる

ダンスミュージックの作成に強みを持つ「KORUS」

KORUS」は、ブロックチェーンを活用したWeb3音楽プラットフォームであり、AIによる自動作曲機能を持つ。Stable AudioとSOUNDRAWが多ジャンルにわたって汎用的な音楽を作成できるのに対し、KORUSはダンスミュージックの作成に強みを持つ。それもそのはず、KORUSを開発したPixelynxは、ダンスミュージックシーンで人気のプロデューサーdeadmau5とRichie Hawtinの2人が参画して設立した音楽系メタバースのスタートアップなのだ。

KORUSでは、「KOR」と呼ばれる音楽生成AIコンパニオン(AI技術を用いて作られたデジタルアシスタント)が、ユーザーとのチャットを通じて自動で楽曲を作成する。例えば、KORに「デトロイトスタイルのテクノを作ってほしい」と(英語で)指示を出すと、KORはそのリクエスト内容にあった楽曲を自動で作成する。また、作成された楽曲に対し、「もっとシンセのフレーズをよりメロディックにしたい」といった指示を追加すれば、KORはそのリクエストに応じて楽曲を再作成してくれる。

KORにチャットを通じて、作成した楽曲をリクエスト。KORが提案してきた曲を試聴後に追加で具体的に求める要素をリクエストすることも可能

AIが作成した楽曲は「Risers(効果音)」「Downers(効果音)」「Bass」「Chords」「Drums」「Melody」からなる6パートで構成されており、手動で任意のステム(パートの音源)を入れ替えることもできる。その際、入れ替えるステムとオリジナルのステムのテイストの違いの度合いも調整できる。

入れ替えるステムとオリジナルのステムのテイストの違いの度合いは0〜100%で調整できる

また、ユーザーはKORに自動で音楽を作成させるだけでなく、自分で選択したジャンルやステムを元に新規楽曲を作成することも可能だ。作成した楽曲は購入することでダウンロードでき、ユーザーは、KORUSの音楽コミュニティーのメンバーと楽曲の販売取引や投票、リミックス、共有を通じて交流を深めることができる。

さらにKORUSでは、ダンスミュージックに強い音楽販売・配信サービスのBeatportと提携して「BeatKOR」も提供している。BeatKORでは、著名アーティストが提供した「Artist DNA」と呼ばれるライセンス済みの楽曲のステムを使ったリミックスが作成可能。作成したリミックスはブロックチェーン上に公式に記録され、ユーザーはアーティストのリミックス音源を商業リリース可能なライセンスを獲得できる。今後はKORUS以外の一般的な音楽配信サービスへの配信も可能になるという。

KORUSで実際に楽曲を作成してみたところ、他のAI作曲サービスで作成する同様の楽曲と比べて、低音感やグルーヴ感がしっかりと感じられるクラブ仕様の鳴りになっている印象を受けた。主にダンスミュージック系の楽曲をAIで作成してみたい人には、非常におすすめのサービスだ。

音楽の楽しみ方、新しいクリエイティブの可能性を広げるAI

今回、紹介したAIによる自動音楽サービスの大きなメリットは、やはり誰もが自分のオリジナル音楽を手軽に作成できる点にあるだろう。

例えば、Stable AudioやSOUNDRAWで作成できる音楽は、正直なところ、現時点では人の感情を揺さぶる"ヒット曲"になるようなものではないが、動画のBGMなど、聴き流してもさほどの問題のない音源としての用途であれば、十分利用価値があると筆者は考える。

特に、ありふれたフリー音源ではなく、自分の動画にある程度の個性を発揮したいという人には非常に有用だ。また、こういったAIによる楽曲を使って、作曲できない人が自分の歌やラップを加えたオリジナル音楽を作成できることは、音楽の楽しみ方の選択肢を増やすに違いない。

一方、すでに一部で言われているように、既存の音楽クリエイターにとってはAIに仕事が奪われることになるかもしれないという懸念もある。しかし、こういったAI作曲音源を、AIには考えつかないクリエイティブな方法で人間のクリエイターが使用していくことで、新たな音楽クリエイティブを生み出すという道もあるはずだ。

現在、こういったAI作曲サービスは、AIの無断学習によって著作権を侵害しないよう、あらかじめライセンス問題をクリアにした学習データを用いて訓練するものも増えており、著作権フリーで使用できるものも少なくない。そういうサービスで作成した楽曲を、例えばサンプリングソースとして使用するなどして、新たな楽曲制作に役立てるという活用方法も考えられる。

クリエイティブとAIの関係性がこれまで以上に深まっている今だからこそ、さまざまな方法でAIと共存する道を模索すれば、これから先の人間のクリエイティブの可能性が大きく広がっていくのではないだろうか。
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Jun Fukunaga

ライター・インタビュワー
音楽、映画を中心にフードや生活雑貨まで幅広く執筆する雑食性フリーランスライター・インタビュワー。最近はバーチャルライブ関連ネタ多め。DJと音楽制作も少々。

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