「スタートアップの口座開設でトップに」「エンジニア率50%」~4年目迎えるGMOあおぞらネット銀、事業戦略発表

浦上 早苗

DXGMOインターネットグループテクノロジー速報金融・銀行・暗号資産
事業開始4年目を迎えたインターネット銀行・GMOあおぞらネット銀行は7月6日、都内のホテルで2021年以降の中長期事業戦略を発表し、スモール&スタートアップに向けたサービスや組み込み型金融サービスの強化、社内のエンジニア比率を50%に高める目標を打ち出した。

GMOあおぞらネット銀行は「銀行とITの融合」を目指し、2018年7月に事業を開始。当初はGMOの資源を最大限に活用した「ナンバーワン法人決済銀行」「ナンバーワン銀証連携銀行」を事業戦略としてきたが、代表取締役社長 山根武氏は反省点として「個人・法人同時にナンバーワンを目指すには経営資源が不足していた」と振り返った。

一方、業界最安値水準の手数料がスタートアップから支持されたことや、銀行APIサービスが企業に高い評価を受けるなど、強みも確認できたという。

山根氏は「銀行としての商品・サービスが安かったり便利だという点について評判が広がり、資本力のない企業の支持を得ている。GMOあおぞらネット銀行の口座開設者の6割強は開業間もない方」と紹介した。

代表取締役社長 山根武氏

月1万社の新規設立法人に寄り添うサービス

これらの事業戦略の評価を受け、代表取締役会長の金子岳人氏は「強みに対してもっと踏み切った形で戦略を練り直し、三か年計画をスタートする」と語った。具体的には2021年を「第二創業期」と位置づけ、創業間もない企業にとことん寄り添い、顧客に合わせた柔軟なITサービスを提供する銀行を志向する。

代表取締役会長 金子岳人氏

新たな事業戦略の柱としては、「スモール&スタートアップ向け銀行」「組込型金融サービス」「テックファーストな銀行」の3つのキーワードでナンバーワンを目指すと表明した。

・スモール&スタートアップ向け銀行

金子氏は「一般的な銀行はリスク、採算の観点からある程度成長した企業を支援してきたが、我々自身がベンチャーかつテクノロジー企業でもあり、創業期、成長期の企業に重点を置き、他の銀行ではなかなかできない細やかなサービスを提供する」と述べた。

今後は月1万社の新規設立法人を重要ターゲットとし、高品質低価格の支援・サービスを手掛ける。

第一弾として7月12日、口座開設者に10万円の融資枠を標準装備する少額自動建替「あんしん10万円」機能と、クラウド会計ソフト「freee(フリー)」と提携した「入出金管理アプリ」機能を付帯する。

「あんしん10万円」機能は、ビジネスデビットカード利用時や口座振替時に残高不足となることがあっても、10万円を上限に銀行が立て替え払いを行うというもの。

「あんしん10万円」機能

「入出金管理アプリ」はfreeeとの連携により、他金融機関の口座も一元管理できるアプリで、複数の口座の残高や入出金明細を一覧できる。金子氏によると、金銭の出入りが激しい創業時をサポートするサービスで、「資金移動をうっかり忘れてしまった」「忙しくて資金繰りをチェックできない」といった問題を解決するという。

「入出金管理アプリ」

また、士業支援、営業支援、業務・IT支援を提供する企業と提携した「ビジネスサポートサービス」も提供する。freeeやGMO掛け払いなど12社と提携してスタートし、順次拡大していく。

・組込型金融サービス

GMOあおぞらネット銀行は1年半前に銀行APIサービスを開始し、2021年6月時点で契約先が137社に達するなど、同分野のトップランナーとして同業他社を圧倒している。

金子氏は、「コロナ禍で一般企業におけるDX(デジタル・トランスフォーメーション)の推進が進んでおり、銀行APIのニーズが増えているのではないか。今後は銀行APIを開放するだけでなく、企業のビジネスモデルにもっと当社のサービスを組み込んでいきたい」と抱負を語った。

従来の銀行API、プラットフォーム銀行(BaaS)を、「かんたん組込型金融サービス」に進化させ、同銀行のアプリがさまざまなサービスのアプリに溶け込み、エンドユーザーが意識することなく銀行アプリにアクセスする世界を目指す。

「かんたん組込型金融サービス」

将来的には、既存の銀行API体験サービス「sunabar(スナバー)」とマーケットプレイス「ichibar(イチバー)」(2021年8月リリース予定)を軸とし、銀行パーツをつくったり試すだけでなく、出品・流通できるエコシステムの構築も手掛ける。

2021年8月リリース予定のマーケットプレイス「ichibar(イチバー)」と、既存の銀行API体験サービス「sunabar(スナバー)」で、組み込み型金融サービスをエコシステムとして提供する

・テックファーストな銀行

金子氏は、ネット企業の銀行サービスという形を実現するため、「我々がテックファーストな企業にならなければいけない。銀行“エンジニア集団”をつくる」と、社員のエンジニア比率50%以上に高める目標を掲げた。

自社にエンジニア集団を持つことで、顧客のエンジニアと協業し新しいサービスを開発したり、デジタルサービスで顧客のDXを実現していきたいという。

テックファーストな企業、エンジニア集団をつくるとした

他行宛て振込手数料大幅引き下げ

事業戦略発表会では、2021年10月に個人、法人の他行宛て振込手数料を1件145円に引き下げることも発表された。従来は個人の振込手数料が157円、法人は3万円以上が261円、3万円未満が166円だった。
GMOあおぞらネット銀行は「次世代テックバンク」を掲げるが、金融業界のDXも急ピッチで進んでおり、BaaS分野は競争が激しくなっている。金子氏は「確かにライバルが非常に多いが、当行はベースとなるシステムに強みがあり、システムに基づき提供するサービスが安価という特長がある。銀行APIもきめ細かく接続がしやすい点が評価を得ている」と、自信を示し、スモール&スタートアップの口座開設で圧倒的ナンバーワンを目指す方針を再度強調した。

浦上 早苗

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