BMIでサイコミュは実現できるのか
では、ガンダムの「脳波で複数の機器を操作する」サイコミュ、そしてジークアクスの「巨大な乗物自体を操作する」アルファ・サイコミュは、BMIでどこまで実現できるのだろうか。残念ながら、現時点ではどちらも難しいと言わざるを得ない。確かに、冒頭で紹介した映像のように、1機のドローンを脳波で操縦する技術は既に存在している。しかし、あれはあくまで実験室レベルの環境での話だ。現実世界で安全かつ長時間にわたって連続して操作するには、BMIの装着者の意図がリアルタイムで正確に機器に反映される必要がある。
脳に電極を直接埋め込む侵襲型BMIであれば、まだ反応速度の向上に可能性はあるものの、非侵襲型BMIではまだ難しい。しかも侵襲型BMIであっても、経年劣化や安定性の問題には対応しなければならない。
脳に電極を直接埋め込む侵襲型BMIであれば、まだ反応速度の向上に可能性はあるものの、非侵襲型BMIではまだ難しい。しかも侵襲型BMIであっても、経年劣化や安定性の問題には対応しなければならない。
ガンダムの「オールレンジ攻撃」の実現はさらに難しい
さらに、「オールレンジ攻撃」のように、複数の独立したデバイスを同時に、かつ高精度に遠隔操作するような多重制御は、現在のBMIでは極めて困難だ。
脳活動の複雑なパターンをリアルタイムで解析し、それぞれ別々の動きに対応する指示へと変換する技術はまだ確立されていない。脳から得られるデータの「情報量」と、それを読み解く「解読精度」の限界が、多重かつ複雑な同時制御の障壁となっている 。特に非侵襲型BMIでは、信号の減衰やノイズが大きく、こうした精密な多重制御には向いていないのが現状だ。
このように、BMIがサイコミュのような高度な操作を実現するには、デバイスそのものとアルゴリズムの両面での進化が必要だ。
また、サイコミュの操作に「特別な素養」が求められるように、BMIでも脳活動の安定性やパターン生成の能力には個人差が大きい。そのため、安定したシステムを構築するには、ユーザーごとに合わせたキャリブレーションやトレーニングが不可欠だ。
ガンダム世界における「特別な素養」とは、現実のBMIで言うところの「脳活動の安定的な生成能力」や「AIの解析アルゴリズムとの相性」に相当する。これは、どれだけ技術が進歩しても、最終的には人間側の生理的・認知的特性がパフォーマンスに大きく影響するという限界を示唆している。
脳活動の複雑なパターンをリアルタイムで解析し、それぞれ別々の動きに対応する指示へと変換する技術はまだ確立されていない。脳から得られるデータの「情報量」と、それを読み解く「解読精度」の限界が、多重かつ複雑な同時制御の障壁となっている 。特に非侵襲型BMIでは、信号の減衰やノイズが大きく、こうした精密な多重制御には向いていないのが現状だ。
このように、BMIがサイコミュのような高度な操作を実現するには、デバイスそのものとアルゴリズムの両面での進化が必要だ。
また、サイコミュの操作に「特別な素養」が求められるように、BMIでも脳活動の安定性やパターン生成の能力には個人差が大きい。そのため、安定したシステムを構築するには、ユーザーごとに合わせたキャリブレーションやトレーニングが不可欠だ。
ガンダム世界における「特別な素養」とは、現実のBMIで言うところの「脳活動の安定的な生成能力」や「AIの解析アルゴリズムとの相性」に相当する。これは、どれだけ技術が進歩しても、最終的には人間側の生理的・認知的特性がパフォーマンスに大きく影響するという限界を示唆している。
いつか「ニュータイプ」が本当に現れるかも?
もしかしたら、こうした制約を乗り越えられる人間が現れ、「ニュータイプ」と呼ばれる世界が本当にやって来るかもしれない。そしてAI技術のさらなる進化と、高度なAIによって補正されるBMIを使って、私たちがサイコミュと呼べる状況をつくり出す可能性も残されている。
しかし将来的に、BMIがサイコミュのように人間の能力を拡張する手段として広く利用されるようになれば、「特別な素養」や「トレーニングの有無」が、新たな格差や社会階層の分断を生み出す恐れがある。
もしそんな時代が訪れたとしたら、ガンダムの物語に描かれるように、ニュータイプとそうでない人びと、あるいは人工的につくり出された強化人間との間で、摩擦が生まれてしまうかもしれない。それだけは、現実にならないことを祈るばかりだ。
しかし将来的に、BMIがサイコミュのように人間の能力を拡張する手段として広く利用されるようになれば、「特別な素養」や「トレーニングの有無」が、新たな格差や社会階層の分断を生み出す恐れがある。
もしそんな時代が訪れたとしたら、ガンダムの物語に描かれるように、ニュータイプとそうでない人びと、あるいは人工的につくり出された強化人間との間で、摩擦が生まれてしまうかもしれない。それだけは、現実にならないことを祈るばかりだ。

小林 啓倫
経営コンサルタント
1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米バブソン大学にてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える!金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『ソーシャル物理学』(アレックス・ペントランド著、草思社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP)など多数。